「イレブン・ミニッツ」イエジー・スコリモフスキ

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ポーランド映画で初期60年代のイエジ-・スコリモフスキ特集を見た時、その実験性と革新性にビックリした。まさに、数々の傑作がこの時期に誕生した。『身分証明書』、『不戦勝』、『パリエラ』、『手を挙げろ!』などレビューも書いたので、そちらも参考にして欲しい。(イエジ-・スコリモフスキ監督作レビュー)
それらの初期作品群に、ゴダールも興味を持ったという逸話がある。ポーランド・ヌーヴェルバーグである。ロマン・ポランスキーの初期傑作『水の中のナイフ』の脚本には、イエジー・スコリモフスキが参加していた。60年代のポーランドには、優れた若き才能が結集していた。スコリモフスキには、1970年制作の『早春』というカルト的人気の作品もある。

そんなイエジ-・スコリモフスキが17ぶりに復帰したのが『アンナと過ごした4日間』(2009)であり、83分台詞なしで雪の森を逃げ続ける映画『エッセンシャル・キリング』(2011)なども撮っている。そして、この新作『イレブン・ミニッツ』である。1938年生まれだから、もう78歳である。わずか11分間に起きる様々な人物たちのそれぞれのドラマを、様々な映像を駆使して製作したまさに実験作である。凝縮された11分間。「4日間」だったり、「11分間」だったり、森を逃げ続けたり、持続した時間、空間にこだわり続け、いつまでも、果敢に挑戦し続ける監督なのだ。

しかし、ややこの映画は観念的に形式的にやり過ぎた感じである。消化不十分のまま投げ出された感じで、観客はただ戸惑うしかなかった。携帯の手持ちカメラから始まり、監視映像、パソコンのカメラ、並んだモニター、犬の目線、超クローズアップやスローモーションなど今の時代に溢れている様々な映像で表現される。なんの脈略もないバラバラの人々が、11分の間にどう交差していくか?午後5時からの11分間だけなので、それぞれの人生の深みなど描きようがない。観客は想像するしかないのだが、残念ながら僕にはそれぞれの人生が交差する面白味を見い出せなかった。

物語の中心は、女優と嫉妬深い夫だ。女優は映画監督のいるホテルの一室でオーディションを受ける。性的な目線で女優を面接する映画監督。心配になってホテルの一室まで追いかけてきた夫。ホテルの前では、刑務所から出てきたばかりのホットドッグ屋の男。ホットドッグを買いに来た犬を連れた女。あるいはクスリをやりながら人妻とセックスしていたバイク便の男は、夫が早く帰ってきたことで慌てて飛び出しバイクを走らせる。どうやら、ホットドッグ屋の父にホテルまで呼び出されたようだ。ホテルの一室では若いカップルがポルノビデオを見ている。ビルの窓の清掃人。さらに救急車で出産間近な妊婦を運ぶ救急隊員と女性医師。橋の下の画家。強盗をしようとする少年。そんなそれぞれの人々が無関係に羅列される。そして、何人かがホテルに集まってくる。

ビルの間近を低空飛行で滑空する飛行機が何度も挿入され、9.11のテロを思い起こさせる。11分間は、11日のカタストロフを予感させる。パニック。理不尽な暴力。人生は一瞬にしてそんな理不尽な暴力にさらされる。ノイズのような音が映画を支配し、不吉な空気を演出する。画面についた黒いシミ。ちょっとしたボタンのかけ違いで、悲劇は起きる。物語は不消化ながら、実験精神に満ちた映像表現ではある。


作品データ
原題 11 minut
製作年 2015年
製作国 ポーランド・アイルランド合作
配給 コピアポア・フィルム
上映時間 81分
監督:イエジー・スコリモフスキ
製作:エバ・ピャスコフスカ。イエジー・スコリモフスキ
脚本:イエジー・スコリモフスキ
撮影:ミコワイ・ウェプコスキ
編集:アグニェシュカ・グリンスカ
音楽:パベウ・ミキェティン
キャスト:リチャード・ドーマー、ボイチェフ・メツファルドフスキ、パウリナ・ハプコ、アンジェイ・ヒラ、ダビド・オグロドニク、アガタ・ブゼク、ピョートル・グロバツキ、アンナ・マリア・ブチェク、ヤン・ノビツキ、ウカシュ・シコラ、イフィ・ウデ、マテウシュ・コシチュキェビチ、
グラジナ・ブウェンツカ=コルスカ、ヤヌシュ・ハビョル

☆☆☆3
(イ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 サスペンス ☆☆☆3

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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