「ブリッジ・オブ・スパイ」スティーブン・スピルバーグ

スパイ

1950年代60年代の米ソ東西冷戦時代のスパイ映画なれど、007のようなアクションやヒッチコック的なスパイ・サスペンス活劇があるわけではなく、米ソスパイ交換の交渉役を担わされた民間弁護士のタフなネゴシエーションの物語。どちらかというと地味な映画である。カメラはじっくりとソ連のスパイ、マーク・ライランスの物静かな姿と、彼を弁護することになるトム・ハンクスの落ち着いた交渉ぶりを描いている。コーエン兄弟の脚本に負うところも大きいのだろう。じっくりと見応えのある作品になっている。

そう。この映画の特徴は冷静さだ。ヒステリックにならない。単純な攻撃や排除の論理ではなく、タフに冷静に粘り強く公正に行動することのカッコよさを描いている。スパイを殺せ!という圧倒的な憎悪の声の中にあって、冷静に人権を守る弁護士の行動、アメリカの良心を描く。たとえ、家に石を投げられるようなヒステリックな非難の対象になろうとも。

トム・ハンクス演じるドノバン弁護士は、雨の中(この雨のシーンはヒッチコック的でなかなかいい)CIAの男に尾行され、店で対面し、その男に言う。「お前はドイツ系だが、おれはアイルランド系だ。我々が同じアメリカ国民なのは合衆国憲法という規則があるからだ」と。スパイであろうとも国家と国家の思惑を超えて、人権を重んじる弁護士。それは、1対1の米ソ国家の政治的思惑であるスパイ交換に、東ドイツに拘束されたアメリカ人の若者の人権を守ろうとして、無理やり1対2の人質交換にこだわったドノバンの姿勢にも通じる。交通事故で5人死のうが、1件は1件であり、1件分の保険料しか払わないという保険弁護士の理屈と同じ強引さで、ドノバンは1対2の理不尽な人質交換を乗り切ろうとする。

冒頭の意味ありげな鏡像と自画像と二重性。スパイであることは、二つの顔を持つこと。橋、壁、国境など二つの世界を隔てる<間>にあって、どのように立ち振る舞えるか。グローバリズムの嵐のなかで、国家を超えて人々が移動し、共生する時代にあって、<間>に立つことの難しさ、困難さをあらためて考えさせられる。対立する二つの世界、その<間>に立つときに、私たちはドノバンのように感情的にならずに、どこまで冷静に振る舞えるのだろか。どちらかの側に立って、単純に敵を排除するのではなく、間を仲立ちできるタフさを持っているかが問われている。

原題:Bridge of Spies
製作年:2015年
製作国:アメリカ
配給:20世紀フォックス映画
上映時間:142分
監督:スティーブン・スピルバーグ
製作:スティーブン・スピルバーグ、マーク・プラット、クリスティ・マコスコ・クリーガー
脚本:マット・シャルマン、イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
撮影:ヤヌス・カミンスキー
美術:アダム・ストックハウゼン
音楽:トーマス・ニューマン
キャスト:トム・ハンクス、マーク・ライランス、スコット・シェパード、エイミー・ライアン、セバスチャン・コッホ、アラン・アルダ、オースティン・ストウェル、ミハイル・ゴアボイ、ウィル・ロジャース

☆☆☆☆4
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tag : サスペンス ☆☆☆☆4

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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