「日本会議の正体」青木理 (平凡社新書)

ジャーナリストの青木理が現閣僚も多く関わっている右派組織「日本会議」の正体について、取材して解き明かそうとしたもの。読んでみたが、それほど核心に触れる面白い何かが書かれているわけではない。改めて歴史的な経緯などが紹介されている程度で、とりたてて面白くもない。
以下、メモとして日本会議の成り立ちを書いておく。

日本会議は1997年、右派団体「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が合流する形で成立。
「日本を守る国民会議」は、「元号法制化運動」などに取り組んだ団体の発展する形で1981年成立。宇野精一、清水幾太郎、小堀桂一郎、江藤淳、香山健一、村松剛、加藤英明、村尾史郎、瀬島龍三(伊藤忠)、井深大(ソニー)、石井公一郎(ブリヂストンサイクル)、塚本幸一(ワコール)、百地章、大原康男・・・などが参加。「日本を守る会」は、宗教右派組織。神道宗教の中心の明治神宮をはじめとした神社本庁を中心とした神道宗教団体と谷口雅春の巨大新興宗教・生長の家が中心。

日本会議の源流とは、谷口雅春が創始した生長の家や、1960年代の全共闘運動に対抗する学生組織、生学連(生長の家学生会全国総連合)に突き当たる。生学連(椛島有三ら)は、その運動手法を発展・進化させ、神社本庁や他の新興宗教団体の支援を受けつつ、運動組織を巨大化させていった。

基本運動方針は、①皇室の尊崇、②憲法の改正、③国防の充実、④愛国教育の推進、⑤伝統的家族観の重視
資金源は明らかにされていないが、資金豊富な神社本庁や明治神宮などの宗教団体がそれなりの形で支えている。

個別テーマごとにフロント団体
1、美しい日本の憲法をつくる国民の会・・・櫻井よしこ、田久保忠衛、三好達、幹事長・百地章
2、「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会・・・代表・櫻井よしこ、副代表・浅野一郎、中西輝政、西修、事務局長・百地章
3、明治の日推進協議会・・・会長・塚本三郎、高池勝彦
4、みんなで靖国神社に参拝する国民の会・・・小堀桂一郎
5、日本の建国を祝う会
6、平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム・・・櫻井よしこ、田久保忠衛、西修

生長の家が政治結社・生長の家政治連合(生政連)を結成して、政界進出したのが1964年。“生命の実相”にのっとり祖国救済、自主憲法制定、政界の浄化、優生保護法の改正、偏向教育の是正などをスローガンにしていた。しかし、1983年、方針転換し、政治との関わりを一切断つと宣言。人工中絶に反対する立場から優生保護法の改正の運動を展開していたが、医療団体や女性団体の反発を受けて、自民党が法案を見送ったことに失望。比例区導入とともに名簿順位などで自民党との間に溝が広がり決裂。現在の第3代総裁・谷口雅宣は、現実政治への影響力を行使せず「エコロジー」に力を入れ、環境左派的であり、安倍政権に批判的ですらある。

日本会議という巨大な右派団体を作り、育て上げた中枢や周辺には、全共闘運動華やかりし頃に右派の学生運動を組織した生長の家の信者たちがいたことは事実。谷口雅春の政治的な教え、極右的超復古主義、エスノセントリズム=自民族中心主義を信望し続けた「宗教心」がベースにある。そんな者たちは、おおむね極めて真面目で、富や名声を求めず、組織の拡大と意地に尽力。インテリが信者に多く、勉強熱心である。

青木理は、日本会議の正体を、戦後日本の民主主義体制を死滅に追い込みかねない悪性ウィルスのようなものと表現。少数なら問題ないが、その数が増えて身体全体に広がり始めると重大な病を発症して死に至ると締めくくっている。

陰謀論が好きな人たちは、「日本会議」が安倍政権を裏で牛耳っている秘密結社、フリーメーソンのように表現する人たちもいるが、この本を読んでみる限り、それほどの影響力があるとは思えない。右派組織の巨大結集体であるから、「憲法改正」「愛国教育」「家族観」など思想的バックボーンにはなっているだろうが、日本会議に所属している右派議員の立場もそれぞれであり、ひとつにまとまっているわけではなさそうだ。全共闘運動が盛んだった頃の反共意識からまとまった右派組織だが、左翼が衰退するとともに右派組織も様々な考え方、立場の人たちがおり、現憲法に対する考え方も一つではない。
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