「二重生活」岸善幸

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(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

門脇麦の上目遣いの眼鏡越しの目が印象的だ。彼女は尾行することで、対象者の人生を生きる。「見ること」の共犯性。他人の秘密を知ってしまうことで、初めて生きる実感を得る。ヒッチコックの『裏窓』もまた他人の生活を覗くことによって、殺人事件の秘密を知ってしまう話だった。『裏窓』の覗き見る男は歩けない設定だった。見る側の主体である人物は、たいてい何か欠落を抱えている。哲学科の卒業論文のためという背景はあるが、この珠(門脇麦)もまた、父を失い、父の親友を好きになり、大切な人をいつも失い、同棲中の恋人ともちゃんと恋が出来ずに心の中に空っぽなモヤモヤした闇を抱えている。それが他人の秘密を覗き見ることで、夢中になり変わっていく。見ることによって、対象に同化していくのだ。

言うまでもなく「見ること=視線」は映画の本質的なテーマだ。見ることの特権性は、見られること=尾行がバレることによって、関係は逆転する。関係とは生身の身体性を伴う行為だ。見る特権性は失われ、珠は初めて人と深くか関わることになる。そんな女性の成長物語を、尾行、窃視というスリリングな行為とともに描き出す。まぁ、そんなに近づいちゃ、バレるだろうと観客はドキドキしながら見ることになるわけだ。

哲学科の大学教授(リリー・フランキー)のエピソードが最後に付け加わる。人は他者から見られつつ、どこかでその視線を意識して何かを演じている。他者の視線がなければ、人は生きていないのかもしれない。近所のお節介な覗きおばさん、烏丸せつこの存在もまた不気味だった。

製作年 2015年
製作国 日本
配給 スターサンズ
上映時間 126分
監督:岸善幸
原作:小池真理子
脚本:岸善幸
エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
プロデューサー:杉田浩光、佐藤順子、富田朋子
撮影:夏海光造
照明:高坂俊英
美術:露木恵美子
音楽:岩代太郎
キャスト:門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキー、河井青葉、篠原ゆき子、宇野祥平、岸井ゆきの、西田尚美、烏丸せつこ

☆☆☆☆4
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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