「キャロル」トッド・ヘインズ

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多くの人が指摘しているように「視線の交錯」の映画である。そして何よりも美しい二人の女優、華のある金髪色白で赤が映えるケイト・ブランシェット。そして初めて観たルーニー・マーラの大きな瞳はオードリー・ヘップバーンのようだ。瞳が宿す一途な思いと可愛らしさ。『ドラゴン・タトゥーの女』ではパンク女を演じていたそうだ。この美しき二人の視線の交錯がゾクゾクする。古き良きアメリカの時代背景とともに描かれる秘められた禁断のメロドラマ。

冒頭、男の動きとともにレストランに座っている金髪の女、ケイト・ブランシェットが目に入るが、呼ばれる名前は「テレーズ!」。男がテレーズ(ルーニー・マーラー)を見つけ、会話を始める。二人はこの後のパーティーの話をし、ケイト・ブランシェット演じるキャロルは用事があると席を立つ。そして、テレーズ(ルーニー・マーラー)の肩に手を乗せる。その手を熱い思いで見つめるテレーズ。同じように男も去り際に彼女の肩に手を置くが、彼女はその手はまるで気にしない。

それから時間を遡ってのクリスマスで賑わう百貨店での二人の出会いのシーンが見事だ。1950年代のアメリカの玩具の列車、夢に満ち溢れた売場の風景が映し出される。百貨店で売り子として働くテレーズ(ルーニー・マーラー)が、ふと金髪の毛皮のコートの美しく華やかな女を見つける。その女をテレーズが見ていると、そばのデパート店員に何かを話しかけられ、その視線が逸れて、再び毛皮の女のいた場所を見るが、そこにはもう誰もいない。そのワンカットの視線の動きがあって、突然、売場のショーケースに置かれた手袋のアップ。すると、さっきの毛皮の金髪女・キャロル(ケイト・ブランシェット)がテレーズの目の前に立っているのだ。

テレーズからキャロルに向けられた視線で始まったこの物語は、スチールカメラのレンズを通してテレーズはキャロルの姿を追う。そんな視線を意識して、キャロルはテレーズと車で旅をする。ロードムービーのような女の二人旅。そしてクリスマスから新年の時を迎え、二人の視線は交わり、お互いの愛を交わし合うようになる。見つめあい、抱き合う二人。しかし、二人の愛の囁きが盗聴され、愛する子どもの親権を守るため、自らテレーズの元を去ったキャロル。見る相手を失ったテレーズ。テレーズとキャロル、二人の視線はどこにも行きあたらない。

それが再びキャロルがテレーズを見つめる場面がある。テレーズからキャロルへ向けられていた視線がここでは逆転しているのだ。車の中から、キャロルが街中を歩くテレーズを見つけ、見つめるシーンだ。仕事を持ち、颯爽と歩くテレーズの姿を見つけ、必死でその姿を追いかけるキャロルの視線。テレーズはそんなキャロルの視線に全く気付かない。そしてその視線を通して自分の気持ちに気づいたキャロルは、これからを正直に生きようと決める。

そして、最後は、最初のレストランのシーンが繰り返され、つまらないパーティーの後で、テレーズが再びキャロルを探す。レストランにいるはずのキャロルの姿を探し求め、テレーズの視線がテーブルからテーブルへと移動する。そして、キャロルを見つけ近づくテレーズ。近づく視線。キャロルを見つめるテレーズ。やがてその視線に気づくキャロル。視線の交錯。その見つめあう二人で映画は終わる。まさに視線で始まり、視線は交錯し、失われ、方向は逆転し、再びテレーズはキャロルを探し、二人は見つめ合うという視線のドラマだ。

車の窓越しの映像も多用されている。車からの風景。そして、車の窓越しに映し出される二人の様々な表情。車の窓は、カメラのレンズでもあり、フィルターでもある。人を美しく見せるためのフィルター。恋とはそんなフィルターをもって相手を見つめることであるのかもしれない。女性同士の同性愛の映画であるが、視線の交錯は二人だけにしかわからないもの。それが、当時の秘められた恋を強調しているのかもしれない。


原題:Carol
製作年:2015年
製作国:アメリカ
配給:ファントム・フィルム
上映時間:118分
監督:トッド・ヘインズ
製作:エリザベス・カール、センスティーブン・ウーリー、クリスティーン・ベイコン
原作:パトリシア・ハイスミス
脚本:フィリス・ナジー
撮影:エド・ラックマン
美術:ジュディ・ベッカー
衣装:サンディ・パウエル
編集:アフォンソ・ゴンサウベス
音楽:カーター・バーウェル
キャスト:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラー、ジョン・マガロ 、コリー・マイケル・スミス、ケビン・クローリー

☆☆☆☆4
(キ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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