「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」ジョン・マルーフ チャーリー・シスケル

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2013 RAVINE PICTURES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. © Vivian Maier_Maloof Collection

人間というのは、謎だ。不思議な存在であり、面白いものだとつくづく思った。

シカゴのオークションで偶然発見された謎の天才女性写真家ヴィヴィアン・マイヤー。なぜ彼女が15万点以上もの作品を撮りながら、生前1枚も写真を公表することをしなかったのか?大量に残された現像されてもいないネガフィルム。その謎をめぐって展開されるドキュメンタリーだ。

2007年、シカゴ在住のある青年がオークションで偶然発見し、380ドルで落札した大量のネガがあった。その一部の写真をブログでアップしたところ、世界中で評判になった。それは、町の人々の生活感ある素顔ばかりだった。笑顔、怒り、哀しみ、喜び、苦しみ。恋人たちから子ども、貧困にあえぐ路上生活者まで、ありとあらゆる人々の姿がカメラを通して捉えられている。それは、誰もが共感できるなまなましい人間たちの写真なのだ。その彼女のネガフィルムを発見した青年が、自ら監督となり、すでに故人になってしまっていた謎に満ちた彼女の人生を、周辺の人々の証言から解き明かしていく。

ヴィヴィアン・マイヤー、彼女の職業は元ナニー(乳母)。子供たちを世話をしながら、ローライフレックス(2眼レフカメラ)で人々を撮りつづけた。芸術家でも写真家でもなんでもない市井の人である。カメラのレンズを上から覗くタイプのカメラなので、撮られる側は身構えなくて済むらしい。隠し撮りに適したカメラだという。なるほど、ややローアングルから捉えられた人物たちの表情は、迫力があり、とてもリアリティがある自然な表情ばかりだ。彼女は、カメラを通して世界と関わった。それが彼女の人生そのものだった。あらゆる人々に興味をもってカメラを構えるマイヤー。新聞記事をいっぱい集めていたという。殺人、暴力、レイプ、虐待。生々しい三面記事に興味を持っていたらしい。それは弱さも含めた人間への興味や洞察力を持っていたのだろう。

一方で、周辺の人物から浮かび上がっている乳母としての彼女は、とてもエキセントリックで、なかなか気難しい女性だったようだ。適度な人間関係を築けない頑迷さやヒステリックさ、鋭敏過ぎる感覚のためか手に負えない衝動、そしてモノを捨てられず整理できない蒐集癖。「あまり好きではなかった」という彼女に乳母として育てられた子供たち。マイヤーは晩年までとても孤独な女性であったことが分かってくる。実人生における不遇さや孤独を、彼女はカメラを通した関係の中で埋めているかのようだ。撮ることそのものに意味があった。その写真を発表して認められることや有名になることに興味がなかったのかもしれない。カメラのレンズを向け、その人物をまるごと捉えた瞬間にシャッターを押すこと。フィルムに人生を閉じ込めること。それ以外に興味がなかったのかも。なぜ彼女がフィルムを現像せず、発表しなったのかは、誰にもわからない。単に現像するお金がなかっただけなのかもしれないし、作品として自信もなかったのかもしれない。彼女はポートレートも数多く撮っていることから、写真を撮る自分自身は好きだったのではないだろうか。結果としての写真よりも、カメラを撮るという行為そのものを偏愛していたのかもしれない。

その謎は、彼女の人生とその写真から想像することしかできない。それでも多くのことを彼女の写真から感じられる幸せに私たちはある。そのことを彼女に感謝せずにはいられない。


原題:Finding Vivian Maier
製作年:2013年
製作国:アメリカ
配給:アルバトロス・フィルム
上映時間:83分
監督:ジョン・マルーフ チャーリー・シスケル
製作:ジョン・マルーフチャーリー・シスケル
製作総指揮:ジェフ・ガーリン
撮影:ジョン・マルーフ
編集:アーロン・ウィッケンデン
音楽:J・ラルフ
キャスト:ヴィヴィアン・マイヤー、ジョン・マルーフ、ティム・ロス、ジョエル・マイロウィッツ、メアリー・エレン・マーク

(ヒ)
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テーマ : 映画レビュー
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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