「ポプラの秋」湯本香樹実

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「岸辺の旅」が良かったので、続けて湯本香樹実の小説「ポプラの秋」を読んでみた。こちらも映画化されているらしいが、キャスティングが原作のイメージとかなり違うので映画を観るつもりはない。

この小説も死の世界との橋渡しの物語だ。ポプラの木がある古ぼけたアパートに住む偏屈な悪者のポパイのような顔をしたおばあさんが死の世界に手紙を届けてくれるという。その話に多くの人が亡くなった人への手紙を書き、おばあさんにその手紙を託す。主人公の少女もまた父を亡くして、母とともに哀しみを抱え、このポプラの木があるボロアパートに引っ越してきた。少女の視点で、不思議なおばあさんやアパートの住人たち、そして距離を埋められない母のことを描いている。その少女の視点の表現がいい。大人になった彼女のもとにそのおばあさんの死の知らせが届く。悩みを抱えた現在の彼女と少女の時間が行き来する。ポプラの木を眺め、落ち葉をかき集めながら、冷たく閉ざされた心がゆっくりと解けていくような物語だ。

誰かの死をどう捉えるかは残された生きている人たちの問題である。死は生の側にある。誰かの死をどう受け入れていくか。そこには、行き場を失った問いや疑問、怒りや悲しみが心のうちに封印される。死者の答えは返って来ない。それでも、その答えのようなものを自分で納得して受け取れるまで、死はいつまでも棘のように心に刺さり続けている。身近な人の死は、そんな行き場のない哀しみを抱え続けることでもある。見守ってくれているだとか、許してくれるだとか、声が聞こえただとか、誰もが時間をかけて少しづつ、その誰かの死を受け入れざるをえないのだ。つまりこの世は、いつだって死者とともにあるのだ。死はいつでも私たちの周りにあるし、私たちの心に死者たちはいる。死との交流、交感、鎮魂とは、この小説のように「手紙を書くこと」だったり、何かを表現することとつながっているのだ。

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