「私という運命について」白石一文(角川文庫)

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女性の強さと過去から未来へ生をつないでいくという役割について、強く考えさせられる小説だ。結婚しようと思っていた男性の実家の母親にまで会いながら、別れてしまい、別の男性との恋を経て、再びバツイチとなった彼と出会うまで…。恋愛、結婚、出産、家族、そして死をめぐる物語。主人公の亜紀が、人生の岐路のような場面で2回しか登場しない郷美という女性(元スポンサーの愛人)が、男と女の違いについて語る場面がある。

「所詮、人間なんて、自分の夢や希望を誰かに託す方がずっと満足できるのかもしれないって近頃思うわ。自分だけの夢や希望だったら、達成してしまえば、もうそれは夢でも希望でもなくなっちゃうんだしね。だから、そういう意味じゃ、男の人の方がずっと哀れなのかもしれないね。男の人って、自分の人生より大切なものがあることに案外気づいていないでしょ。男は、結局、今っていう時間しか見ていないのよ。今を積み重ねることが生きることだと信じきっているのよ。それに比べたら、私たち女は、長い時間の流れの中で自然に生かされているような気がする。現実に生むかどうかは別にして、子どもを生むことができるっていう感覚だけで、自分という人間が最初から独りきりじゃないことを知っているし、この自分のいのちが遠い未来まで繋がっていくことを実感として理解しているでしょ。これって絶対男に得られない感覚なんだと私は思うよ」


女性が未来へと時間を繋いでいく感覚をどれほど持っているのかは、僕が女性でないのでわからない。やや男性が考える女性観という気がしないでもないが、子供を産み母親になるという感覚は、男性には到底理解できぬ感覚である。そのことの重みを描いている小説でもある。

一人の女性の29歳から40歳までの人生の物語。恋人だった男性の母親から亜紀は手紙をもらう。「亜紀さん。選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです。」と未来へと生を繋ぐ運命を語る。

運命など決まっているのか。選んだ選択こそが運命なのか。与えられた困難も含めて、運命を受け止める必要は誰にでもある。その運命から逃れることなどできはしない。運命だと思った選択が誤ったものであることだってある。誰でも立ち止まり、後戻りすることはある。「自分の人生は自分の力で切り拓くことができるのだ」と言い切れるほど、人は強くないし、運命に立ち向かえるものでもない。かと言って、「運命に身を任せ受け入れるだけ」という受動性こそが正しいわけでもない。時には運命に抗い、時には運命を受け入れ、誤りも含めて一つ一つ選択していくしかないのが人生だ。死を受け入れることも含めて。そして、自分だけが大切なのではなく、自分よりも大切な何かがあるということも思い知らされるのも人生だ。そんな数奇な運命をめぐる物語だ。
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テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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