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「暗幕のゲルニカ」原田マハ(新潮文庫)

パブロ・ピカソの「ゲルニカ」制作舞台裏を想像しながら生まれたであろう原田マハ得意のアート小説。なんたってアート界の巨人、ピカソである。どのように料理するのかと思ったら、ゲルニカ制作と愛人ドラ・マールとの関係に絞って描かれているのが成功している。とても、その膨大が作品群と人生遍歴の複雑さなど、ピカソを描き切れるものではない。

どこまでが現実でどこまでがフィクションなのか、読んでみて気になったのでネットで調べてみた。発想のキッカッケは実際の事件だったという。

2003年2月、イラク空爆前夜、当時のアメリカ国務長官コリン・パウエルが記者会見を行った際、そこにあるはずのタペストリーが暗幕で隠されていた。原田マハはそれを、テレビのニュースで知ったとインタビューで答えている。「ゲルニカ」には、油彩と同じモチーフ、同じ大きさのタペストリーが世界に3点だけ存在する。ピカソ本人が指示して作らせたもので、このうち1点はもともとニューヨークの国連本部の会見場に飾られていた。(ちなみに1点はフランスの美術館に、もう1点は高崎の群馬県立近代美術館にあるそうだ)。

「誰が〈ゲルニカ〉に暗幕をかけたかはわからない。しかし彼らはピカソのメッセージそのものを覆い隠そうとした。私たちはこの事件を忘れない」と大コレクター、エルンスト・バイエラー氏がメッセージを出している。そしてタペストリーは所有者の意向により、国連本部から他の美術館に移されたそうだ。

この「暗幕のゲルニカ」事件を踏まえて、原田マハは2つの時代を設定して、2つの物語を行き来しながら、2人の女性に焦点を当てた。現代のニューヨーク近代美術館のピカソ研究家のキュレーター瑤子と、ピカソの愛人ドラ・マールだ。瑤子は夫を3.11同時多発テロで亡くし、イラク空爆へと動きだすアメリカにあって、「ピカソと戦争」の展覧会を企画する。その企画展には、どうしても「ゲルニカ」をアメリカに持ってくる必要があると奔走する。一方、スペイン内戦下でゲルニカ空爆が起きる第二次世界大戦前夜のパリ。ピカソのそばに寄り添う愛人のドラ・マールの目線を通じて、パリ万博のスペイン館のために、ゲルニカ制作を始めるピカソ。それをそばで見守りつつカメラで記録する愛人ドラ・マール。時代を超えた二人の女性の物語を通じて、アートへの愛、そして世界と対峙するアートの力、とくに戦争などの暴力に対して、アートがどのような力になり得るのかが描かれる。

アートと戦争(暴力)というテーマにやや単純化しすぎた気もするが、エンタメ的読み物として、ピカソ周辺の時代を想像しながら物語を楽しめた。アートが力を持ち続けるには、アートを応援し、支え続けるスポンサーやコレクター、美術館のキュレーターなどの周辺の人々のアートへの愛が欠かせないのだということだろう。

後半のバスク独立運動のテロリストに拉致される場面など、ちょっとやり過ぎで興醒め。ラストのアイディアもちょっと肩透かしか。
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テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 小説・文学

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ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
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2018年ベスト10
<洋画>
    「スリー・ビルボード」
    「正しい日、間違えた日」(2015)
    「希望のかなた」
    「顔たち、ところどころ」
    「ラブレス」

<日本映画>
    「万引き家族」
    「寝ても覚めても」
    「きみの鳥はうたえる」
    「モリがいる場所」
    「カメラを止めるな」


2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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