「迷子の警察音楽隊」

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イスラエルという国を作ったことが、現代の大きな火種になっていることは周知の事実であり、イスラエル(アメリカ)とアラブの対立、パレスチナ難民問題は、現代史が抱える大きな課題である。そんなイスラエルの34歳の若い監督が、エジプトの警察音楽隊が間違ってイスラエルの片田舎にやってきて困るという一夜の物語を作った。ユダヤの地にアラブ人が迷い込むという政治的なテーマを実にシンプルに普遍的な人間の物語として描いたことにとても希望を感じる。

最初の方のシーンで、空港で写真を撮ってもらうために一列に並んだ警察音楽隊の前をお掃除のおじさんが現れて邪魔をする。もうそのワンシーンで、笑いながらすっかりこの監督の間合いに惹きこまれてしまった。イスラエルに迷い込んだエジプトの音楽隊のメンバーは、言葉があまり通じず、この映画はとても台詞が少ない。音楽も中心的なテーマでありながら抑制された使い方で、なんともいえない<間>がとても効果的に使われている。

そして、これは<夜>の映画である。多くの映画がさまざまな<夜>を描いてきたように、<夜>は、人間の孤独と寂しさと哀しさを浮かび上がらせる。だからこそ、人々は<夜>に誰かを探し、求め、少しだけ素直に、少しだけ温かくなったりもする。これは全く関係のない町にやってきた関係のない人たちが、一夜だけ一緒に泊まり、夜の時間を過ごし、それぞれの孤独と哀しみを分かち合う映画なのである。

クソ真面目な愚直な隊長の過去の哀しみ、町の食堂の女主人の寂しさ、出会った頃の愛と絶えない夫婦喧嘩の毎日、女の子と話をしようとすると海鳴りが聴こえる不器用な若者、チェット・ベイカーの♪My Funny Valentineをいつも女に口ずさむ色男、終わりが見つからない未完成の協奏曲、恋人からの電話を公衆電話で待つ男・・・それぞれの人間たちの孤独が、一夜だけ、世界の片隅のような何もないイスラエルの田舎町で交錯し、温かい空気が流れる。

とても静かに心に沁みる愛すべき傑作です。

☆☆☆☆☆☆6

(マ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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