「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」マルジャン・サトラピ、バンサン・パロノー

チキンとプラム

映画館で観た2012年の映画、最後の作品となるのが多分コレ(約50本程度)。アニメの『ペルセポリス』を観て面白かったからと思って観たのだが、実は『ペルセポリス』は観ていなかった。勘違いしていたのは、同じフランスアニメの『ベルヴィル・ランデブー』だった。

自作のコミック「ペルセポリス」を自ら映画化したフランス在住のアーティスト、マルジャン・サトラピが、再び自身のコミックを映画化した初の実写映画。原作は2005年のアングレーム国際漫画祭最優秀作品賞を受賞した「鶏のプラム煮」だそうだ。

なぜテヘランが舞台なんだろうと思ったら、イラン人の監督なのね。主人公のナセル(マチュー・アマルリック)が死んだところから始まる最後の8日間という作りはフランス映画らしく洒落ている。それにしても、マチュー・アマルリックのギョロ目って、どこか生瀬勝久とかぶるんだよなぁ。特にちょっとコミカルな演技になると…。

「人生は吐息、ため息。そのため息をつかめ」とバイオリンの師匠に言われ、失恋という「ため息」を音色に込めて芸術家として成功したナセル。ストラディバリウスを妖しげな骨董屋まで買いに行ってアヘンを吸う煙、母が死ぬとき魂が煙となって再び墓場に現れるなど、煙が強調されているファンタジー。ため息とも煙ともつかぬ形のない妖しげなものをつかもうとして振り回される我々を、劇画調の嘘っぽさで描いているのが微笑ましい。


原題 Poulet aux prunes
製作年 2011年
製作国 フランス・ドイツ・ベルギー合作
配給 ギャガ
監督:マルジャン・サトラピ、バンサン・パロノー
製作:ヘンガメ・パナヒ
製作総指揮:フランソワ=ザビエ・デクレーヌ
原作:マルジャン・サトラピ
キャスト:マチュー・アマルリック、ゴルシフテ・ファラハニ、マリア・デ・メディロス、イザベラ・ロッセリーニ、キアラ・マストロヤンニ

☆☆☆3
(チ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ファンタジー ☆☆☆3

「ある秘密」クロード・ミレール

秘密

「映画の國名作選V フランス映画未公開傑作選」として今年公開された3作品のうちの1本。エリック・ロメールの『三重スパイ』、クロード・シャブロルの『刑事ベラミー』は残念ながら観れなかったが、、フランソワ・トリュフォーの制作主任を務め、「小さな泥棒」などの監督作で知られるクロード・ミレールの未公開作品。同名の小説の映画化。クロード・ミレールは『ニコラ』も『なまいきなシャルロット』も『うたかたの日々』も観ていない。

この作品は、3つの時間が交錯する。現在を白黒画面で、過去の2つの時間をカラーで描き、その時間構成が巧みだ。プールでのか細く病弱な少年と美しい母親の飛び込みジャンプ。そして、その少年が幻のように見るもう一人の少年の存在。体操を息子に教える父親とその期待に応えられない少年の哀しさ。そして幻影のように登場するもう一人の運動能力抜群の少年の存在が次第に明らかになっていく…。

金髪の美女セシル・ドゥ・フランス(『少年と自転車』『ヒアアフター』など)が美しい。第二次大戦中のフランスでの不幸なユダヤ人家族の物語だが、ベースにあるのは男女の三角関係の物語だ。結婚式の日に妻の兄の美しい奥さんを見初めてしまった男の物語。恋してはならない女性に恋してしまった禁断の恋物語だ。それにナチスのユダヤ人迫害という時代背景が絡み、されていないと感じた妻の哀しみと、親子の期待と失望の物語が交錯する。

プールや川の水と溶け合うように描かれる運動能力も美貌もある自信に満ちた美しき女。一方、夫のを見失いユダヤ人として殺されていったらしき哀しい運命の女。さらに、病弱で両親の期待に応えられない少年の哀しみの生と、みんなにされ運動能力抜群だった少年の死の対比。ヒトラーがスポーツを礼賛しながら運動や健康を賛美していった忌まわしき時代にあって、運動能力抜群の男と女がその時代の不幸さゆえに結びついてしまう運命の皮肉。美しき緑あふれる自然の中で、を交わす場面が残酷でせつない。人生はかくも苦く、ままならない。



