「七人の刑事~二人だけの銀座」今野勉(TBS/1967年)

札幌国際芸術祭のプロジェクトの一つで「狸小路TV」というのがある。そのなかの「根源的なTV表現を発見する」というテーマでテレビマンユニオン最高顧問、今野勉氏の4本の作品の上映とトークイベントが札幌で行われた。

東京オリンピックの開会式があった土曜日と月曜日までの間に起きた、ある精神病理学者とその妻との沖縄での戦争の記憶をめぐるドラマ『土曜と日曜の間』(1964年)はとても刺激的だった。「戦後が終わった」と言われ、高度経済成長へとまっしぐらに進みだした東京オリンピックが開催された1964年。開会式が始まった浮かれた日本のある土曜日から数日間、忘れられた沖縄の忌まわしき戦争の記憶が浮かび上がってくるドラマだ。日本人の誰もが忘れたふりをしている沖縄の地上戦。それを今野勉は精神病理学者と妻との間に起こる記憶喪失のドラマとして描き出した。印象的なカメラワーク。映画的とも言えるそのドラマのクオリティに圧倒された。ドラマが時代を告発し、格闘していた。

さらに驚いたのは、『七人の刑事~二人だけの銀座』だ。これはまさにアメリカン・ニューシネマのようだ。理不尽な暴力。刑事たちに犯人と間違えられた海辺に遊びに来ていた若者たちは、その理不尽の暴力の腹いせに、まったく関係のない田舎の漁師とその彼女を痛めつけ、そのまま彼女を都会へと連れ去ってしまう。彼女を誘拐されたと田舎の漁村から東京に出てきた青年(寺田農)は、刑事たちに「お前らのせいだ」と責任を訴える。レギュラーの「七人の刑事たち」は、必死になって若者たちと連れ去られた彼女(吉田日出子)の行方を探す。

ビデオではなくフィルムによるオールロケだったために、このドラマは残っていたという。当時のビデオで撮影されたほとんどの作品は、消されて上書きされたという。「一回性の放送」という宿命のもと、テレビドラマはこの時代、次々と消されていった。特に古いドラマは、現在ほとんど残されていない。

フィルムであったために奇跡的に残った今野勉演出のこの『七人の刑事~二人だけの銀座』は傑作なのだ。脚本は佐々木守。大島渚とも仕事をし、『ウルトラマン』も書いている。『七人の刑事』で今野勉は、歌謡曲を下敷きにして何度もドラマを作ったらしい。そんな歌謡曲シリーズの一本だ。このドラマで、「二人だけの銀座」の歌謡曲が流れて来る場面はゾクゾクする。女を都会に探しに来た男は、女に裏切られたことを知り、デパートでナイフを購入する。そして銀座の街を失意の下に歩きながら、さらに女の行方を探す。「二人だけの銀座」の歌詞が虚しく響く。男は女を殺すつもりなのか?都会に寝返った女を。男の無念さとやるせなさが心に突き刺さる。しかし、ラスト、男は通りすがりの別の見知らぬ通行人を刺す。不条理で理不尽な殺人だ。このドラマでは、直接的には無関係な者が理不尽な暴力にさらされる。それは、復讐という形で仕返しされるのではなく、まったく別の無関係な人に向けられる。その繰り返しだ。刑事たち⇒都会の若者たち⇒漁師の若者⇒銀座の通行人。「無差別殺人のはしり」とも言える不条理な暴力がこの時代に描かれていた。

銀座のオールロケが素晴らしい。台詞を徹底的に削ぎ落とし、刑事たちの聞き込みや、若者たちを見つけて尾行する場面が長く続く。当時の流行歌を歌う若者たちの衣装・風俗、顔つきもいい。退屈で享楽的で刹那的な雰囲気がよく出ている。そして漁村から出てきた寺田農の怒りに満ちた目。それを映像のテンポで見せていく。さらに時代を象徴する歌謡曲と追いつめられた男の無念さ。素晴らしいドラマを見せてもらった。こういう過去の貴重で素晴らしいドラマが、アーカイブでいつでも見られないのはなんとも残念だ。
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テーマ : テレビドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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