「この国の空」荒井晴彦

この国
(C)2015「この国の空」製作委員会

男と女のエロスを描き続けてきたと言ってもいい荒井晴彦氏の「身も心も」以来の監督作品だけに、もっとエロくキワドい男と女が戦争の最中ににのめり込んでいく映画かと思いきや、意外と抑制された作品でちょっと意外だった。音楽は「身も心も」と同じ懐かしき下田逸郎が担当している。

二階堂ふみの独特の感情を抑制した台詞回しが印象に残る。「私の男」で、官能的で危険な女を演じていた二階堂ふみだが、この映画は随分と抑えている。

これは女たちの戦争映画だ。銃後の質素でつつましい生活。食事をめぐる母と叔母との些細な諍いが繰り返される中で、息を潜めて暮らしている女たちの抑圧された性。地方に着物を売りに行ったときの母親(工藤夕貴)の解放感に満ちた美しき裸身の背中。そして、隣の男、市毛(長谷川博己)には感謝しつつも心を許してはダメよと娘の里子(二階堂ふみ)に注意する母。それを聞いて「イヤらしい」と汗に濡れた服を着たまま、自らの性を抑え込もうとする二階堂ふみのエロス。だから、長谷川博己と結ばれるシーンは意外とアッサリしている。夜の赤いトマトが印象的に描かれるだけだ。初めてのデートとも言うべき米の買いだしに行った帰りの神社でのキスを迫れらるシーンでは、天皇もお参りする神聖な場所で、と軽蔑を込めて二人は見られ、邪魔される。すべてが息を潜めるように抑圧されていた時代にあって、女としてのささやかな心の揺れが描かれる。

それにしてもラストの字幕は余計だったのではないか。茨木のり子の詩を入れるなら、あの字幕は不要だったと思う。


製作年:2015年
製作国:日本
配給:ファントム・フィルム、KATSU-do
上映時間:130分
監督:荒井晴彦
原作:高井有一
詩:茨木のり子
脚本:荒井晴彦
製作:奥山和由
プロデューサー:森重晃
撮影:川上皓市
美術:松宮敏之
照明:川井稔
音楽:下田逸郎、柴田奈穂
キャスト:二階堂ふみ、長谷川博己、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二、工藤夕貴

☆☆☆☆4
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ジャンル : 映画

tag : 戦争 ☆☆☆☆4

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