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「散歩する侵略者」/『予兆 散歩する侵略者」黒沢清

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黒沢清の新作ということで期待していたのだが、やや肩透かしか。『リアル 完全なる首長竜の日』を観た時のような娯楽エンタメ映画としてそこそこ面白いんだけど、最後に「が地球を救う」というベタな着地をやられてもねぇという感じ。

松田龍平にピッタリという感じの宇宙人の無表情や奇妙な歩き方といい、唯一の真っ当な地球人の長澤まさみの怒りの熱演といい、女子高生の宇宙人、恒松祐里ちゃんのキレキレの格闘アクションやチョイ役ながら東出昌大の不気味さ、長谷川博己の『北北西に進路を取れ』的な爆撃機との戦闘やラストの死に様などいい感じだ。宇宙人が人間になりすまして、人間の概念を奪うというやや観念的な展開など、いろいろ考えさせられるし、それなりに面白く出来ているんだけど・・・。

黒沢清はやはりちょっと怖い感じのじわ~とした恐怖や不安を煽る映画の方が合っているなぁという気がする。前作の『ダゲレオタイプの女』の生と死の境界がわからなくなる感じは最高だったし、霊とのの道行き『岸辺の旅』も大好きだった。『CUT』や『LOFT』や『ドッペンゲルガ―』、『アカルイミライ』『回路』『カリスマ』『ニンゲン合格』『CURE』など漠然とした存在の不安や恐怖を描くのは本当に上手いし、面白い。一方、やや活劇的な『勝手にしやがれ』シリーズも好きだったりするのだけれど、『リアル 完全なる首長竜の日』のような、少し派手な感じのエンタメ色が強くなると、どうもしっくりこない。この作品は、世界の終末感と家族の崩壊を描いた『トウキョウソナタ』の系列に属する映画のような気がするが、もう少し奇妙なままでいって欲しかった。

『トウキョウソナタ』や『クリーピー偽りの隣人』でもあった地獄の果てへのドライブシーンは、この映画でもあって印象的だ。地球が滅びるということが確実になりつつも、宇宙人である真ちゃんともう一度やり直せそうな気になっている長澤まさみ演じる鳴海のどこかの果てへのドライブがなんともせつない。そして、「の概念を私から奪って」と言う鳴海。薄暗く不気味な空と海を見つめる二人。そこまではいいんだけど、それで地球侵略が途中で撤退となって、の概念を失った鳴海にの概念を獲得した宇宙人の真ちゃんがいつまでも寄り添うというラスト、う~ん、陳腐だなぁという感じがした。

奇妙でザワザワする感じの不気味さや妖しさ、不安定さこそ、黒沢清の真骨頂だと思うのだが、この映画ではちょっと物足りない。長谷川博己も、最後は人間を見捨てて宇宙人にシンパシーを感じていくのに、ややまとも過ぎたような気がするし、宇宙人の若い二人もあっさり死んじゃうので、なんだか不気味さがもの足りない。宇宙人が私たちのそばに人間の仮面をかぶって存在してるかもしれない・・・というような不気味なままで終わってもよかったのではないだろうか。

あっ、長澤まさみの「あぁ、いやんなっちゃうなぁ、もぅ~」はおしくて良かったです。


製作年 2017年
製作国 日本
配給 松竹、日活
上映時間 129分
監督:黒沢清
原作:前川知大
脚本:田中幸子、黒沢清
プロデューサー:荒川優美、高嶋知美、飯塚信弘
撮影:芦澤明子
照明:永田英則
VE&DIT:鏡原圭吾
美術:安宅紀史
編集:高橋幸一
音楽:林祐介
キャスト:長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、恒松祐里、長谷川博己、前田敦子、満島真之介、児嶋一哉、光石研、東出昌大、小泉今日子、笹野高史

☆☆☆☆4
(サ)

『予兆 散歩する侵略者』黒沢清

予兆


『散歩する侵略者』本編のスピンオフとして制作され、WOWOWで放送&ネット配信された全5話のドラマ「予兆 散歩する侵略者」を、「劇場版」として一本にまとめた作品。劇場版は未見ながら、WOWOWでやった見たドラマは見た。実はこちらの方が出来がいいと思う。不気味な怖さはこちらの方があるし、東出昌大の不気味さは素晴らしい。スペクタクルとしての派手さは、本編の方が上なのだが、WOWOWドラマ版は、金をかけずに、日常にひたひたと侵入してくる怖さを描いている。登場人物の立ち方や配置など、ドキッとする場面が多い。黒沢清らしい不気味さはこちらの方に色濃く出ているような気がする。映画版の長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、長谷川博己の熱演ぶりももちろんいいのだが、夏帆、染谷将太、東出昌大のキャスティングも素晴らしかった。やはり脚本に高橋洋が参加しているから、怖いのか。個人的には、『予兆』の方が好きだ。

製作年 2017年
製作国 日本
配給 ポニーキャニオン
上映時間 140分
監督:黒沢清
原作:前川知大
脚本:高橋洋、黒沢清
撮影:芦澤明子
照明:永田英則
美術:安宅紀史
編集:高橋幸一
音楽:林祐介
キャスト:夏帆、染谷将太、東出昌大、中村映里子、諏訪太朗、渡辺真起子、中村まこと、大杉漣

☆☆☆☆☆5
(ヨ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 家族 SF ☆☆☆☆4 ☆☆☆☆☆5

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プロフィール

ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
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映画にまつわる雑文です。
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映画ベスト10 2009~2017年
2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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