「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」エドワード・ヤン

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長い。236分。3時間56分。ほぼ4時間である。デジタルリマスター版ということで、見逃していた幻の傑作を観た。若くして亡くなったエドワード・ヤン監督は、リバイバル公開で『恐怖分子』を一昨年観ただけだが、本当に素晴らしかった。もう一度観たい。全作品が観たくなる才能あふれる監督だ。

さてこの『牯嶺街少年殺人事件』は少年たちの群像劇だ。 1959年、国民党政府とともに台湾に渡った数百万の中国人(外省人)たち。「未知の土地で動揺する両親の姿に少年たちは不安を覚え、グループを結成して自己を誇示しようとした」という時代背景が字幕で説明される。

エドワード・ヤンの映像は、まず圧倒的な光と闇の美しさだ。夜間学校が舞台となるだけに、映画のほとんどが夜のシーン。その光の描き方がとにかく美しいのだ。必要以上に照明をたかず、闇が効果的に演出されている。そして明滅する光、懐中電灯の光、人物の顔さえハッキリと映し出さない闇。不良グループ同士の抗争場面(ハニーの復讐)でも、刀や短刀で切り裂かれる場面の闇は圧倒的で、一瞬光が明滅し、血が描かれる。

さらに音の使い方が素晴らしい。主人公の少年シャオスー(小四)が、少年グループのボスのハニーが死んでから、久しぶりに登校してきたシャオミン(小明)を見つけ、彼女に自らの思いを告白する場面がある。カメラは友達に別れを告げて彼女のもとに走るシャオス―を移動撮影で追いかけつつ、校内で練習している吹奏楽部の演奏がずっと響き続けている。そして彼が彼女に「自分が君を守る」と思いを告げる場面で、吹奏楽部の演奏が一瞬途切れ、彼の告白がその場にこだまする。なんという素晴らしいシーンだろう。

エルビス・プレスリーの歌う少年の声とともにアメリカの新しい空気が街に流れ、一方で中国から渡ってきた父親たちの不安と苦悩も描かれ、父親は思想統制のためか尋問を繰り返される。国歌斉唱で不動の起立をする場面や海兵隊に行っていたハニーという少年の存在、そして厳しい受験のことなど、当時の変わりつつある台湾の時代の不安が描かれている。

しかし描写は度々省略され、特に前半は少年たちがいっぱい出てきて、なおかつ画面が暗いため、なかなか人物関係が把握できない見にくさがある。それぞれのエピソードの場面が最後まで、きっちり描かれないことも多く、観客の想像に委ねる場面も多い。それでも前半の少年たちの抗争劇の走りや動きが素晴らしい。闇が多く支配する学校や映画スタジオ、たまり場を少年たちは走り回り、暴力をぶつけ合う。

後半は、シャオミンとシャオス―をめぐる男女関係に物語が移行していき、家族と友と恋が中心に描かれていく。シャオス―にとって、美少女シャオミンは最後まで謎である。まさにファム・ファタール。青春映画としてもラストはせつない。

この4時間の作品は、二つの映画を見せられたようなボリュームである。それでも、画面のフレームの使い方や音の演出や光と闇の効果など、あらゆる面において映画的輝きがあり、画面いっぱい想像的豊かさに満ちている。ちょっと長かったが、あらためてじっくり見直したい映画である。


原題:牯嶺街少年殺人事件 A Brighter Summer Day
製作年 1991年
製作国 台湾
配給 ビターズ・エンド
日本初公開 1992年4月25日
上映時間 236分
監督:エドワード・ヤン
製作:ユー・ウェイエン
製作総指揮:チャン・ホンジー
脚本:エドワード・ヤン、ヤン・ホンヤー、ヤン・シュンチン、ライ・ミンタン
撮影:チャン・ホイゴン
美術:エドワード・ヤン、ユー・ウェイエン
編集:チェン・ポーウェン
音楽:チャン・ホンダ
キャスト:チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン、クー・ユールン、タン・チーガンダ

☆☆☆☆☆☆6
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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