「だから仏教は面白い!」魚川祐司(講談社+α文庫)

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宗教に関する本は、キリスト教もユダヤ教もイスラム教も仏教も、基本的にわからないので、時々わかりやすそうな本を見つけては読んでみる。


著者によると「仏教はヤバいもの」らしい。仏教は「人間が正しく生きる道を説いたもの」というわけでは必ずしもなく、「人間が生きる健全な道を説いたもの」でも、「処世の役に立つ」わけでもないという。ブッダの教えは「世の中の流れに逆らうもの」であり、「異性とは目も合わせずニートになれ!」と教えていた。やや挑発的な書き方をしているが、つまり、解脱・涅槃という究極の目的を達成するためには、労働と生殖を放棄すること。「欲望の対象を楽しみ、欲望の対象にふけり、欲望の対象を喜ぶ」ことをやめること。それがブッダが弟子たちに求めたことだという。そんな「ヤバいこと」を求めていたことをちゃんと認めたうえで、仏教の価値について考えるべきだと著者は書く。ブッダはこう言った「ハズだ」と都合のいいように解釈すべきではない、と。


ゴーダマ・ブッダの教えはシンプルだ。


私たちは欲望の対象を喜び楽しんで、それをひたすら追い続けるという自然の傾向性をもっている。放っておいたら私たちはそちらのほうへと流れていくのだが、その流れに乗ることなく、現象をありのままに観察しなさい。そうすれば、現象の無常・苦・無我を悟ることができ、それらを厭離(おんり=厭い離れる)し、離貪(りとん=貪りから離れる)して解脱に至ります。


「ただ在るだけでfulfilled」というエートス。言い換えれば、ただ存在するだけ、ただ、いま・ここに在って呼吸しているだけで、それだけで「十分に満たされている」という、この世界における居住まい方。


私たちが居るのは有為の世界。条件によって形成された、つまり縁起によって成り立っている現象の世界に私たちは生きている。仏教の原則的な目標は、その有為の世界の条件付けられた状態から、無為の条件づけられていない状態、即ち涅槃へと至ること。

解脱して輪廻から抜けるまでは、新たな刺激を常に求め続ける不満足の生が終わらないことになる。まぁ、欲望の奴隷のようなもので、そんな人生は「苦」であり、それが輪廻転生で永遠と続くわけである。解脱しないとやってられない。


私たちは「物語の世界」の中で生きている。「物語」とは「欲望によって形成されたイメージ」であり、その織りあわせた「世界」の中で生きていて、そこで「苦」を経験している。「欲を伴い貪りに染まった」イメージ、あるいは「物語」によって「世界」を形成することなく、ただ色は色、音は音として現象をありのままに観察するのが「如実如見(ありのままに知り見ること)」である。


仏教とは現象学でもあるのだ。私たちは、ありのままの現実そのものではないイメージを妄想的に組み合わせて、その「全体」を「世界」だと考えている。そんなものは単なる主観的な形象にすぎないものであって、客観的には実在しない「仮象」なのだ。「世界」はそれぞれの我執が焦点となって形成された「物語」なのだ。その我執から自由になり、我執に囚われた「世界を終わらせること」。つまり考えるだけではなく、身体的実践でもって「悟り」へと至ること。「ものごとをありのままに見る(如実如見)」ために、瞑想すること。その実践的瞑想の方法はいろいろとあるらしい。


個人的には、世界が「我執」や「欲望」によってつくられた「仮象」であるという認識について、仏教はかなりクリアに理解していたことに驚かされた。その「我執」から修行によって自由になれるかどうか、それを目指すかどうかが宗教的問題だ。欲望を否定してまで生きるその先の世界がほんとうに自由なのか。欲望にまみれたこの世界が、ほんとうに「苦」なのかどうか。我執の物語が「仮象」であることを理解した上で、その生を肯定する生き方というのもアリじゃないか、と個人的には考えるが、それについてはまだまだ考え続けることにしよう。

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