「永遠のジャンゴ」エチエンヌ・コマール

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大好きな音楽であり、その偉大なるミュージシャン、ジャンゴ・ラインハルトの伝記的映画である。僕がジャンゴ・ラインハルトの音楽を最初に聴いたのは、『ルシアンの青春』というフランス映画の音楽だった。これもナチス占領下のフランス片田舎の少年と少女の映画だった。
『ルシアンの青春』音楽「マイナー・スウィング」
このギターのリズムになんとも惹かれた。それが、ロマ(ジプシー)の音楽とスウィングジャズを融合させたマヌーシュ・ジャズと呼ばれるものである。その代表的なミュージシャンがジャンゴ・ラインハルト。速いテンポで刻むギター・カッティング、ジャズのスウィング感、ウッド・ベースやバイオリン、クラリネットなども加わり、どこか哀愁を帯びながらも、体を揺らしたくなるような軽快な音楽である。彼の音楽の影響を受けたフレンチ・アニメ『ベルヴィル・ランデブー』(シルヴァン・ショメ)というのもあった。
『ベルヴィル・ランデブー』シルヴァン・ショメ
ジャンゴ・ラインハルトは、1910年1月23日ベルギー生まれ(~1953年5月16日)。幼少の頃から家族とヨーロッパ各地を放浪してまわり、ギターやバイオリンの演奏を身につけて育ったという。
映画は1943年、ナチス・ドイツ占領下のパリで、すでに人気者となっているミュージックホールでの演奏場面がら始まる。軽快な音楽で思わず惹きこまれていく。まだ音楽が存分に楽しめたパリだが、次第にダンスも自由に踊れなくなるようになっていく。ミステリアスな美女のルイーズも登場し、映画的フィクションも盛り込まれる。ナチス占領下で迫害を受けるロマ(ジプシー)、ドイツでの演奏会を拒否して逃げるジャンゴたち。スイス国境近い村で、ナチス官僚が集う晩餐会の演奏、ナチスに追われてスイスへ亡命するジャンゴの様子などが描かれる。正直言って、映画はそれほどいい出来ではない。ルイーズとの関係も中途半端だし、戦時下のサスペンスもそれほど盛り上がらない。レジスタンスの逃亡を助けるために、仕方なくドイツ人たちの前で演奏するジャンゴたちが、テンポが速くならないよう注意を受けつつも、次第にスウィングが始まり、客たちが踊りだす場面が面白い。次第に会場が盛り上がっていくのだが、ナチス上官の「猿の音楽に惑わされるな」の一言で演奏は中止され、その後、ロマたちのテントや車などの住居が焼き払われる。音楽の力を描きつつ、それが抑圧され、迫害された時代とともに生きた天才ギタリストの人生の一断片である。まぁ、ジャンゴの音楽を存分に楽しめただけでも嬉しくなる映画である。
原題 Django
製作年 2017年
製作国 フランス
配給 ブロードメディア・スタジオ
上映時間 117分
監督:エチエンヌ・コマール
脚本:エチエンヌ・コマール
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
美術:オリビエ・ラド
音楽:ジャンゴ・ラインハルト、ウォーレン・エリス
キャスト:レダ・カティブ、セシル・ドゥ・フランス、ベアタ・パーリャ、ビンバム・メルシュタイン、ガブリエル・ミレテ、ジョニー・モントレイユ、バンサン・フラド、アレックス・ブレンデミュール、グザビエ・ボーボワ、パトリック・ミル
☆☆☆3
(エ)
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コメントの投稿
No title
この映画は見たかったのですが、見逃してしまいました。僕はギターを弾きます。50歳代になってようやくジャズギターの味わいがいいな、と思うようになりました。本作で使われているギター、あれ、たぶん、おフランス製、デュポンというギターメーカーの逸品だとおもいます。
Re: アマミヤユキトさん、コメントありがとう
楽器が出来るのは羨ましい。ジャズギター、カッコいいですよね。楽器は詳しくないので、映画でのギターのメーカーはわかりませんでしたが、演奏は最高でした。