原題 Un secret
製作年 2007年
製作国 フランス
配給 紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
上映時間 110分
監督:クロード・ミレール
製作:イブ・マルミオン
原作:フィリップ・グランベール
脚本:クロード・ミレールナタリー・カルテル
撮影:ジェラール・ド・バティスタ
美術:ジャン=ピエール・コユ=スベルコ
編集:ベロニク・ランジェ
音楽:ズビグニエフ・プレイスネルキャスト
キャスト:セシル・ドゥ・フランス、パトリック・ブリュエル、リュディビーヌ・サニエ、ジュリー・ドパルデュー、マチュー・アマルリック

☆☆☆☆4
(ア)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ☆☆☆☆4

「ライク・サムワン・イン・ラブ」アッバス・キアロスタミ

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イランの巨匠アッバス・キアロスタミが日本を舞台に描いた奇妙な作品。人生の一部をそのままスポンと切り取って、それを実時間のままリアルタイムで撮って見せたような映画。役者は無名の元大学教授のおじいさん(奥野匡)とデート嬢(高梨臨)。デート嬢のストーカー的な乱暴な恋人に加瀬亮。デートクラブの男にでんでんが出ているのが、わずかにフィクション映画らしくしている。

見ていてなんだか居心地が悪いのだ。それはイランの監督が日本を舞台に撮っているからなのか、この映画そのもののフィクションっぽくない作りからなのか、それとも役者の台詞回しなのか、あるいはカメラの撮り方にあるのか、あるいは音の使い方…?フィクションなのだけど妙にリアルで生々しい。この居心地の悪さは、どこか昔に見たNHKの佐々木昭一郎のドラマに似ている。

冒頭、カメラはあるお店の夜の店内を映し出している。ざわざわとした人々の会話から女の子の声がクリアに聴こえてくる。誰かと話している声だ。しかし、画面からは誰が話しているかが分からない。やがて画面の外にいる人物の声らしいことがわかってくる。この映画は、フレームの外から聴こえてくる音の使い方がうまい。音が映像よりも物語を進行させているのだ。しばらくしてやっと、その声の主の女の子が映し出される。携帯電話で話をしていて電話の向こうの男にいろいろと疑われているらしい。そして最初の店内のカットがまた切り返され、彼女の向かいの空席に隣の友達の女の子が座ったり、ほかのテーブルにいた男(でんでん)が座ったりする。その会話がたわいもないムカデのセックスの笑い話だったり、何やらわからない電話のやり取りや男との意味不明の言い合いで、なかなか物語が始まらないのだ。ある意味、リアルな会話であり日常的な映像であり、フィクションらしく物語が展開しないのだ。

この映画は、監督が役者たちにその日撮影するパートだけの台詞を渡して撮っていったらしい。あらかじめ完成台本は役者に渡されず、役者たちもどういう物語の展開のなのかわからないまま演じたという。そして、芝居をすることを極力抑えられたらしい。そこには、虚構のウソと現実の狭間をいつも行き来するキアロスタミ監督ならではの演出がある。

前作『トスカーナの贋作』は、英語とフランス語とイタリア語が飛び交う中で、イタリアの古都を歩く男と女が夫婦を演じ、その嘘と現実の狭間を描いた映画だった。観客は何が本当なのかわからないまま二人の関係を想像しつつ、その演じあう二人を見るだけだった。最後は、トスカーナの古都の鐘の音が物語を終わらせる。そして、この映画もまたラストは割れるガラス窓の音で唐突に物語は終わる。物語的な結末を提示しないままに、映画は音とともに分断されるのだ。

キアロスタミ監督作品の大きな特徴が、時間の切り取り方だ。映画とは時間の編集の芸術であると言われている。時間を自在に操りながら、過去から未来まで時空を展開し、物語を構成していく。場面が変って次々と物語を進めるのだ。しかし、キアロスタミ監督の作品は、どれも時間があまり飛ばない。ダラダラとリアルタイムの時間が流れていくのだ。だから観客は時に退屈になる。場所の展開も変化も起きないからだ。

