「SCOOP!」大根仁

スクープ

予想外に良かった。地べたを這いずりまわってるゴキブリたちのエンタメ・ムービー。ろくでなしに愛を。

1985年に製作された原田眞人監督・脚本の映画「盗写 1/250秒」が原作だという。それを『モテキ』『バクマン。』とヒット作連発で絶好調の大根仁監督が脚本を書き、監督した。

久しぶりにこういう町のゴミのような存在の奴らの真情を描いた映画を観た。昔は、テレビドラマ『傷だらけの天使』のショーケンと水谷豊のような町のチンピラを描いた映画が多くあった。いつの間にか、こういうチンピラ映画がなくなった。若者たちは、賢くなり、無駄なことはせず、自宅に引きこもり、草食化し、オタク化していったせいか、やんちゃで無鉄砲なバカはいなくなった。今回は、チンピラではなく、芸能人のケツばかり追いかけているパパラッチカメラマンだ。社会のクズのような存在ながら、それなりに必死で生きている。無謀とも言えるバカなことをするロクデナシだ。今は普通の若者たちにこのようなパワーはないが、こういうやさぐれ稼業に、まだこういう男もいるかもしれない・・・と思わせる。誰もが、小賢しく、無駄なことはしなくなると、世の中面白くない。

福山雅治は基本的にあまり好きではなかった。是枝監督の『そして、父になる』を観たときも、なんだかいけ好かない嫌味な男を演じていて、ハマっていたが、やっぱり好きにはなれなかった。しかし、この『SCOOP!』の福山雅治はいい。彼のテレビドラマもあまり見てないが、この作品が一番だろう。

冒頭、女のあえぎ声から始まる。この映画がゲスな奴の下世話な映画だと宣言しているようだ。車の中の慌ただしいセックス。もっぱら女好きのチンピラ・カメラマンとして都城静(福山雅治)は登場する。どうやら昔は数々の事件ネタのスクープを副編集長(吉田羊)と組んで連発していたらしいが、今はゲスな芸能人のパパラッチカメラマンである。そんな男と組むことになった新人の野火(二階堂ふみ)。赤い口紅とキャップをかぶった蓮っ葉な女は記者としては全くの素人。そんな彼女が都城カメラマンと組んで、仕事に目覚めていく前半部は、テンポよく小気味いい。芸能人のスクープを二人のコンビで次々とモノにし、発行部数を伸ばしていく。

中盤は、芸能グラビア班と事件班が衝突する中、レイプ殺人鬼の顔写真をモノにするエピソードで、編集部のチームの結束力が描かれる。ここでは滝藤賢一がいい味を出している。発行部数の落ち込みで、やさぐれていた芸能スクープ雑誌記者たちの心意気だ。スクープをものにした打ち上げ場面で、物語はピークに達する。

そしてラストの衝撃の事件。最近、いろいろな映画でバイプレイヤーとしてやたらと出まくっているリリー・フランキー。彼の圧倒的な存在感とともに物語は急降下する。リリー・フランキーの演技にやられた。福山雅治とリリー・フランキーの腐れ縁的な友情に二階堂ふみが絡んでいく。破綻寸前のダメダメ男たちの腐れ縁的な友情。定番と言えば定番だけど、アメリカン・ニューシネマの「真夜中のカーボーイ」や「スケアクロウ」を思い出す。 いい感じだ。

パパラッチ・カメラマンがかつてロバート・キャパに憧れていた話やライカのカメラの最後の写真、1万円の賭けなど、ベタと言えばベタな展開ながら、役者たちの存在感が見事に演出されているため、けっして軽い映画にはなっていない。ちゃんとロクデナシ達のせつない映画になっているのだ。今年のあっぱれなエンタメ・ムービーだ。快作!


製作年 2016年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 120分
監督:大根仁
脚本:大根仁
原作:映画原田眞人
撮影:小林元
照明:堀直之
美術:平井亘
編集:大関泰幸
音楽:川辺ヒロシ
主題歌:TOKYO No.1 SOUL SET feat.福山雅治 on guitar
キャスト:福山雅治、二階堂ふみ、吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキー

☆☆☆☆☆5
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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