「はなればなれに」ジャン=リュック・ゴダール

はなればなれに


映画を撮るヨロコビに満ちたチャーミングで幸福なるこの映画を、映画館の暗闇で観られる幸せを噛みしめつつ、久しぶりに観賞。アンナ・カリーナの躍動する身体、その可らしさを随所に堪能できる映画だ。

英語教室で髪をおろしたり、休憩時間に舌を出してキスをしようとする場面。そして、あの有名なカフェでの3人のダンスシーンのなんという楽しさよ。Q・タランティーノが夢中になったのはよくわかる。そのカフェでは、3人の坐り位置がぐるぐると入れ替わる演出もまた面白い。1分間沈黙を守るゲームを3人でやると、ノイズそのものもカットアウトされ、映画はまったくの無音になるお遊び。こっそりオディール(アンン・カリーナ)のコーラにリキュールを入れちゃうアルチュール(クロード・ブラッスール)と帽子をかぶる寡黙な二枚目フランツ(サミー・フレイ)。この男2人と女1人のトライアングル・ラブの関係は、トリュフォーの『突然炎のごとく』や、ロベール・アンリコの『冒険者たち』など、様々な映画や文学に使われている基本的なパターンだが、個人的には大好きなものが多い。

ルーブル美術館をゲリラ撮影で3人に走らせた場面は、『突然炎のごとく』で3人が走る陸橋のシーンでも繰り返さたのかと連想させられる。オディールが二人に送られて家に帰ってから、「買物してくるわ」と言って屋敷の裏の林を抜け川を渡って、再び彼らのもとに駆けつけるアンナ・カリーナの躍動とミシェル・ルグランの音楽もまたウキウキとしてくる。フランツとアルチュールのビリー・ザ・キッドを真似た拳銃に撃たれるごっこ遊びは、ラストで本当の死として繰り返される。遊びのような強盗ごっこが、本当の殺人事件になってしまう感じは、まさに『勝手にしやがれ』など初期のゴダール映画の定番だ。フィクショナルな映画的死。

当時夫婦だった、ゴダールとアンナ・カリーナが設立した製作会社「アヌーシュカ・フィルム」の第1弾作品。音楽は『シェルブールの雨傘』など有名なミシェル・ルグラン。車、ピストル、美女、大金、遊び、踊り、歌、走る、朗読や引用、そして殺人・死・・・。映画的道具立て満載で、ラストの南への逃避行は、後の『気狂いピエロ』へとつながっていく。

やっぱりアンナ・カリーナが出ている初期のゴダール映画は、本当に楽しく、テンポと躍動感があって大好きだ。


原題:Bande a part
製作年:1964年
製作国:フランス
配給:コピアポア・フィルム
日本初公開:2001年2月3日
上映時間:96分
監督:ジャン=リュック・ゴダール
原作:ドロレス・ヒッチェンズ
脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ラウール・クタール
音楽:ミシェル・ルグラン
キャスト:アンナ・カリーナ,クロード・ブラッスール,サミー・フレイ,ルイーザ・コルペイン

☆☆☆☆☆☆6
(ハ)
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 青春 ☆☆☆☆☆☆6

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
189位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
85位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター