「さよなら、人類」ロイ・アンダーソン

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(C)Roy Andersson Filmproduktion AB

何度でも観たくなる映画であり、まったく唖然とする映画だ。ワンシーンワンカットの長回しの39シーン。すべてセットで撮影したという。つまり全てロイ・アンダーソンの世界観そのままに作り込んだ作品。セットの美術や人物の配置、配色や小道具・衣裳の細部に至るまで監督が意図して作られた世界。野外に見える風景も全部セットの絵(背景画)だそうだ。まさに壮大なアナログな映画だ。『散歩する惑星』『愛おしき隣人』に続く3部作の最終章として4年の歳月をかけて完成させたという。このスピード時代に4年だ。ワンシーンワンシーン、時間をかけてセットを建てこみ、モノの配置や人物の位置と動きを決め、作り込んでいったのだろう。今の時代、これだけこだわれる映画監督はあまりいないし、これが作れるスウェーデンの映画事情も素晴らしい。公式HPを読むと、ロイ・アンダーソン組と呼ばれる専属スタッフは10人だったという。手作り感がよくわかる。2014年のヴェネチア国際映画祭、金獅子賞(グランプリ)受賞。

ある人にとっては、「何コレ!?」と呆気にとられ、ある人は怒って劇場から出ていくでしょう。だからおススメはしません。好きな人には好きな世界です。可笑しみをこらえながら、人生の皮肉と哀感と滑稽さを感じ、何度でも見直したくなる作品です。

一つのストーリーはありません。どちらかというとシチュエーションコントです。バカバカしい面白グッズを売り歩くセールスマン、サムとヨナタンが度々登場し、些細な諍いを繰り広げるというエピソードがベースにあります。面白グッズでまわりを楽しくさせたいと考える二人ですが、誰も笑わないし、だれもグッズを買わない。「ゴドーを待ちながら」の二人のような不条理劇とも言える人間味あふれる二人のセールスマンです。

基本的にはエピソードの羅列です。死をめぐるエピソードがまず3つ。宝石の入ったバッグを天国に持っていこうとする老女、ワインを開けようとして心臓発作で倒れる夫と何も知らない台所の妻、フェリーのカフェテリアで倒れた男のサンドイッチとビール、「誰か食べる人いませんか?」って、あまりにもとぼけていてシュールすぎる。そのほか、理髪師になる船酔いするフェリー船長、若い男に恋するフラメンコダンサーなどユニークな人物が続々登場する。立寄ったバーで働く青年に言い寄る国王カール12世、現代のバーに立ち寄るスウェーデン国王率いる18世紀の騎馬隊、そして囚人たちの巨大な殺人マシーン。人間の孤独と悲哀と滑稽さ。原題「生存を熟考する枝の上の鳩」にあるように、枝の上の鳩が人間たちを見下ろしている世界なのか。カタルシスも結論もオチも何もない。「今日は木曜日?」「水曜日じゃなかった?」と投げ出された問いは、そのまま宙ぶらりん。それでも人生は続くのだ。余白を楽しむ痛快な映画だ。ちょっと眠くもなるけれど。

同じようなタイトルのたまの歌があったなぁ。

ロイ・アンダーソン作品レビュー


原題:En duva satt pa en gren och funderade pa tillvaron(生存を熟考する枝の上の鳩)
製作年:2014年
製作国:スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ合作
配給:ビターズ・エンド
上映時間:100分
監督:ロイ・アンダーソン
製作:ペニラ・サンドストロム
脚本:ロイ・アンダーソン
撮影:イストバン・ボルバス
キャスト:ホルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロム

☆☆☆☆4
(サ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆4

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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