田舎から東京に出てきたおばあちゃんに会いに行きたいと仕事を断ろうとしたデート嬢・明子だったが、男(でんでん)に無理やり言いつけられた客のもとにタクシーで向かわせられる。タクシーの中でのラジオの音がまたちょっと古臭い歌謡曲で変な感じ。明子はケータイの留守録のおばあちゃんの度重なるメッセージを聴く。そして駅のロータリーで彼女を待つおばあちゃんをタクシーから見て涙する。観客には彼女の涙の意味が今ひとつわからない。物語の背景は想像するしかないのだ。どうやら、おばあちゃんは明子に似たデート嬢のチラシを見て彼女を疑って上京したらしい。そして、タクシーで男の家に着くと、そこには年老いた元大学教授のタカシ(奥野匡)がいる。大学教授は自分の妻と似た女をデート嬢として家に招いたのだ。ここで、明子が部屋に飾ってある絵(矢崎千代二の『教鵡』)の和服の女性に自分が似ているとかつて言われたことを唐突に語り出す。そしてタカシの妻の写真にも自分は似ていると。明子は「似ている女」なのだ。デート嬢という性の幻想を演じる明子は、恋人のノリアキ(加瀬亮)にとってもつかみどころのない疑わしき女だ。

映画は二日間の時間をダラダラと描き続ける。翌日、明子を大学まで送った時に出会う恋人のノリアキ(加瀬亮)。彼はタカシのことを彼女のおじいさんと勘違いする。出会った3人の時間が、またダラダラと展開する。車の妙な音に気付いたノリアキは、自動車工場に車を移動させファンベルトを直す(この場面でも音が物語を展開させる)。タカシは明子と別れて自宅に戻り、再び明子から電話があって、また迎えに行って…という具合に、ダラダラと飛躍も展開もなく、日常の一コマのように時間が流れていく。タカシの隣人のおばさんが窓から顔を出して唐突にしゃべり出すのもなんだかとても奇妙だ。よく考えてみると、ダラダラとした時間のなかにちょっとした作為や迂回が演出されている。タクシーで駅のロータリーを回る場面、ノリアキがタカシに声をかけるまでの逡巡、車のファンベルトの修理、殴られてうずくまる明子をタカシが助けるまでの車の迂回、消毒薬の買い物と車の出し入れ、隣のおばさんの明子への突然の介入…などなど。そしてノリアキの乱入。

ラストは、嘘に気づいたノリアキがタカシの家に乗り込み、暴れ出して、窓ガラスを割って終わるのだ。このノリアキが家の前で暴れる場面も巧みに音だけで表現されるのも秀逸だ。

元大学教授であるタカシは妻に似たデート嬢を自宅に呼び寄せる。その姿はいつもの知的なタカシを知る者にとっては「別の顔」である。ノリアキは、恋人でありながらも学生である明子の「別の顔」(デート嬢)を疑い続ける。そして明子は、性の幻想の体現者としてチラシに載り、祖母に疑われ、恋人やその友人にも疑われ、タカシからは妻の似た女として役割を求められる。どこに「ほんとう」の明子がいるのか、明子自身にさえ分からない。

誰もが「別の顔」を持ち、誰もが相手の「別の顔」を疑う。そこに人生の嘘と本当は交錯し、映画の嘘と本当も交錯する。

店内の長回しや車のなかの風景が映し出されるダラダラとした日常のなかで、フィクションの嘘が挿入され、ちょっとした波風が立つ。そんな些細な人生の波風をそのまま切り取って見せるキアロスタミの手腕はたいしたものだ。時間を編集して劇的なドラマを作るのではなく、日常の時間の中にちょっとした嘘を投げ込むことで、さざ波のドラマを作るのだ。こんなヘンテコな映画があるから、映画というのは面白い。

