「リップヴァンウィンクルの花嫁」岩井俊二

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岩井俊二ワールド炸裂である。岩井俊二という映像作家が描く映画というものは、どこか嘘くさい。ヒリヒリするようなリアリティがないのだ。どこか絵空事的だし、寓話的、ファンタジー的とも言える。映画とはそもそも嘘であるし、嘘くさいものである。しかし、多くの映画は嘘が本当であるかのように描く。しかし、岩井俊二の映画は、嘘が嘘であることをそのまま見せていく。どうぞ映画の嘘を楽しんでください…とでも言うように。様々な嘘に巻き込まれていく登場人物たちを描きだし、美しくファンタジックな映像とともに嘘の中に垣間見える瞬間の美しさ(多くは女優の場合が多い)を描く。

そして、この映画は、あるトッポい女の子(黒木華)が主人公である。世間知らずで、疑うことをせず、何も自分で考えないで、ホイホイと軽く行動してしまう女の子が、嘘の塊りのような胡散臭い便利屋(綾野剛)と出会い、騙され、利用され、ある人間関係の闇や深みにはまっていく物語である。現代の若者らしくネットで恋愛相手を簡単に見つけ、結婚してしまう薄っぺらさが描かれる。人間関係がネットを通じてつながっているため、とにかく浅いのだ。そこへ、嘘をつくことでその薄くなった関係の隙間を埋めて商売をしている便利屋は、結婚披露宴に嘘の親族を送り込む手配者だ。その怪しい男である綾野剛が、ウブで何も考えていない黒木華を手玉にとって操るのだ。

前半は黒木華のネット結婚を中心に、彼女が綾野剛に騙されていく過程が描かれているのだが、後半のCoccoが出てくるあたりから物語は一変する。黒木華とCoccoの女二人の奇妙な共同生活が始まるのだ。それはまるで『花とアリス』の鈴木杏と蒼井優のその後のようであり、美しき無垢なる世界なのだ。蒼井優と黒木華がとても似ているのだ。そして岩井のファンタジックな少女趣味が炸裂する。大きなお屋敷でメイド服を着た女の子が二人、森で自転車に乗り、花火をし、水と遊び戯れる。そしてウェディングドレスでお姫さまごっこである。ラストへ向けた展開は、ネタバレになるので詳細は避けるが、Coccoの母役のリリィが出てくるあたりは、なんとも奇妙なお芝居のような虚構が展開される。現実には決して起きることはない嘘を描いているのだが、その嘘にまみれた物語のおかげで、地獄には落ちずに、ささやかな成長が描かれるあたりは岩井俊二のフャンタジー性によるものであろう。

嘘の塊りであるペテン師、詐欺師の便利屋である綾野剛が決して悪役ではなく、人間関係の潤滑油的な役割を果たしているところが面白い。悪意ではなくひょうひょうと人助けをしているように見える。黒木華は騙されているのにもかかわらず、彼に感謝している。

黒木華の魅力全開の映画である。しかし、岩井俊二の少女趣味的ファンタジーと虚構性が最も成功した『Love Letter』や『花とアリス』に比べると、やはりそこまでの面白さはないか…。

製作年:2016年
製作国:日本
配給:東映
上映時間:180分
監督:岩井俊二
原作:岩井俊二
脚本:岩井俊二
エグゼクティブプロデューサー:杉田成道
プロデューサー:宮川朋之、水野昌紀、伊宗之
撮影:神戸千木
美術:部谷京子
音楽:桑原まこ
キャスト:黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、和田聰宏、毬谷友子、佐生有語、夏目ナナ、金田明夫、りりィ、野間口徹

☆☆☆☆4
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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