「シン・ゴジラ」庵野秀明

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話題作なので観に行った。特に前半のテンポのいい群像劇がお見事。こういう短い早口言葉のようなセリフ回しを短いカット割りでテンポよく描く群像劇は原田眞人監督(『日本のいちばん長い日』『クライマーズ・ハイ』『突入せよ!「あさま山荘」事件』など)がうまいのだがが、庵野秀明監督も見事にその技を盗んでいる。

明らかに震災後の政府・官僚・原子力関係者の対応の混乱ぶりを戯画化して描いている映画だ。会議ばかりで何も物事が進まない政府関係者、前例のないことへの消極的対応、タテ割り主義や組織力学、圧力をかけてくるアメリカ政府、アメリカの属国としての日本も浮き彫りになる。自衛隊の全面協力のもとで、害獣駆除として現行法制内で自衛隊の武器使用を容認するくだりや自衛隊の各兵器の出動ぶりもかなりリアリティを持たせた作りになっている。そのあたりの専門用語を含めたセリフなどディティール演出は見事といってよい。そして間抜けな政府官僚たちと比較して、日本の未来を託す人物たちとして描かれるのが、巨大生物対策チームだ。若い政治家と異端者、はぐれものの官僚やオタク的研究者たちの寄せ集め。このあたりは、アニメ界のオタク的カリスマの庵野秀明の思い入れが強く出ている。

映画全般に、一般市民や家族など心理的、情緒的物語を挿入しなかったのも潔くて、成功しているところだろう。お涙頂戴の家族ドラマよりも、圧倒的な人智を超えた存在である巨大生物とそれに立ち向かう人間たちのドラマという図式である。アメリカと日本との関係を描くにあたって、米国大統領特使の石原さとみが長谷川博己とやりあうシーンが映画虚構的にいろいろ出てくるが、その関係も恋愛関係など描かず、いたってあっさりとした感じも良かった。

肝心のCGでのゴジラの迫力であるが、見ごたえあるものになっていたと思う。名作の日本映画『ゴジラ』の音楽、伊福部昭氏の音楽も使われ、オマージュが捧げられていたところも納得だ。これだけの登場人物に豪華な役者たちばかりではなく、マイナーな役者や映画関係者の犬童一心、原一男、緒方明あたりを出演させているところも庵野秀明らしい。それぞれが短いながらも見事な存在感を発揮していたと思う。エンタメ映画としては申し分ない出来なのではないだろうか。

<追記>
ただ、どこかゴジラの哀しさが感じられない。かつての映画のように。それはゴジラが単なる核(原子力)のシンボルでしかないからだ。図式的なのだ。最初に宮沢賢治の「春と修羅」を詩集を残して死んでいった科学者のことをもう少し描いていたら、彼がゴジラに託した哀しみがもっと感じられたのではないか。

製作年:2016年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:119分
総監督:庵野秀明
監督:樋口真嗣
脚本:庵野秀明
特技監督:樋口真嗣
特技統括:尾上克郎
撮影:山田康介
照明:川邉隆之
美術:林田裕至、久嶋依里
音楽:鷺巣詩郎、伊福部昭
キャスト:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴美子、市川実日子、國村隼、平泉成、渡辺哲、中村育二、矢島健一、津田寛治、塚本晋也、高橋一生、光石研、古田新太、松尾スズキ、鶴見辰吾、ピエール瀧、片桐はいり、小出恵介、斎藤工、前田敦子、浜田晃、手塚とおる、野間口徹、黒田大輔、吉田ウーロン太、橋本じゅん、小林隆、嶋田久作、犬童一心、原一男、緒方明、野村萬斎

☆☆☆☆4
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