『トスカーナの贋作』レビュー

原題 Like Someone in Love
製作年 2012年
製作国 日本・フランス合作
配給 ユーロスペース
上映時間 109分
監督:アッバス・キアロスタミ
プロデューサー:堀越謙三、マリン・カルミッツ
脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:柳島克己
録音:菊池信之
美術:磯見俊裕
編集:バーマン・キアロスタミ
サウンドデザイン:菊地信之
キャスト:奥野匡、高梨臨、加瀬亮、でんでん、森レイ子

☆☆☆☆4
(ラ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆4

「きっと ここが帰る場所」パオロ・ソレンティーノ

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「何か変だ」。落ちぶれた元ロック・スターであるシャイアン(ショーン・ペン)が何度か口にする言葉だが、まさにこの映画は「何か変」な映画である。

まずなんといってもシャイアンが変である。いつでもメイクをしながらボソボソとしゃべる奇妙な男。なぜかいつでもカートをズルズルと引きずっている。空っぽの豪邸に住み、プールの水も空っぽ。キッチンと書かれたキッチン、怪我をしているのかエリザベスカラーしている愛犬。それらすべての意味を彼は知らない。そして妻ジェーン(フランシス・マクドーマンド)はなぜか消防士。彼女がビルの上で働いている姿をボーと見上げたりする。空っぽのプールで妻と素手でするスカッシュもまた奇妙だけれど。妻にわざと勝たせてもらっていることも知らない。

そして関係もまたわかりづらい。近所に住むロック少女メアリー(イヴ・ヒューストン U2ボーノの娘らしい)とはどういう関係なのか?ショッピングモールで一緒に過ごす似たモノ親子?に見えたりもする。メアリーに言い寄る男との仲を取り持とうとしたり、その行動もまた意味不明。そして、彼女の兄はどうやら失踪中らしい。メアリーの母は、その息子の帰りをタバコを吸いながら悲しみにくれて待ち続けている。

さらに、「暗い若者たちに向けて暗い歌」ばかり歌っていたロックスターは、彼の歌の影響で自殺した兄弟への罪悪感を持ち続け、その親に「もう来るな」と反対されながらも墓参りに行っている。

そんな風にフラフラと空っぽで鬱のように過ごしていたシャイアンのもとへ、父危篤の知らせが来る。飛行機が嫌いなシャイアンは船でダブリンからカルフォルニアへ行くも、父の死には間に合わない。30年ぶりの父との再会は、死後と対面と残された父の日記。そして父がホロコーストに収容されていたことを知り、ナチ親衛隊の男への復讐を考えていたことを知る。そして、物語はまた「変な」展開となり、そのナチ残党の男を探すになる。

アメリカの大陸をずるずるとカートを引きずりながら、父の遺志を継ぎナチの残党を探すロードムービー。なんともよくわからない。そう、彼自身もなぜその男を探すのかさえよくわからないだ。そして見えてくるのは、父との関係。父に嫌われていると思っていた過去。

それが追うナチ男の孫娘レイチェル(ケリー・コンドン)という女性とその息子との出会いを通じて、自らの父との関係に気づく。「息子を嫌う父親などいるはずがないじゃないか!」と。シャイアンがギターを弾き、息子が“This Must Be The Place”を歌う場面に母レイチェルも涙する。そばには息子の不在の父親の写真が飾られている。ダブリンの豪邸で空っぽだったプールは、この親子のもとで水が満たされる。水が怖かった息子も、プールで母と一緒に泳ぐ。

<以下、ラストのネタばれに触れています。観てから読むことをお勧めします>

父の思いを継ぐに出たシャイアンは、父との確執を乗り越え、なぜか、飛行機嫌いだったのに飛行機でダブリンに戻ってくる。いわば父との確執を抱えていたシャイアンの子供(ひきこもり大人)から大人への成長物語というわけだ。そして吸わなかったタバコを吸い、メアリーの母のもとへ「あの姿」で戻ってくるのだ。意表を突かれるラストだ。ここが「帰る場所」なのか?メアリーの母は失踪した息子を待ち続けていた。彼は彼女を喜ばせるために息子を演じたのか?それともメアリーの母とはもっと別の関係(元妻とか、母とか)なのか?観客はその謎を想像するだけである。

