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「大いなる眠り」レイモンド・チャンドラー/村上春樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)

フィリップ・マーロウものの第1作。1939年に発表されたレイモンド・チャンドラーの初めての長編小説。もともと遅咲きだったレイモンド・チャンドラーが職業小説家としてデビューしたのは45歳。アルコール依存症、18歳年上の妻を持つチャンドラーが、手っ取り早く生活費を稼ぐために書き始めたのは「パルプ・マガジン」と呼ばれる大衆向け読み物雑誌。ミステリーやSF、恐怖小説などジャンルものが「パルプ・マガジン」で量産されていた。探偵ミステリーものを書き散らしていたチャンドラーが、いくつかの短編をつなぎ合わせて51歳の時に完成させたのが、この「大いなる眠り」だそうだ。だから、途中で物語が終わったかのようなところもある。話は一段落しつつも、解決されない謎をめぐって、マーロウは探り続ける。そんなつなぎ目も感じられるが、一気に読む楽しさを味わえるミステリー探偵小説であるのは間違いない。

なによりもトラブルメーカーの謎の美女姉妹が物語の吸引力になっている。さらに、マーロウのタフな活劇的なアクションもあるし、高級猥褻本を扱う怪しげな本屋や麻薬や女性の全裸写真、強請り屋にホモセクシュアルな関係、会員制賭博場とルーレットに夢中になる女。警察も味方にしているヤクザなオーナーに、消えた男の謎と匿われた女、殺し屋の用心棒に拳銃と死体…。映画にもなりそうな物語性は存分にある。冒頭の依頼人、スターンウッド将軍のキャラクターとお屋敷の温室での描写から、ゾクゾクするほど楽しい。

言い回しの比喩や描写のディテイール、フィリップ・マーロウのひねくれているけど、タフでどこまでも依頼人に律義なキャラクターはすでに完成されている。地方検事局の捜査官のバニー・オールズから情報を引き出しつつ、一匹狼のマーロウとのやりとりも面白い。イカレた美しき妹カーメンが、裸でマーロウのベッドに潜り込んでいたり、夜の海辺での姉ヴィヴィアンとのキス、あるいはシルバー・ウィグにマーロウが救われる場面など、名場面はいろいろだ。いつものことながら、脇役に至るまでの人物キャラがお見事。ミステリーの謎よりも、とにかく読んでいることそのものが快楽であるチャンドラーの探偵小説である。

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テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 小説・文学

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ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
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映画ベスト10 2009~2017年
2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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