「満月の夜」エリック・ロメール

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「喜劇と格言劇」シリーズの第4作。「ロメールと女たち」特集上映、デジタル・リマスター版。スレンダーでコケティッシュな主演のパスカル・オジェはこの作品でベネチア国際映画祭主演女優賞を受賞したが、その直後に24 歳の若さで急逝したそうだ。

ロメール映画の登場人物は、いつも対極の二つの間を揺れ動く。パリと田舎(地方都市・バカンス地)、都会と自然、肉体的なと精神的な、自由と束縛、と嫉妬・・・。いつだって人は「ないものねだりの子守歌♪」(by「東京ららばい」中原理恵)である。そんなわがままで自分勝手な男女をロメールは冷めた視点で人間喜劇として描く。

この映画では、主人公のルイーズ(パスカル・オジェ)は、地方都市とパリの二つの家を行ったり来たり、同棲男の束縛を嫌い、自由を求めて奔放に生きようとする。週末はパリで夜通し遊びたい。「あなたは土曜は朝からテニスでしょ?」と、まったく勝手な女である。同棲相手の男性レミは一緒にいたいと言うが、ルイーズは自分の自由にこだわる。パリでは、男と恋をするのではなく、「孤独」を味わいたいのだ、と。それでいて、パリの部屋で一人でいると寂しくて男友達に電話をかけまくる。要するに程よい距離でちやほやされて遊びたいのだ。距離があれば、相手にやさしく出来る。束縛されると疎ましくなる。男女の関係はいつも難しい。

しかし、そんな地方都市とパリとのほどよい距離感は続かない。パリの遊び相手となる男友達オクターヴは、妻子持ちでありながらルイーズを求めようとする。ルイーズにとってオクターヴは単なる男友達でしかないのだが、相手はそうではない。男の気持ちをもてあそぶ罪な女である。そんなルイーズは、恋人のレミが女性とパリにいたらしいことを知り不安になる。と嫉妬。さらにルイーズはパーティーで知り合ったバンドマンとダンスで盛り上がり、一夜を共にする。その男に友達オクターヴは嫉妬する。ルイーズは肉体関係を持つことで、疾しさを感じ、恋人レミのことをまたしく思う。早朝、同棲相手レミのもとに帰るも、時すでに遅し。恋人レミは、別の女性と暮らし始めていたというお話。

よくある恋話である。それがロメールの手にかかると人間喜劇として楽しめるのだ。登場人物たちへの冷めた視点が面白いのだ。否定も肯定もしない。人間なんてそんな愚かな存在だ。そして、この映画は距離のめぐる物語である。パリと地方、人と人、と友情、孤独と束縛。それぞれのいいとこ取りで、程よい距離を求めても、そうはうまくいかない。男友達のオクターヴは、パリの都会の自由さを語る。誰も自分のことを知らないパリのカフェでの気楽さ。一方、田舎で暮らす束縛と息苦しさ。ルイーズもまた、地方で暮らすことは流刑地のようだと語る。しかし、その都会の享楽と自由さには孤独と寂しさがつきまとい、地方の束縛の裏には親密度と共有がある。それぞれの良さとそれぞれの不自由さ。人はないものねだりをしながらも、どこかで相手に合わせ、何かを我慢し、時や空間を愛する人と共有する。自分勝手な愛は、いつか裏切られるのである。

服装や部屋など色の使い方もオシャレだが、なんといってもパスカル・オジェのキュートさを満喫する映画である。自由奔放で自分勝手で、男を知らず知らずのうちに惹きつけ、振りまわすパスカル・オジェ。彼女の服や髪形や肩ラインや脚の美しさを堪能する映画である。


原題 Les nuits de la pleine lune
製作年 1984年
製作国 フランス
配給 ユーロスペース
上映時間 101分
監督:エリック・ロメール
製作:マルガレート・メネゴス
脚本:エリック・ロメール
撮影:レナート・ベルタ
美術:パスカル・オジェ
編集:セシル・ドキュジス
音楽:エリ&ジャクノ
キャスト:パスカル・オジェ、チェッキー・カリョ、ファブリス・ルキーニ、クリスチャン・バディム、ラズロ・サボ

☆☆☆☆☆5
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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