「ボーイ・オン・ザ・ラン」三浦大輔

らん

この映画、なんか気になっていたのですが、やっと見ました。バカバカしい青春活劇だけど笑えそうな感じだったので。

週刊『ビッグコミックスピリッツ』で連載されていた花沢健吾のボクシング漫画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の映画化。監督は劇団『ポツドール』の主宰である三浦大輔。演劇界では若手の旗手である。残念ながら舞台は観たことがない。主演はロックバンド「銀杏BOYZ」のボーカル・峯田和伸。

どうしようもないくらいの不器用な男の真っ直ぐ青春純情物語だが、ラストが安易なハッピーエンドになっていないところがいい。松田龍平は最後まで嫌な悪役のままだし、恋焦がれた彼女の黒川芽以は、最後まで理解不能な他者としての女だ。青春のどうしようもなさを思い出す佳作になっている。走る峯田和伸がいい。

女の扱いができないばかりに、相手にもその気があるのに馬鹿なことをしでかして、付き合うことができずに、商売敵の男に女を取られて遊ばれて捨てられる。仕事でも企画を盗まれ、復讐のためにその男と戦うが、ボロボロに殴られいいところなしの惨敗。彼女の思いも取り戻すことができない苦さ。

原作と脚本がどれだけ違うのかわからないが、「タクシードライバー」の青春の狂気を抱え込もうとする漫画的な青春の滑稽さ。カラオケで異様な姿で熱唱するエネルギーが、なんだか笑えて泣けてくる。憧れの彼女が、そんな馬鹿正直な男のところに戻ってくるマドンナではなく、心変わりしてしまった他者として描かれる現実の冷たさこそがいい。YOUやリリー・フランキー、でんでん、そして小林薫とまわりの役者陣が脇をしっかりと固めている。



製作国: 2009年日本映画
配給: ファントム・フィルム
監督・脚本: 三浦大輔
原作: 花沢健吾
撮影: 木村信也
音楽: 桜井芳樹
キャスト: 峯田和伸、黒川芽以、YOU、リリー・フランキー、でんでん、尾上寛之、渋川清彦、米村亮太朗、大谷英子、遠藤雄弥、岩松了、松田龍平、小林薫

☆☆☆☆4
(ホ)
スポンサーサイト

テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 青春

「パンドラの匣」冨永昌敬

panndora.jpg

冨永昌敬監督は、『パビリオン山椒魚』を見た時は変な映画作る人だなぁと思った。そして、去年観た『乱暴と待機』は本谷有希子の原作だけに、これまた奇妙で面白い映画だった。そしてちょっと前のこの太宰治原作の『パンドラの匣』を見て、冨永昌敬監督の特異な才能にすっかり魅せられた。今後とも目が離せない注目の監督である。

「ひばり。」
「なんだい。」
「やっとるか。」
「やっとるぞ。」
「がんばれよ。」
「ようし来た。」

奇妙な「健康道場」と呼ばれる結核療養所での看護師と患者の挨拶のようなやりとりである。この原作にもある奇妙なやりとりが、この映画のリズムを作っていて面白い。最初に、西脇つくし(窪塚洋介)が退場するとき、みんなと握手しながら「ようし来た」とか言っていてなんだか奇妙だなぁと思ったら、口々にみんなそんな挨拶をするのだ。この会話繰り返しが妙に心地いい。

戦争に負けたあの日から、「僕はあたらしい男に生まれ変わったのだ」という結核少年ひばりを『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のみーくんをやっていた染谷将太。彼は戦争中、結核であることを隠し、畑の中で死のうとしていた。なんの役にも立たない己の存在そのものが絶望だった。それが敗戦とともに虚無から希望の光を探せるのか…。

道場でのみんなのアイドルでひばりに思いを寄せつつも八方美人なマア坊に仲里依紗。さらに美人で年上の赴任してきた看護師の竹さんに川上未映子。この竹さんがひばりに「うち気が揉める」と言ったり、小声で「いやらしい」と言ったりする感じがいいのだ。マア坊はひばりに「いじわる!」と拗ねてみたり、「ひばりはまったく、のんきな人ねぇ」とひばりを子供扱いするのも面白い。

とにかくこの映画は、そんな登場人物たちのやりとりが面白いのだ。さらに印象的に描かれる竹さんが床を拭いている後姿。布団部屋でのマア坊とひばりの密会のシーンの二重に聴こえる声の使い方や電球の明滅。夜に不気味に黙々と作業している雑草取り。ひばりとつくしとの手紙のやりとりに男同士のプライドとけん制があり、竹さんやマア坊とひばりの微妙な三角関係も面白い。

窪塚くんの役回りを生かすためか、ひばりの嫁ぎ先を変更したり、結核仲間を死なせたり、原作との相違はあるようですね。どこか浮世離れした奇妙な映画です。

この敗戦の絶望から再生へと向かおうとする時代において、社会とは切り離された山間の独特の隔離された療養所で繰り広げられる死と生の物語。友が次々と結核の病に負けて死ぬ一方で、陽のあたる方を目指して伸びていこうとする植物のつるのように、少年は少しづつ知らぬ間に大人になっていく。

その独特の空気を描いた演出に魅了されました。佳作です。


製作国:2009年日本映画
配給:東京テアトル
上映時間:94分
劇場公開日 2009年10月10日
監督・脚本・編集:冨永昌敬
原作:太宰治
撮影:小林基己
美術:仲前智治
音楽:菊地成孔
キャスト:染谷将太、川上未映子、仲里依紗、窪塚洋介、ふかわりょう、小田豊、杉山彦々、KIKI、洞口依子、ミッキー・カーチス

