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「カメラを止めるな」上田慎一郎

カメラ
(C)ENBUゼミナール

話題になっている若い映画監督の日本映画を観た。小さな劇場は満員。立ち見での鑑賞になった。SNSなどで話題沸騰のため、普段来ないような若い人がいっぱい来ていた。

「ワンカットでゾンビ映画を撮る映画」ということぐらいしか予備知識がなかったので、前半のゾンビ映画を観て、「なんだこんなもんか。たいしたことなかったな」と帰ろうとしたら、そこからこの映画の真骨頂が始まった。

映画製作現場を舞台にした映画は数々ある。フェリーニの『81/2』、トリュフォーの『アメリカの夜』、ゴダールの『軽蔑』、ヴィム・ヴェンダースの『ことの次第』、つかこうへい・深作欣二『蒲田行進曲』、三谷幸喜『ザ・マジックアワー』などなど。映画製作現場では混乱や破綻、恋や不倫、俳優と監督、プロデューサーの人間関係の確執など、数々のトラブルがあり、様々なドラマが起きる。映画監督たちが、自らの現場で起きるドラマを映画にしないわけがない。したがって、映画についての映画は数々ある。この映画もその系列にある映画である。
(以下ネタバレがあるので、未見の方はご注意を)

前半のゾンビ映画にはワンカットでやっているだけに、ちょっとしたトラブルや不自然さがある。役者たちの奇妙な間や固まった演技、さらに映画監督の手持ちカメラと映画を撮っているカメラがあるのに、その存在を意識させるようなオンカメでの台詞。さらに地面に放置されたカメラなど、ちょっとした不自然さが、一つ一つ後半戦で回収されていく構造。その仕掛けを知らないで観たので、後半面白く観れた。役者たちのブッ飛んだ演技や、「ポン」という護身術のシュールな笑い、トラブル続出のドタバタ、そして王道の映画愛、親子愛まで、ゾンビ映画から描いてしまうとはお見事である。虚構のなかに現実が入り込んできて、虚実ないまぜになっていくあたりもよくある仕掛けだが、見事にハマっている。評判が高いだけに、観る前のハードルも高くなるだろうが、それでも十分観る価値ありの映画だ。

若手映画監督の勢いで出来た傑作だと思うが、次回作以降のハードルが高くなるだろう。内田けんじの『運命じゃない人』を思い出した。


製作年:2017年
製作国:日本
配給:アスミック・エース、ENBUゼミナール
日本初公開:2017年11月4日
上映時間:96分
監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎
プロデューサー:市橋浩治
撮影:曽根剛
録音:古茂田耕吉
特殊造形:下畑和秀
編集:上田慎一郎
音楽:永井カイル
主題歌:鈴木伸宏、伊藤翔磨
キャスト:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山崎俊太郎、大澤真一郎、竹原芳子、秋山ゆずき

☆☆☆☆4
(カ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 映画 人生 ホラー ☆☆☆☆4

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その後

予想通りの「一発芸」を許容しつつも、どうもコア・アイディアの幾らかはパクリ?!だったようです。
日本映画の未来に期待しつつあった自分に幻滅…

結局ヒトという存在自体がゾンビ?!?というオチ、ということでしょうか!(汗)

コメントありがとうございます

盗作パクリ疑惑については、劇団の公演を観ていないし、その類似性はわかりません。インスパイアされたことをどう自分なりのものにしているかなんでしょうね。いずれにせよ、劇団主催者側との話し合いが必要なんでしょう。

上田監督のYoutubeで見られる結婚を認めない花嫁の父と婚約者の短編動画がありましたが、あれも同じ虚構と現実が重なり合う仕掛けでした。上田監督は、今回この仕掛けで一発当てたわけですが、次回作も同じ手法という訳にはいきません。これだけの話題性のある作品を、次回作がどう超えられるかが、大きな壁になるでしょうね。一発屋で終わるのか、ほんとうに才能があるのかは、次回作次第じゃないでしょうか。
プロフィール

ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
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映画ベスト10 2009~2017年
2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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