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「さようなら」深田晃司

ずっと気になっている作品をやっと見た。平田オリザのアンドロイド演劇の映画化だ。幸いなことに、このアンドロイド演劇は以前に観ているのだった。平田オリザと石黒浩教授のトークも一緒のステージだった。これを観た時は、やはりアンドロイドの芝居の存在感に惹きつけられた。微妙な間一つで、下手な役者より感情を喚起させられるということに驚いた。平田オリザ自身が役者に演技をつける時に、「あと0.3秒、間をとって」というような、心理的な演出ではなく時間的・数値的な演出をつけるという話をしていた。それがそのまま、アンドロイドにも当てはまるのだ。この映画もまた、アンドロイドが朗読する詩がとても効果的であるし、その朗読の間の取り方など素晴らしい。さらにラストは、最後に一人だけ残されたアンドロイド自身の「死ねない苦しみ」、「死のうとする意思」まで示されるという驚きの展開まである。まさに「死」を超えて、「遠くへ」という終わり方だ。演劇自体はもっと抽象的でシンプルだった印象があるが、映画のエンディングはややクドイ感じもするが、人間と世界、そして残されたアンドロイドの孤独まで浮き上がってきて、不気味でさえあった。

とにかくスゴイ終末感だ。この世の終り。一人一人いなくなる絶対の孤独。深田晃司監督は『淵に立つ』でも、とことん「死の世界」と向き合った映画を撮った監督である。この作品もまた、「死の世界」へと向かう恐るべき映画である。原発事故で日本は滅びる。避難を余儀なくされる日本国民だが、海外へ移住できるには順番がある。茫漠たる荒野が広がる田舎の地で、避難の順番を待つ白人女性ターニャ(ブライアリー・ロング)は、一人で詩を朗読するアンドロイドと暮らしている。彼女はアパルトヘイト撤廃後の南アフリカで、黒人の暴力から日本に逃れてきた避難民という設定だ。そして恋人の新井浩文もまた在日朝鮮人。そして原発事故でやられた日本人も今や避難民となっている。地球上の誰もが、避難民、移民になる可能性があるということ。移動するしかない人々、そして移住した地で、差別され、疎外される人々。その孤独。白人女性ターニャは、すでに放射能に侵され、死を待つ身である。窓辺のソファで寝ている場面が多い。窓辺の風景や流れる雲、風になびく白いカーテンなどが効果的に映像として描かれる。ターニャが彼氏のセックスする場面だけが、「動」として描かれるのがなんとも皮肉で、生々しい。

さらに、ターニャの友人として登場する日本人女性(村田牧子)もまた、子供をネグレクトして殺しているという過去を持ち、避難の順番は最後になるだろうと言う。移民・犯罪者、社会からこぼれ落ち、放射能に汚染された荒野に残される人たち。日本人女性の家族が先に避難することが決まり、彼女が別れの挨拶に行く場面はせつない。さらに、ヒッチハイクで車に同乗したこれから結婚届を出すという若いカップルの妙な明るさもまた絶望的だ。

友人、彼氏と次々といなくなる中で、ターニャのそばには、アンドロイドだけとなる。窓の外の荒野と静かな室内。眠るターニャ。死の間際のアンドロイドの詩の朗読・・・。ゆっくりとフェイドアウトする画面。ここで映画は終わるかと思いきや、ソファに横たわるターニャの死が骨になるまでの時間を、アンドロイドが見続ける。そして、ラスト。アンドロイドが突然動きだし、家を出て森へと向かう。森の斜面を匍匐前進する不気味さ。そこにあった竹林の花。数十年、数百年に一度、咲くという竹の花が、そこに咲いてた。ターニャが夢見た竹の花。なんという終わり方だろう。人間が誰もいなくなった地で、時は巡り、肉は骨となり、自然は変らずそこにある。アンドロイドだけが残される不気味さ。そしてアンドロイドの不自然な意思。死ねないアンドロイドの末路。「死」と向き合う、静かで、恐ろしい映画だ。


製作年 2015年
製作国 日本
配給 ファントム・フィルム
上映時間 112分
監督:深田晃司
原作:平田オリザ
脚本:深田晃司
アンドロイドアドバイザ:ー石黒浩
撮影:芦澤明子
照明:永田英則
美術:鈴木健介
編集:浦部直弘、深田晃司
音楽:小野川浩幸
キャスト:ブライアリー・ロング、新井浩文、ジェミノイドF、村田牧子、村上虹郎、木引優子、ジェローム・キルシャー、イレーヌ・ジャコブ

☆☆☆☆☆5
(サ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 人生 SF ☆☆☆☆☆5

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2017年ベスト10
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    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
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    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
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    「セールスマン」

<日本映画>
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/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
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    次点「幼な子われらに生まれ」
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2016年ベスト10
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2015年ベスト10
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2014年ベスト10
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      2013年映画ベスト5
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    1、「共喰い」
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    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
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    3、「演劇1&2」
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    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
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    7,「SOMEWHERE」
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    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
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    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
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