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「クレアのカメラ」ホン・サンス

クレア


韓国のエリック・ロメールことホン・サンス。過剰な熱量から苦手になることが多い韓国映画の中にあって、唯一大好きなホン・サンスのとぼけた味わいの映画。まさにエリック・ロメール的な恋の寓話的な物語。

映像は奇妙なズーム・イン、ズーム・バックが多用され、二人の会話はカットバックが省略され、ズームとパンを使い、横から撮り続ける。予算が少ないから、時間も節約してカットを割らないという事情もあるのだろうが、三脚固定カメラのズーム&パンワークの映像は、どこか映像的な表現を自ら抑制しつつ、二人の芝居に焦点を絞っているように思える。映像が動かない限界性は、たびたび後ろ姿や、見えない横顔や表情を観客に想像させる余地を残す。見えないことで広がる余白や想像。カットを割らないことで、持続される時間。男女の関係を盗み見ているようなリアルさは、このカメラワークにこそある。ワンカットで言葉はリアルな間合いのまま持続する。

このカンヌ映画祭の舞台裏でササっと撮った(カンヌ映画祭の最中の数日間)と言われる『クレアのカメラ』の省略性もまた、その手法がとられ、カット数は極端に少ない。その分、キム・ミニ、イザベル・ユペールという二人の女優の存在感と監督役のチョン・ジニョンの芝居に集中度が高まる。まさに会話劇なのだ。

「写真に撮られると人は変化する」というクレアのセリフがある。映画の中にインスタント・カメラを持ち込んで小道具に使う映画としては、ヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』を思い出すが、写真を撮ることで関係が変化していく。人は撮られることで客観性を持ち、自分を顧みる時間を持つ。この映画で、クレア(イザベル・ユペール)はカメラを使ってメディア(媒介)の役割を果たす。突然何の理由も告げられずに解雇を言い渡された従業員のキム・ミニ、女社長のチャン・ミヒ、二人の女優と三角関係になっている監督のチョン・ジニョン。それぞれと出会い、それぞれの写真をクレアが撮ることで、それぞれが少し冷静になることができ、関係が変わっていく。

映画監督の権力性や男性優位のセクハラ的価値観が、若いキム・ミニの服装に対するチョン・ジニョンの感情的なセリフで示される。ちょっとビックリしてしまうようなやり取りだったが、ここには韓国の男性優位の儒教的な価値観があるからなのか。

カンヌを舞台にしたバカな男と女の嫉妬、そして明るい光の中での二人の女優ののびやかで自由な姿が、ユーモラスな人間喜劇として描かれた69分の小品である。ちょっと不思議な感じが面白い。


原題:Claire's Camera
製作年:2017年
製作国:韓国
配給:クレストインターナショナル
上映時間:69分
監督:ホン・サンス
脚本:ホン・サンス
撮影:ハム・ソンウォン
編集:ハム・ソンウォン
音楽:タル・パラン
キャスト:キム・ミニ、イザベル・ユペール、チャン・ミヒ、チョン・ジニョン


☆☆☆☆4
(ク)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆4

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