「アズミ・ハルコは行方不明」松居大悟

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前作『私たちのハァハァ』の評判が良くて観れずに気になっていた若手の注目監督、松居大悟監督の新作を観てきました。もともとの原作がこうなのか、映画での脚本・編集でこうなったのか不明だが、時間軸をいじくりまわしている。それが見ずらいと言う人もいるだろうが、なんだかわからんけれどどんどんテンポで描写していく展開は面白かった。蒼井優のアズミ・ハルコの話。それから、成人式を迎えた20歳前後の高畑充希のアイナ、ユキオ(大賀)、学(葉山奨之)の3人の物語。その2つの物語が軸となり、随所にJKの少女ギャング団が登場する。

前半のなんだかわからない編集のテンポはグイグイと観客を引っ張っていく。無表情にタバコをふかすアズミ・ハルコ、圧倒的な躍動感と騒々しさでオヤジたちをボコボコにする女子高生たち、あるいは映画館でバカ騒ぎする女子高生、さらに成人式に派手な着物と化粧姿でバカっぽく登場するアイナ・・・。しだいに観客は、アズミ・ハルコを見ながら、タイトルにあるようにこの女は、いつ失踪するのか、なぜいなくなるのか気にしながら見ることになる。そして、アイナと再会した同級生のユキオ、学たちが、街中の壁に行方不明のポスターになっているアズミ・ハルコのグラフィックアートの落書きを繰り返す。この2つの物語にアズ・ミハルコが失踪する前と後の時間経過があることがわかるのだ。本物とグラフィックアートで複製される2つのアズミ・ハルコ。時間が過去と未来が入り乱れて、ぐちゃぐちゃと展開する。その2つの物語の合間に、女子高生たちの男への復讐と呼ばれる暴力が描写される。

これは、どこにでもある地方都市の息苦しい閉塞感とその息苦しさの中で居場所を失う女たちへのメッセージが描かれている。部屋着のような恰好でアズミ・ハルコが車で近くのドラッグストアでトイレットペーパーを買いに行くと、同級生に会ってしまうような狭い街。同級生の話はすぐに伝わり、成人式や誰かの結婚式では、誰と誰がつきあって別れたとか、そんなくだらない噂話ばかりだ。アズミ・ハルコの家は祖母が認知症で、その介護でヒステリーを起こす母、無関心な父という最悪な環境、職場もセクハラの社長と専務が言いたい放題。無気力・無表情なアズミ・ハルコは再会した幼なじみとセックスをする。

一方、恋人のいないアイナは人恋しくてたまらない。再会した同級生ユキオとすぐにくっつき、煩わしいほどつきまとう。うんざりするユキオと同じく同級生の学は二人でグラフィック・アートに夢中になる。男との距離感をつかめないアイナはアズミ・ハルコより一回り下の世代で、性格は正反対。暑苦しいほどの密着とよそよそしい無表情。しかし、二人とも次第に男を愛するようになるも、男にとっては都合のいい性の相手でしかなく、飽きて捨てられる。そんな寂しく居場所のない二人の女の復讐をするかのように、女子高生たちは威勢よくオヤジ狩りを繰り返し、暴れまわる。

ラストの女子高生たちの映画館での反乱は、絵空事のイメージでしかないが、作者も映画制作者も若き女子高生たちの活力に希望を持っているのか。それとも、若いうちは集団のパワーで押しきれても、成人して一人一人になると、男に貢ぎ、ダマされ、セクハラ、パワハラの社会の中で、押し潰されて孤独になっていくのが女性の姿なのか。そんな地方都市で閉塞する女性たちに、「行方不明になれ!」、そしてくだらない男たちに、幸せになって見返してやれ!とメッセージを発する。「幸福に暮らすことが 最高の復讐」とスペインのことわざだを持ち出し、傷心のアイナに亡霊のようなアズミ・ハルコが夜の遊園地で語りかける。

つまり、若いうちは躍動できても、社会で生き、男とつきあい、家庭や職場で抑圧されていく女性たちへの応援歌である。タバコの煙とともに失踪するアズミ・ハルコは、そうした閉塞感から、「女たちよ!抜け出せ」と呼びかけるメッセージの象徴である。町中のイメージとして氾濫するアズミ・ハルコは、イコンとなって女たちの幸運の守り神になる。

テンポ感があって面白く見れたけれど、驚くほどの才能が感じられる映画ではなかった。蒼井優はいつもどおり、高畑充希は瞬発力がある。太賀がなかなか面白い役者になってきた。


製作年 2016年
製作国 日本
配給 ファントム・フィルム
上映時間 100分
監督:松居大悟
原作:山内マリコ
脚本:瀬戸山美咲
プロデューサー:枝見洋子
共同プロデューサー:平野宏治、深瀬和美
撮影:塩谷大樹
照明:西田まさちお
美術:高橋達也
編集:小原聡子
音楽:環ROY
主題歌:チャットモンチー
キャスト:蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい、菊池亜希子、山田真歩、落合モトキ、芹那、花影香音、柳憂怜、
国広富之、加瀬亮

☆☆☆3
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tag : 青春 人生 ☆☆☆3

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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