「64-ロクヨン前編・後編」瀬々敬久

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試写会で観る。
横山秀夫の原作がいいので、映画として見応えは十分。NHKが去年、ピエール瀧を主役にしてテレビドラマ化していたが、そのドラマの出来も素晴らしかった。今回は豪華キャストで前後編に分けての映画公開だ。

同じ横山秀夫原作の『クライマーズハイ』(原田眞人監督)も日航機墜落事故のマスコミ取材の舞台裏を克明に臨場感たっぷりに活写していた佳作だったが、この映画も昭和最後の7日間に起きた誘拐事件を軸に、事件関係者、マスコミ、警察、そしてその家族たちが見事な群像劇として描かれている。

前篇はほとんど、警察広報課と記者クラブとの確執を中心に描かれている。昭和の最後の時代、記者たちにもまだジャーナリズム魂が強くあり、国家権力の隠蔽には敏感に反応していた。あれほど記者が強気なのも当時の時代ならではのものだ。この映画は、つまるところ組織と個人との葛藤の物語なのである。

それぞれの組織を守るために、組織同士としての対立、争い、意地の張り合い。それぞれの立場の管理者としての仕事と個人の思いとの葛藤。そんな組織の力学・建前や都合を抜きにして、個人としてどう相手と向き合えるか・・・と問うている。個と個の人間同士の向き合いとして。それは警察広報と記者クラブだけではなく、警察内部のキャリアと地方県警のノンキャリアたちとの対立でもあるし、上司と部下であったり、組織における男と女であったり、親と子の建前や世間体と本音の対立でもあったりする。あらゆる対立には、面子や組織力学やタテ社会の建前が関わっている。その組織の中にあって、個人はいつも葛藤する。その群像活写が横山秀夫はうまいのだ。そして映像化がとてもしやすい原作だとも言える。

昭和の時代を覚えていない若い人たちには、あまりピンと来ないかもしれない。それでも、基本的な人間関係の苦悩、組織と個人の葛藤が描かれている意味では、多くに人に見てもらいたい映画になっている。

後編は、かつての「64」事件をなぞるような誘拐事件が平成の時代に起きる物語を中心に展開される。かつての「64」という昭和の最期の時代のまま、時が止まってしまった人たち。いつまでもあの事件の痛みを抱えながら、前へ進めない人たちの苦悩が描かれる。それは被害者も捜査陣も犯人も同じだ。現代の事件と64事件が重なりつつ、ぐぐっと入れ替わるあたりは見どころだ。

事件が終わった後の佐藤浩一と永瀬正敏のくだりは、本当に必要だったのだろうか。聞くところによると原作にはなかった部分が加えられているようだ。それは主役の佐藤浩一を立たせるためだったのか。三上広報官を演じる佐藤浩一の思いは十分伝わるのだが、あそこまで直情的に行動することに現実味を感じなかった。やや間延びしたようにも感じた。映画の出来は、前編の方がテンポよく展開されていていい。後編は心理描写が多いためが、ややまったりしている。それでも大切な人を失ってしまった哀しみ、その喪失感からいつまでも抜け出せない苦悩、そして、その喪失と悔恨や失敗や隠蔽など、それぞれの過去があぶり出され、その過去を乗り越えようとしている群像劇は見事だと思う。


製作年:2016年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:121分
監督:瀬々敬久
原作:横山秀夫
脚本:久松真一、瀬々敬久
脚本協力:井土紀州
エグゼクティブプロデューサー:平野隆
企画:越智貞夫
撮影:斉藤幸一
照明:豊見山明長
録音:高田伸也
美術:磯見俊裕
VFXスーパーバイザー:立石勝
編集:早野亮
音楽:村松崇継
主題:歌小田和正
キャスト:佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、窪田正孝、坂口健太郎、筒井道隆、鶴田真由、赤井英和、菅田俊、烏丸せつこ、小澤征悦、金井勇太、芳根京子、菅原大吉、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、瑛太、永瀬正敏、
宇野祥平、三浦友和

☆☆☆☆4
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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