「パーソナル・ショッパー」オリヴィエ・アサイヤス

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奇妙な映画である。『夏時間の庭』のオリヴィエ・アサイヤス監督。ホラーのようでもあり、サスペンス風展開もあり、スピリチュアルなものとアート(表現)の関係を描いたようでもある。「見えるもの」と「見えないもの」。ネットとの「見えない存在」とのメールの会話。

冒頭はまさにホラーである。黒沢清の『ダゲレオタイプの女』を思い出す。パリの古い屋敷に霊的存在がいるかどうかを女性が一晩泊まり確かめる。どうやらその家は、その女性の双子の兄が死んだ家らしい。闇。誰もいない空間。ギシギシと鳴る床音。階段。夜の闇に開け放つ窓。彼女は霊を呼び寄せようとしているかのようだ。

主人公のモウリーン(クリステン・スチュワート)は、セレブな有名人の衣装やアクセサリーなどを買物する「パーソナル・ショッパー」という仕事をしている。そして彼女は霊媒師でもあり、同じ霊媒師だった死んだ兄からの「サイン」を待っている。恋人がオマーンにいるにもかかわらず、一人黙々とパリで買い物をし、美しい衣装を用意する。そんな彼女のもとに、ケータイにメールが届くようになる。彼女のことをすべて知っているかのような謎のメールが。死んだ兄からの「サイン」を待っている彼女は、その謎のメールに囚われ、乱されていく。「別の人間になりたいか?」。モウリーンの秘かな欲望をメールは刺激し、雇い主の女性キーラの衣装や靴を身に纏い、彼女は別の人間になろうとする。そして、その雇い主の家で殺人事件まで起きてしまうのだ。

ホラー映画として始まり、スピリチュアルな霊と芸術のエピソードが語られる。抽象画の創始者とされる女性画家ヒルマ・アフ・クリントは霊の力で描いていたらしいし、文豪のヴィクトル・ユゴーもまた降霊術にハマっていたという。死後の霊的世界とのコンタクトと芸術。そして、シャネルやカルティエなどセレブなファッションの世界の現実。彼女は雇い主のキーラともなかなか会えず、「見えない存在」に指図されているようである。

そして、携帯の謎のメールが届くようになり、「見えない世界」からのメッセージは、現代のIT社会とも重なり、物語はサスペンス映画となる。謎のメールの差出人は誰か?家に届くホテルの部屋のカード。古い屋敷、雇い主キーラの豪華な部屋、そして自分の部屋、さらに謎のホテルの部屋。この映画で、部屋の空間は大きな意味を持っている。空間に人は囚われる。

そして、キーラが殺され、怖くなってモウリーンが身を寄せた兄の恋人の家で、兄の霊が現れる。落下して割れるグラス。犯人が見つかり、事件が解決した後に、モウリーンは恋人のオマーンの山の小屋を訪れる。その部屋で、再び霊が彼女を迎える。その霊は兄なのか、別の霊なのかわからないまま、映画は唐突に終わる。

なんなのだろう?殺人事件の犯人は明らかになるのだが、その事件そのものは全く説明されず、モウリーンとの謎のメールについても、その詳細は描かれないまま。監督はサスペンスの仕掛けを利用したが、その種明かしには全く興味がなく、「見えないものからのメッセージ」にしか関心がないかのようだ。

「見えないもの」「霊的世界」が、空間に潜んでいる。「見えないもの」に導かれて、人は行動する。囚われてしまう。現実世界と霊的世界。現実の自分ともう一人の自分。その間に私たちは生きている・・・。


原題 Personal Shopper
製作年 2016年
製作国 フランス
配給 東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
上映時間 105分
監督:オリヴィエ・アサイヤス
製作:シャルル・ジリベール
脚本:オリヴィエ・アサイヤス
撮影:ヨリック・ル・ソー
美術:フランソワ=ルノー・ラバルテ
衣装:ユルゲン・ドーリング
編集:マリオン・モニエ
キャスト:クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガー、シグリッド・ブアジズ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、タイ・オルウィン、アンムー・ガライア、ノラ・フォン・バルトシュテッテン、バンジャマン・ビオレ、オードリー・ボネット、パスカル・ランベール

☆☆☆☆4
(ハ)
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ジャンル : 映画

tag : 人生 家族 サスペンス 幽霊 ☆☆☆☆4

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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