「ゼロ・グラビティ」アルフォンソ・キュアロン

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話題作をやっと観る。3Dの宇宙体験。楽しみにしていた。かつてない映像体験がそこにあるのだと。一方で、どれだけのもんだろうという疑念もあった。

予想では、もっと深遠な宇宙での人間の孤独について哲学的な問いかけがあるのかと思っていた。だが違っていた。どちらかというと、遊園地のアトラクションのようなハラドドキの宇宙体験アクション映画だった。確かに、二人だけの登場人物でここまでのドラマを作り上げている意味では、よく出来た映画と言えるだろう。宇宙空間に放り出される孤独、そんな孤独な場所でつながる手のかけがえのなさ、励まされる声の温かさ、ユーモア。死に直面するときの恐怖と孤独。そして生きようとする勇気と力。まぁ、よくあるアメリカ映画のメッセージだ。諦めずに生きろ!というような。目新しいのは3Dの宇宙空間体験だけだ。見終わって感じたのは、地球に生還できて良かったという疑似共有体験で、一級のアトラクションを楽しめたという感覚だった。

原題:Gravity
製作年:2013年
製作国:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
上映時間:91分
上映方式:2D/3D
監督 :アルフォンソ・キュアロン
製作 :アルフォンソ・キュアロン、デビッド・ハイマン
製作総指揮: クリス・デファリア、ニッキ・ペニー、スティーブン・ジョーンズ
脚本: アルフォンソ・キュアロン、ホナス・キュアロン
撮影: エマニュエル・ルベツキ
美術: アンディ・ニコルソン
音楽: スティーブン・プライス
キャスト:
サンドラ・ブロック,ジョージ・クルーニー、エド・ハリス(声)

☆☆☆
(セ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : SF ☆☆☆

「ブリング・リング」ソフィア・コッポラ

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米ロサンゼルス・ハリウッドで現実に起きたティーンエイジャーによる窃盗事件を題材に映画化。ガーリー映画で定評のある等身大の少女の夢と空虚を描いてきたソフィア・コッポラが、話題になった現実の事件を扱った。

『ロスト・イン・トランスレーション』『SOMEWHERE』『マリー・アントワネット』も含めて、これまで彼女が描いてきた少女は、どこか共感できる部分があった。その美しき夢と寂しさや空虚さにおいて。しかし、この少年少女たちには、共感などできない。ただただ愚かなバカ者たちである。しかし、この彼女たちにこそ、ソフィア・コッポラは現代性を感じたのだろう。時代の危うさとでもいうような。いつもながらのスタイリッシュで華やかで美しき映像ながら、ここには空虚さもなく、ただただ愚かさがあるのみだ。

パリス・ヒルトンが自宅をロケ地として提供したらしく、ハリウッドセレブ達の華やかでゴージャスな豪邸が次々と出てくる。溢れかえるモノたち。靴や洋服、アクセサリーにバッグ。煌びやかな色彩にデザイン。高度消費社会の美しき戦利品。そのセレブたちの生活に憧れる少年少女が、フェイスブックでセレブ達の外出を確認し、ネットで住所を調べ、豪邸に侵入する。遊び半分の覗きとモノへの欲望が、とめどもなく膨らんでいく。戦利品を身につけ、見せびらかし、自分たちの姿を自分撮りし、ネットでアップする。クラブで吹聴し、ネットでも自慢する。そんな小さな自己顕示欲。日本でも最近、バカな悪ふざけを写真に撮り、ネットでアップして自慢しあっていた。

何も考えていない悪ふざけと自己顕示。そして美しきモノたちへの抑えきれない欲望。セレブ達の生活は、ネットで筒抜けだし、リアルな情報がテレビ番組でも氾濫しているそうだ。ネットは勘違いを誘発する。自分もセレブになれるかのような勘違い。彼女たちには、葛藤はない。不安や恐怖や迷いさえ。虚構と現実の区別さえなくなっているかのように、ゲーム感覚で悪ふざけが続けられる。友人同士の葛藤もケンカさえも描かれない。少年少女たちの映画なのに、セックスさえ描かれない。人と人とが深く関わり合わないで、ただただその場だけでのノリの関係。少女たちは同じようにしか見えない。アクセサリーや衣装で着飾るだけで、生身の身体などどこにも見えてこない。

なんとも救いのない時代になったものだ。

原題:The Bling Ring
製作年:2013年
製作国:アメリカ・フランス・イギリス・日本・ドイツ合作
配給:アークエンタテインメント、東北新社
上映時間:90分
監督:ソフィア・コッポラ
製作:ロマン・コッポラ、ソフィア・コッポラ
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
原作:ナンシー・ジョー・セールズ
脚本:ソフィア・コッポラ
撮影:ハリス・サビデス、クリストファー・ブローベルト
美術:アン・ロス
衣装:ステイシー・バタット
編集: サラ・フラック
音楽: ダニエル・ロパティン、ブライアン・レイツェル
キャスト:ケイティ・チャン、イズラエル・ブルサール、エマ・ワトソン、レスリー・マン、タイッサ・ファーミガ、
クレア・ジュリアン

☆☆☆3
(フ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春 ☆☆☆3

「トランス」ダニー・ボイル

トランス

ロンドン五輪開会式の総監督もやり、すっかりイギリスの国民的大監督となったダニー・ボイル。『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を総取りしたことも記憶に新しい。デビュー作『シャロウ・グレイブ』(90年)や『トレインスポッティング』の脚本家ジョン・ホッジと再び組み、観客を見事に騙す心理サスペンスを作った。テンポよく展開する絵画盗難事件。巧みな映像センスは健在だ。そして記憶の迷宮へ観客は引きずり込まれる。結局は「時間」とか「記憶」とかがキーポイントになるんだよなぁ。登場人物を数人に限定し、空間も限定したところが密度が濃くて面白い。空間よりも時間への旅だね。

