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「動くな、死ね、甦れ!」ビターリー・カネフスキー

動くな

驚いた!圧倒的な子どもたちの動きの躍動感、走り、逃げ、駆けまわる。そして喧騒とがなり声。台詞をなぜあそこまで大声でがなり立てるのか。まるで、がなり立てないと生きてられないかのように、貧しい生活の中で生きるのに必死な大人たち。そんな大人たちにかまわれぬまま、イタズラを繰り返す主役の少年の表情とそれを見守る生意気な守護天使の少女。その二人の圧倒的な存在感の素晴らしさ。さらに後半の逃避行と転落の予感・・・。そして衝撃のラスト。う~ん。これはトリュフオーの「大人はわかってくれない」ともビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」とも違った意味での、少年と少女の孤独な魂の冒険映画である。

蓮實重彦が「『動くな、死ね、甦れ!』は、かけねなしの傑作でありこれを見逃すことは生涯の損失につながるだろう」とまで言っている映画。是枝裕和監督も「<ドキュメントとフィクション>の境界、 それに対するカネフスキーの眼差しとアプローチは、観るものに確かな刺激と感動をもたらす。」とコメントを寄せた。こんな評判を聞きつけて、見過ごすわけにはいかなかった。

1990年、カンヌ国際映画祭に出品された54歳の新人監督ヴィターリー・カネフスキーの作品。8年間無実の罪で投獄されていた経歴を持つ彼は、旧ソ連の炭鉱町・スーチャンでの少年時代の記憶をスクリーンに甦らせた。ほとんど素人同然の役者たちで、ドキュメンタリーのように映画は荒々しく日常を切り取る。

白黒映画で、ぬかるみの湿った土の上で泥だらけになって子どもたちが動き回って遊んでいる。第二次大戦直後の闇市のような貧しい炭鉱町の生活。雪も降る冷たく暗い町。戦後の混乱と生活苦。そして、日本人の強制収容所が近くにあり、日本の民謡「南国土佐を後にして」、「五木の子守唄」、「炭坑節」が突然に日本語で歌われ、ギョッとする。強制労働をさせられている日本兵も登場するし、火あぶりで処刑される場面も映し出される。妊娠したらここから出られると、捕虜となっている15歳の少女が男に抱いてくれと懇願し、そんな場面を少女が訳知り顔で少年に「あなたはわからないでしょ」と言う場面もある。また、配給の小麦粉を泥と混ぜて食べる狂った元学者も登場する。終戦直後の泥だらけの貧しさと狂気。

闇市のようなところで少女の真似をしてお茶を売り始める少年。そのお茶売りで手にしたお金も、母には「盗んだでしょう」と咎められ、せっかく手に入れたスケート靴は盗まれ、取り返しに行くと大人に追いかけらる。少年はいつも孤独だ。そんな時に、助けてくれるのが幼なじみの少女だ。二人は走り、逃げる。少年の母は忙しく、男といちゃつく時間はあるが、少年にはちっとも構ってくれない。雪の校庭でのスターリン統制下の厳しい行進練習。そんな時でも、トイレにイースト菌をばらまいて道を糞尿まみれにしたり、少年はいつも何かを仕出かす問題児だ。挑戦的な眼差しが印象的。そして、ついには列車をイタズラで脱線させてしまい、町にいられなくなる。

映画の後半は、炭鉱町の喧騒から静かな逃避行に。少年は、近郊の町で一度は警官に捕まるも逃げ出し、窃盗犯罪グループと行動をともにする。しかし、知り過ぎたと命を狙われてしまう。そんな少年の前に、またしても幼なじみの少女が突然現れる。都合よすぎるのだが、少年と少女は離れられない運命にあるかのようだ。走り、逃げる二人。汽車に乗り、線路を故郷の町まで歩く。憎まれ口を叩きながらケンカばかりしていた少年と少女が、少しずつ成長していく。初恋以前のような二人の関係。そして、カメラは肝心な場面を映さずに、ある残酷な結末を用意していた。ラスト、監督の声が画面にかぶさる。そういえば、冒頭も「みんな準備はいいか? 始めよう。」と監督のかけ声で始まった。まさに、監督の記憶の再現とも言える映画なのだ。

原題 Zamri, umri, voskresni!
製作年 1989年
製作国 ソ連
配給 gnome
日本初公開 1995年3月18日
上映時間 105分
監督:ビターリー・カネフスキー
脚本:ビターリー・カネフスキー
撮影:ウラジミール・ブリリャコフ
美術:ユーリー・パシゴーエフ
編集:ガリーナ・コールニローバ
音楽:セルゲイ・パネビッチ
キャスト:パーベル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ

☆☆☆☆☆☆6
(ウ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆☆☆6

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映画ベスト10 2009~2017年
2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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