「三度目の殺人」是枝裕和

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試写会で観賞。

家族のあり方、疑似家族も含めた家族的コミュニティを描き続けてきた是枝裕和監督が、法廷サスペンス劇を作った。冒頭、役所広司が男を後ろから殴り殺す場面から始まる。そして遺体に火をつける。殺人場面から始まるこの映画は、その殺人犯の弁護を引き受けることになる弁護士の福山雅治と殺人犯の役所広司の法廷劇である。

犯人役の役所広司の得体の知れなさがいい。さらに力の抜けた感じの福山雅治もいい。刑務所の接見室で顔を合わせながら何度も会話を交わす二人。被害者の娘である広瀬すずは、物言わぬ印象的なまっすぐな瞳がいい。広瀬すずと福山雅治が初めて話をする公園の場面、見上げる木々の葉たちとその風に揺れる葉音が印象的だ。

真実は藪の中。何が本当なのかは分からない。法廷は「真実を明らかにする場所ではない」。「真実などどうでもいい。依頼人の利益になるかどうかが大事なんだ」と言う功利主義的な弁護士の重盛(福山雅治)。「依頼人への共感や理解さえ必要ない」と言い放っていたのだが、次第に、依頼人である三隅(役所広司)に興味を持ち、本当のこと、真実を知りたくなる。三隅と重盛がガラス越しに手を重ねる場面が印象的だ。三隅は重盛の娘のことを感じ取る。重盛は、妻とうまくいかなくなり、あまりかまってやれず、万引きをする娘のことが気になっている。是枝監督得意の家族のモチーフが、この映画でも重要である。殺人犯・三隅にとって、被害者の娘の咲江(広瀬すず)は、自分の娘代わりだったのか。父との不幸な関係の代理を三隅に求めていた咲江と、小さい頃雪で遊んだ娘との思い出を胸に、罪滅ぼしのように疎遠になった娘の代理として、咲江を可愛がっていた三隅。そして弁護士の重盛とその娘。それぞれがそれぞれの代理の父と代理の娘。

結局、何が本当に起きたことなのかハッキリしない。三隅は、咲江のことを思って彼女の父を殺したのか。あるいは咲江自身が父を殺したのか?三隅は、咲江に裁判で辛い告白をさせないために、「ほんとうは自分は殺していない」などと証言を変えたのか?謎が謎のまま残る。

最後の重盛(福山雅治)と三隅(役所広司)の対面は必要だったのか。さらに三隅が謎をかける。自分が「人の役に立てた」とすれば「いい話」だと。「器」だと三隅のことを表現した重盛は何を思ったのか。三隅は咲江(広瀬すず)の傷と哀しみを感じ取った「器」だったのか。手を重ねて人の心を読み取ったように。人の感情と共鳴する「からっぽの器」。福山と役所の顔が重なる映像は面白い。母役の斉藤由貴も複雑な心を抱える大人の晦渋が出ている。斉藤由貴と広瀬すずの「夫=父」をめぐってのやり取りの緊迫感も恐ろしいほどだ、それぞれの人物が、単純な設定ではなく、それぞれの「本当」と「闇」を抱えた心の奥行きがあるところが面白い。

家族のあり方を描き続けてきた是枝監督が挑んだ法廷劇。真実とはなにかを問う。それぞれの真実があり、それぞれの本当がある。そして家族の中にもまた、それぞれの真実があり、それは家族といえどもお互いに理解できない壁がある。家族でじゃない方が家族のようになれる関係。人と人との間に横たわる深い闇、あるいは壁。それを知るためにどこまで人のことを知ろうとすべきなのか。人と関わるべきなのか。

北海道の雪の俯瞰、そして見上げる美しき緑の木々のざわめきなどの自然の広がりのある映像を挿入しつつ、行き詰まる密室の接見室や法廷でのやり取りが見事なサスペンスを作りだしている。

製作年 2017年
製作国 日本
配給 東宝、ギャガ
監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影:瀧本幹也
照明:藤井稔恭
録音:冨田和彦
美術監督:種田陽平
音楽:ルドビコ・エイナウディ
キャスト:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子、松岡依都美、橋爪功、斉藤由貴、吉田鋼太郎

☆☆☆☆☆5
(サ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : サスペンス 法廷 ☆☆☆☆☆5

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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