催眠療法士のロザリオ・ドーソンがなかなか魅惑的。みなさん、事前情報など仕入れずに、次々と騙されてください。その騙され方がとにかく楽しいです。催眠療法って、そんなに凄いの?ってちょっと思ったけど…。


原題 Trance
製作年 2013年
製作国 アメリカ・イギリス合作
配給 20世紀フォックス映画
上映時間 101分
映倫区分 R15+
監督:ダニー・ボイル
製作:クリスチャン・コールソン
脚本:ジョン・ホッジ、ジョー・アヒアナ、
撮影アンソニー・ドッド・マントル
美術:マーク・ティルデスリー
音楽:リック・スミス
キャスト:ジェームズ・マカヴォイ、ロザリオ・ドーソン、ヴァンサン・カッセル、ダニー・スパーニ、マット・クロス、ワハブ・シェイク、タペンス・ミドルトン

☆☆☆☆4
(ト)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : サスペンス ☆☆☆☆4

「ローマでアモーレ」ウディ・アレン

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ウディ・アレンは、ここへきてすっかりシェイクスピアの域に達したかのような吹っ切れた人間喜劇を描いている。ユーモアが突き抜けているのだ。まるで「真夏の夜の夢」の世界。イタズラ好きの妖精たちがローマの街にいるかのように、登場人物たちはマジックにかかる。恋と名声と欲望。夢のような時間。それは「恋するバルセロナ」でも「ミッドナイト・イン・パリ」でも「恋のロンドン狂騒曲」でも同じだ。ヨーロッパのそれぞれの街でかけられる魔法。そのマジックがそれぞれの街の特徴をよく表している。今回のローマ編は、前回のパリの過去へのタイムスリップのロマンチックさに比べても、かなり喜劇的要素が強い。バカバカしいほどにメチャクチャな展開なのだ。マジックにかけられたように、人々は熱に浮かれ、恋をし、夢を見る。そんな人間たちの滑稽で愛しき時間。それを達観したかのようにウディ・アレンは徹底して戯画化して描く。かつてのようなシニカルなインテリの自意識が消えてなくなった笑いの突き抜け方が心地よい。

ローマの街で言葉を交わした瞬間から恋に落ちた二人。そして、田舎からローマに出てきた若い二人は、奥さんが娼婦(ペネロペ・クルス)と入れ替わり、若妻は男性スターと夢の時間を過ごす。葬儀屋のオヤジは夢のオペラ歌手になり、なんとシャワーを浴びながら舞台で歌う。まさに、オペラ演出家で出演のウディ・アレンの奇想天外な発想。ただの冴えないイタリア人のオヤジ(ロベルト・ベニーニ)が、突然、脚光を浴びて、スターになってマスコミに追いかけられたり、恋人の友人(エレン・ペイジ)の小悪魔的な魅力に惹きつけられる男(ジェシー・アイゼンバーグ)の恋のマジックなど、人間たちのバカバカしいまでの滑稽さが描かれる。まさに、イタズラ好きのウディ・アレンが仕掛けたローマでの人間喜劇マジックである。


原題 To Rome with Love
製作年 2012年
製作国 アメリカ・イタリア・スペイン合作
配給 ロングライド
監督:ウッディ・アレン
脚本:ウッディ・アレン
撮影:ダリウス・コンジ
美術:アン・シーベル
編集:アリサ・レプセルター
衣装:ソニア・グランデ
キャスト:ウッディ・アレン、アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デイビス、ジェシー・アイゼンバーグ、グレタ・ガーウィグ、エレン・ペイジ

☆☆☆☆4
(ロ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆4

「ジャンゴ 繋がれざる者」クエンティン・タランティーノ

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やっと観たタランティーノ最新作。いつものように暴力描写満載。タランティーノの暴力描写は身体的な痛みを伴うほど強烈だ。大袈裟な血しぶきや派手な銃撃戦は様式美的な暴力描写だが、時に目をそむけたくなるほど密度の濃い息詰まる残酷さが描かれる。この映画でも黒人同士の死に物狂いの戦いや犬に食われる場面など、すさまじいい。だからこそ、黒人の復讐劇が痛快なまでにストレートに爆発する。

ただ僕がタランティーノ映画で好きなのは、無駄話だ。ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)とキング・シュルツ(クリストフ・ワルツ)を襲うために馬に乗って夜討をかける村の住民たちの頭にかぶったマスクをめぐる無駄なお喋りが何ともいい。極度の緊張の密度とこういったダラダラしたゆるい空気の差がタランティーノ映画の醍醐味だろう。

残忍な領主として名高いカルビン・キャンディ演じるレオナルド・ディカプリオがなかなかいい。サディストの変質者といった感じがはまり役。いい男がこういう役をやるとハマるものですね。

黒人であるジャンゴのストレートな復讐劇であり、どこか梶芽衣子の怨念の復讐劇『修羅雪姫』を想起させる映画だ。


原題:Django Unchained
製作年:2012年
製作国:アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間:165分
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
撮影: ロバート・リチャードソン
キャスト:ジェイミー・フォックス、クリストフ・ワルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ウォルトン・ゴギンズ、デニス・クリストファー、ジェームズ・レマー

☆☆☆☆4
(シ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 西部劇 ☆☆☆☆4

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

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映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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