「台北ストーリー」エドワード・ヤン

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エドワード・ヤンの1985年長編2作目。台湾での公開時に4日間で上映打ち切りとなり、日本では公開されないまままだった。エドワード・ヤン生誕70年、没後10年となる2017年に、マーティン・スコセッシによって4Kデジタルリストア版で修復され、劇場初公開が実現した。

あらゆる面で完成された『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』に比べると、やや荒削りな部分もあるが、随所に映像センスがキラリと光るシーンがいっぱい。『恐怖分子』もスタイリッシュで素晴らしい映画だったが、やはりエドワード・ヤン監督作品は全部観たいと思った。

「アメリカだって、万能薬じゃない。儚い夢さ」と女に言う男は、野球少年の栄光の過去から離れられない。女は「すべては変った。あなたは置き去りよ」と男に言う。いつまでも踏ん切りがつかずに台北でぐずぐずしている男。そして過去の友人と関わりあい、トラブルに巻き込まれていく。一方、未来へ向いて進もうとする女は、男とアメリカへの移住を持ちかける。恋人たちのすれ違いの映画である。しかし、劇的な展開があるわけではなく、ストーリー的にはまったりとして淀んでいる。前半はやや退屈だ。しかし後半はどんどん引き込まれていく。アメリカ・日本・中国・台湾。どこへ行くことも出来ず、台北でもうまくいかずに距離が少しずつ離れていく男と女。そして衝撃のラスト。

冒頭は新しい部屋を見る男女のシルエットから始まる。家具をどこに置くかなど、女は希望に満ちている。一方、男は「内装に金がかかりそうだ」と言い、バットの素振りをしつつどこか投げやりだ。アメリカの大リーグやニュース、日本のカラオケやCM、広島戦の野球中継、巨大な富士フィルムの電飾看板も登場する(この巨大電飾看板の前でのシルエットシーンも素晴らしい!)。アメリカや日本の文化が流れ込み、経済成長しつつ変貌する台北。成功したものもいるが、男のアリョンは昔ながらの布問屋で働き、パッとしない。野球仲間の友人も妻に逃げられ、子供を抱えて貧困そのもの。一方、女のアジンは不動産会社で働くバリバリのキャリアウーマンであり、アメリカ移住を夢み、ディスコで仲間と遊び続けている。バイクで台湾総統府の夜のイルミネーションを疾走する場面も象徴的で美しい。女性のアジンは変りつつある台湾そのものであり、男のアリョンは、変わらない古くからある台湾でもある。

二人の距離は埋まらない。「変わること」も「変らないこと」もどちらにも「万能薬」などないのだ。その空虚感・閉塞感のようなものが、ラストの悲劇とともに、救急車で運ばれるアリョンの姿がロングショットの映像で描かれる。タバコをふかしながら警官と談笑する救急隊員。オープニングと同じように、新しいビルで事業を始めるパートナーの夢を聞くアジン。時代の変化が二人を飲み込んでいく。

主演した盟友ホウ・シャオシェンは、既に「風櫃(フンクイ)の少年」「冬冬の夏休み」などを発表していた有名監督だったが、エドワード・ヤンのために自宅を抵当に入れてまで製作費を捻出し、完成へとこぎつけたと言われている。奇跡的な成り立ちで完成した台北の街の変化そのものを映画にした台湾ニューシネマである。


原題 青梅竹馬 Taipei Story
製作年 1985年
製作国 台湾
配給 オリオフィルムズ
上映時間 119分
監督:エドワード・ヤン
製作:ホウ・シャオシエン
脚本:エドワード・ヤン、チュー・ティエンウェン、ホウ・シャオシェン
撮影:ヤン・ウェイハン
音楽:ヨーヨー・マ
キャスト:ツァイ・チン、ホウ・シャオシエン、ウー・ニェンツェン、クー・イーチェン、リン・シュウレイ、クー・スーユン、ウー・ヘイナン、
メイ・ファン、チェン・シューファン、ライ・ダーナン

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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