いずれにせよ親子の物語である。親との関係を巡るである。自殺したり、失踪したり、嫌われていると思って仲たがいしたり、親子の関係はいつだってこじれる。不在としての子供や親の存在をそれぞれが抱えつつ、人は生きている。そんな単純な親子の物語に回収されないように、映画はあちこちで「変な」衣装をまとっている。

ゆっくりした移動撮影やロングショットの美しさと顔のクローズアップ。犬やプールや車の炎上、突如車の助手席に乗っていた男やカートの車を発明した元パイロットに卓球、そして男が住むプレハブが立つ雪原と赤い車の美しき構図。なんとも奇妙な映像感覚と独特の演出力。イタリア監督のアメリカの映画や音楽へのオマージュも感じる。パオロ・ソレンティーノ監督の今後の作品も気になるところだ。トーキング・ヘッズの白髪のデビット・バーンが懐かしい。

誰にでもおススメする映画ではありません。奇妙な映画が気になる方は、その奇妙さを楽しめるでしょう。

原題 This Must Be the Place
製作年 2011年
製作国 イタリア・フランス・アイルランド合作
配給 スターサンズ
上映時間 118分

監督:パオロ・ソレンティーノ
脚本:パオロ・ソレンティーノウンベルト・コンタレッロ
撮影:ルカ・ビガッツィ
美術:ステファニア・セラ
衣装:カレン・パッチ
編集:クリスティアーノ・トラバリオッリ
音楽:デビッド・バーン、ウィル・オールダムキャスト
キャスト:ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、イブ・ヒューソン、ケリー・コンドン

☆☆☆☆4
(キ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ☆☆☆☆4

「ファウスト」アレクサンドル・ソクーロフ

ファウスト

死体を切り刻んで、内臓を抉り出し、魂を探すグロテスクな映像から始まる。人間の魂とはどこにあるのか?そして生きる意味とは?

ドイツの文豪ゲーテの名作「ファウスト」を、ロシアの名匠アレクサンドル・ソクーロフが新たな解釈で映画化。2011年・第68回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品。僕がソクーロフを観たのは「太陽」「チェチェンへ アレクサンドラの旅」「ボヴァリー夫人」である。いずれも奇妙な不思議な強度を持った映画だった。そして、この「ファウスト」。まるで夢の中の世界のようだ。しかし、私も前半は夢の中でした。マルガレーテと出会うあたりから覚醒しましたが、歪んだ映像、暗い色調をベースに色や光の変化など、かなり錯乱的意図的な映像が展開していて、正直あまり映画に入り込めなかった。

19世紀初頭、神秘的な森に囲まれたとある街で、悪魔と噂される高利貸しのマウリツィウスに導かれるようにファウストは街を彷徨う。そして、女性たちが集まる光に満ちた洗濯場で、美しい女性マルガレーテに出会う。マウリツィウスは、奇妙な尻尾が生えていてペニスがない猫背の異様な体型。そしてマウリツィウスの案内で兵士たちが騒ぐ地下の酒場に行き、マルガレーテの兄を誤って殺してしまうファウスト。なんといっても兄を埋葬する森が美しい。死の気配に満ちた森でファウストとマルガレーテが接近する。また、兄を殺したのはファウストだと知って彼の家を訪ねてくるマルガレーテの光に満ちた官能。腐臭とノイズ。教会の光と悪魔的な人工生命体ホムンクルス。善と悪、憎悪と愛が交錯し、生と死、美と醜が混じりあう世界。二人が池の水に沈む場面がまた官能的だ。

もう一度観てみないと、なんとも判断しかねる映画だ。ただかなり作為的なたくらみに満ちた映画だ。


原題 Faust
製作年 2011年
製作国 ロシア
配給 セテラ・インターナショナル

監督 アレクサンドル・ソクーロフ
原案 ヨハン・ボルフガング・フォン・ゲーテ
台本 ユーリー・アラボフ
脚本 アレクサンドル・ソクーロフ、マリーナ・コレノワ
撮影 ブリュノ・デルボネル
キャスト ヨハネス・ツァイラー、アントン・アダシンスキー、イゾルデ・ディシャウク、ゲオルク・フリードリヒ、ハンナ・シグラ


☆☆☆3
(フ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 外国文学 ☆☆☆3

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

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映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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