「マジカル・ガール」カルロス・ベルムト

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もっとスリリングな映画かと思いきや、なんだかあと味の悪い映画である。愛による思い込みと変態的に捻じれた自己犠牲・・・。

日本のアニメ「魔法少女ユキコ」のファンである白血病の少女が登場し、長山洋子の歌で踊る場面から始まり、そのアニメのユキコのコスチュームを着て踊りたいという少女アリシア(ルシア・ポシャン)の夢を叶えようと、その父親ルイス(ルイス・ベルメホ)は悩む。そんな微笑ましいエピソードで始まる映画なのだが、物語は意外な方向へとどんどん転がり落ちて行く。

<世界MUNDO>という章立てで語られるのは少女アリシアと父親ルイスの物語。国語の教師を辞めて失業中の身である父親ルイスは、持っている本をいくら売っても、病気の娘にプレゼントを買ってあげるお金がない。一点もののマニア向けの高額なドレスなのだ。それで、ショーウィンドウに飾られている宝石を盗もうとして、ブロックでガラスを割ろうとするその瞬間、上から吐瀉物が落ちてきて、その盗みが妨げられるのだ。盗みをやめさせたバルバラは女神なのか魔女なのか・・・。

次の<悪魔DEMONIO>の章は、魔性の女バルバラの物語だ。オープニングに登場する少女バルバラと教師は、数十年たって再び登場する。少女バルバラは美しき女性になっているが、どこか精神的に不安定だ。薬を飲むように夫から言われ、友人の赤ちゃんを窓から投げ捨てることを想像して笑い出す不気味な女だ。そんなバルバラは精神科医である夫から見放され、鏡に自らの額を打ち付けて血を流し、睡眠薬を飲んで自殺しようとする。そして、気持ち悪くなって窓から外に吐いてしまうのだ。その吐瀉物を浴びたのが宝石強盗をしようとしていたルイスであり、この忌まわしき汚物で二つの物語がつながっていく。

バルバラと一夜を共にしたルイスは、その声を携帯電話でひそかに録音し、高級アパートに住むバルバラを脅して娘のプレゼントの金をせしめようとする。バルバラは、かつての性的派遣商売に出向き、ルイスのために大金を用意する。怪しげな屋敷と車椅子の男。そしてトカゲの部屋。バルバラのおかげで大金を手にしたルイスだったが、娘が欲しかったものはドレスだけではなく、「魔法の杖」もあったことに気づき、再びバルバラを強請る。バルバラは二度目の性商売に出向き、瀕死の重傷を負う。謎のトカゲの部屋では、暴力的なSM的変態行為が行われたらしいのだが、映画では一切描かれない。観客はそのトカゲの部屋の邪悪さを想像するだけだ。

そして<肉CARNE>という章は、バルバラの元数学教師ダミアンの物語だ。刑務所に服役していたダミアンは、かつてバルバラとの間に何があったのか?教室でバルバラにバカにされた教師ダミアンは少女バルバラの虜になった。過去にダミアンとバルバラの間に何があったのか、映画では説明されない。ただ、ダミアンはバルバラのために、殺人や性的暴行などの罪で服役していたようだ。バルバラはダミアンのことを守護天使と呼ぶ。元数学教師ダミアンは明らかにバルバラに人生を狂わされた男だ。バルバラは包帯だらけの満身創痍の状態で、ルイスに暴行されたとダミアンに嘘を告げる。そして、ダミアンはバルバラのために殺人を再び犯すのだ・・・。

まさに恐ろしき忌まわしき関係の捻じれた糸が、魔性の女バルバラを中心に絡み合う。少女時代の不幸なるバルバラと教師ダミアン。バルバラの自己犠牲によって大金を手に入れ、娘にプレゼントを買ってやることが出来たルイスだったが、それは彼を死に導く。少女アリシアは、ラジオ番組に手紙を書いたように、魔法のコスチュームなんかより、父がそばにいてくれることを願っていたというのに。そしてバルバラのために再び殺しに手を染めるデミアン。愛と嫉妬と暴力。それぞれ、何かが狂ってしまった。そして、忌まわしき狂気の禍々しい現実は描かずに観客に想像させる。密室のトカゲの部屋で。過去の物語になかで、愛と狂気は封印される。それが余計に禍々しい。

長山洋子、日本のアニメ、黒蜥蜴の美輪明宏。日本オタクのスペインの若手監督カルロス・ベルムトが、ペドロ・アルモドバル監督にも通じる人生のちょっとした狂いから転落する変態的魔性について描いた映画である。

原題:Magical Girl
製作年:2014年
製作国:スペイン
配給:ビターズ・エンド
上映時間:127分
監督:カルロス・ベルムト
脚本:カルロス・ベルムト
撮影:サンティアゴ・ラカハ
編集:エンマ・トゥセル
キャスト:バルバラ・レニー、ルシア・ポシャン、ホセ・サクリスタン、ルイス・ベルメホ、イスラエル・エレハルデ
エリサベト・ヘラベルトアダ

☆☆☆☆4
(マ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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