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「光」 大森立嗣

光

今年は同じタイトル「光」で、河瀬直美監督の映画もあるが(未見)、こちらは三浦しをん原作で、大森立嗣監督の作品。大森立嗣監督は、舞踏家、麿赤児の息子で、俳優の大森南朋は弟。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」、「まほろ駅前多田便利軒」、「かぞくのくに」、「さよなら渓谷」、「俳優 亀岡拓次」など佳作、力作が多く、特に「ケンタのジュンとカヨちゃんの国」は暴力描写も含め、傑作だ。

三浦しをんの原作は以前に読んでいた。東日本大震災が起きる数年前に書かれた、津波で島の多くの人々が亡くなり、生き残った子供たちのその後の物語だ。

三浦しをん「光」

ほぼ原作を踏襲して映画は作られている。大森立嗣のこれまでの映画と同様、この作品も力強く、人間の闇と暴力を描いた佳作だ。オープニング、島の大きな木が映し出され、そこにビートの効いた切迫した音楽が流れてくる。ジェフ・ミルズの音楽がいい。大きな木、自然の荒々しさと強さ、力のようなものが感じられる。そこには人間が持っている闇、暴力の不吉さも暗示させている。津波という圧倒的な自然の暴力とそれ以上に根深い人間の闇。

少年時代の島での生活。信之という中学生の少年と篠浦未喜という少女。二人は神社の片隅でしばしば抱き合う関係のようだ。島の自然と少年たちの性の目覚め。そして、父親に虐待されている年下の幼い輔という少年が、信之の後を追いかけるようにして慕っている。そんな3人が、ある事件を共有する。そして、その後やってきた津波で家族も島の生活も、すべてを失う。

物語は、25年後、過去を閉じ込め市役所で淡々と生きている信之(井浦新)とその妻南海子(橋本マナミ)とその娘の3人家族の描写へと移っていく。どこにでもある日常。古い団地。しかし、その家族にも何やら不吉なものが忍び込みつつある。保育園に娘を預け、どこかに向かう妻、南海子の歩く後ろ姿が長く映し出される。安アパートでの若い男とのセックス。彼女の満たされぬ思いは、どこにあるのかが次第に浮かび上がっていく。そして、浮気の相手である若い男が、あの島での少年、輔(瑛太)であることがわかり、物語は封じ込めた過去が、輔によって再び現在へと炙り出されていくのだ。女優として有名人になった篠浦未喜こと中井美花(長谷川京子)のもとにも、輔から手紙が届く。過去に引き戻される3人。封じ込めた暴力の闇が再びうごめき出す。

信之は美喜を求め、抜けられなくなり、輔は信之を求めて、抜けられなくなる。封じ込めて生きてきた過去の亡霊。しかし、美喜は、誰も信じられず、何も感じられなくなり、近寄ってくる男を利用するだけの女になっていた。信之に助けられたとさえ思っていない。「助けて」ともあの時言わなかったと冷たく言い放つ。輔は、父の暴力の現実から逃れるために、小さい頃から信之を求め、信之に助けて欲しかった。しかし、信之は見て見ぬふりをした。その少年期の想いが、大人になって、複雑な憎関係へと屈折していく。誰かの必死に求めている瑛太演じる輔の存在がせつない。井浦新は、無表情に自らの心を封印し、長谷川今日子も誰も信じられない寂しい女を好演している。意外だったのは、妻役の橋本マナミが妖艶な空っぽさを見事に演じていたところだ。4人のそれぞれの闇の深さが見事に描かれている。と渇望。犯されながら少年を見ていた少女は笑っていたのか。女の魔性ぶりが妖しく、わからない謎として描いているところも、大森立嗣監督ならではの視点だ。


「ケンタのジュンとカヨちゃんの国」
「さよなら渓谷」

製作年 2017年
製作国 日本
配給 ファントム・フィルム
上映時間 137分
監督:大森立嗣
原作:三浦しをん
脚本:大森立嗣
撮影:槇憲治
照明:野村直樹
美術:黒川通利
編集:早野亮
音楽:ジェフ・ミルズ
キャスト:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ、南果歩、平田満

☆☆☆☆4
(ヒ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 家族 暴力 ☆☆☆☆4

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映画ベスト10 2009~2017年
2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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