☆☆☆☆4
(ハ)

テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 日本文学

「ゴールデンスランバー」中村義洋

mo7215-l.jpg

伊坂幸太郎原作&中村義洋監督コンビである。『アヒルと鴨のコインロッカー』もなかなか面白かった。このコンビで『フィッシュストーリー』(伊藤淳史主演)も撮っているのですね。相性がいいのでしょうかね。

この映画もなかなか面白く良くできていた。理不尽なほどに突然事件に巻き込まれる堺雅人がはまり役だ。最初に出てきた吉岡秀隆も良かった。この理不尽な事件そのものを描くことより、恋と友情にスポットを当てているあたりはうまい。ラストの終わらせ方も良かったです。『アヒルと鴨のコインロッカー』の方が好きだけど、これはこれでエンターテインメント作品として楽しめました。

製作年 2009年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 139分

監督 中村義洋
原作:伊坂幸太郎
脚本:中村義洋、林民夫、鈴木謙一
キャスト: 堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、香川照之、柄本明、濱田岳、渋川清彦、ベンガル、大森南朋、貫地谷しほり、相武紗季、伊東四朗、永島敏行、石丸謙二郎、ソニン、でんでん、滝藤賢一、木下隆行、木内みどり、竜雷太

☆☆☆3
(コ)

テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : サスペンス

つむじ風食堂の夜」篠原哲雄

つむじ

吉田篤弘の原作の雰囲気が大好きだ。だからこの映画はあまり見たくなかった。きっと原作の良さを出すのは無理だろうと思っていたから。主演が八嶋智人と聞いた時点からもう期待していなかった。

だから特に書くことはない。予想通りの残念な感じだった。

ロケ地が函館だった。函館はどこかノスタルジックで無国籍的な街だ。だから雰囲気は出ていた。だけど、原作の魅力を実写で再現するのはやっぱり難しい。これはもう夢の中のような幻想の街なのですから。

篠原哲雄監督は、『月とキャベツ』という好きな映画があったけど、その後あんまりコレっていう作品に出会わないなぁ。『オー・ド・ヴィ』でも函館ロケをしていましたね。函館がお好きなんでしょうかね。

「つむじ風食堂の夜」吉田篤弘 ブックレビュー

製作国:2009年日本映画
配給:ジョリー・ロジャー
監督:篠原哲雄
原作:吉田篤弘
脚本:久保裕章
撮影:上野彰吾
美術:寺尾淳
音楽:村山達哉
キャスト: 八嶋智人、月船さらら、下條アトム、スネオヘアー、田中要次、芹澤興人、生瀬勝久

☆☆2
(ツ)

テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : ファンタジー

「あがた森魚ややデラックス」

T0007909.jpg

あの「赤色エレジー」のあがた森魚である。知る人ぞ知る日本のシンガーだ。何を隠そう、私はあがた森魚の歌の大ファンだ。もうラストの「大寒町」を聴けただけで大満足なのである。あの緑魔子とのデュエット曲「昭和柔侠伝の唄(最后のダンスステップ)」を久しぶりに聴けただけでもう感涙モノなのだ。

それはそうと、この還暦を迎えたオヤジの全国縦断ライブを追いかけたドキュメンタリー、人間・あがた森魚のさまざまな表情がよくとらえられている。ややランダムにテンションの高い場面だけがつなげられているだけで、ストーリー性はなくドキュメンタリーとしてはやや物足りないものの、あがた森魚を知っているファンにはたまらない。

矢野顕子に「特別天然記念物」と言わしめ、鈴木慶一(ムーンライダース)に「脳内乱暴度は高い」と言われる男。ツアー中もキレたり、叫んだり、怒鳴ったり、突飛な行動にでたり、居直ったり・・・まぁまぁ暴走オヤジだ。周りもさぞかし大変だろう。「俺はギターひとつでロックやってんだ!」「邪魔するなよ、俺の旅なんだよ」と怒鳴るパワフルな男、「バンドにはバンドの哀しみがあり、ソロシンガーにはソロシンガーの哀しみがあるんだ」と語るどこか孤独な影を背負い、狭い店で少ない観客のなかでも全身全霊で歌い、おどけて踊る。ヴァイオリンの武川雅寛に「あいつの考えていることなんかわからない」と言われるように、集団には不向きな男なのだろう。それでも60歳になり一人全国を漂流をする姿は、どこか憎めないし、とても人間臭い。

稲垣足穂の世界の惹かれタルホワールドを追求し、「海底2万マイル」のネモ船長のように海の底から、または惑星漂流を続けながら、永遠のジパング少年であり続けるあがた森魚。九段会館で「はちみちぱい」のメンバーや矢野顕子や緑魔子とのライブは、ファンにはとても楽しめます。

ラスト「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」の小樽の恩師・佐藤敬子先生の仏前へとお参りするあがた森魚。彼にとっての永遠の師であり、母性でもある彼の原点がそこにある。60歳の還暦暴走オヤジでも、永遠の日本少年のままなのだ。

大寒町
最后のダンスステップ


製作年: 2009年
製作国: 日本
監督・撮影・編集: 竹藤佳世
監修: 森達也
キャスト:あがた森魚、鈴木慶一、矢野顕子、久保田麻琴、緑魔子

☆☆☆3
(ア)

テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

tag : 音楽

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
199位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
94位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター