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「きみの鳥はうたえる」三宅唱

きみの鳥
(C)HAKODATE CINEMA IRIS

函館出身の作家、芥川賞候補になりながらも41歳で亡くなった佐藤泰志の小説をこれまで3作映画化してきて、これが4作目となる。『海炭市叙景』、『そこのみて光り輝く』、『オーバーフェンス』。そして今回の『きみの鳥はうたえる』(ビールズの"AndYour Bird Can Sing”からのタイトル)。いずれも製作に函館のミニシアター「シネマアイリス」の菅原和博氏が関わっており、函館を舞台にしたみずみずしい秀作と言える作品ばかりだ。特に日本映画界の新進気鋭の旬な監督を起用していることが素晴らしい。熊切和嘉 、呉美保、山下敦弘、そして今回が商業映画デビューとなる札幌出身の三宅唱。この菅原和博氏の企画プロデュース力に敬意を表したい。

「顔」で始まり「顔」で終わる映画だ。それぐらい登場人物3人の顔が印象的だ。三宅唱監督がインタビューで答えているようにカメラは、4人目の仲間の目線のように、3人の登場人物の微妙な空気を捉えようと、そばに寄り添う。被写界深度の浅いレンズで、背景をぼやかして、柄本佑の、石橋静河の、染谷将太の顔を捉える。

僕(柄本佑)と静雄(染谷将太)がルームシェアしながら2人で暮らしているところに、一人の女性、佐知子(石橋静河)が入り込んでくる。「僕」の彼女として。2人から3人へ、そしてその3人の関係が時間とともにまた少しずつ変わっていく。男2人と女性1人の三角関係は、青春物語の永遠のテーマだ。映画でも『冒険者たち』、『突然炎のごとく』、『はなればなれに』・・・。好きな三角関係の映画を挙げたらキリがない。

それでこの映画、3人の顔の切り取り方がいいと書いたが、初めて3人がスーパー(ハセガワストア)に買い物に来る場面のカメラワークなんて、ほんと4人目の仲間が撮っているようで面白いし、部屋でムックリを演奏しあう場面や、ビリヤードやクラブで笑い転げ、踊り、遊び続ける3人の映像がまたいい。一つの傘を3人でふざけあって歩く場面や夜遊びを終えた3人が街を歩く姿、市電で眠りこけている表情など、顔のヨリだけではなく、3人の動きも含めた空気が、街が、そこにある。本当に「おしいほどかけがえのない幸福な瞬間」を捉えている。

冒頭、僕の語りで「僕にはこの夏がいつまでも続くような気がした。9月になっても10月になっても、次の季節はやってこないように思える」というものがあるが、それは同時に「次の季節がやってきてほしくない」という思いの表れでもあるし、「この幸福な3人の瞬間はいつまでも続かない」ということがわかっていることでもある。「3人の幸福なかけがえのない瞬間」は、微妙なバランスの上で成りたっている。だから、佐知子が本屋の店長との別れ話をするとき、僕と佐知子の関係は変わっていき、静雄と佐知子がキャンプに行くことによって、3人は前のような「無邪気に笑いあえる関係」ではなくなっていく。それはそれで仕方のないことだし、季節は移り変わっていくものなのだ。その変わっていく季節と、空気の微妙な変化と、「変わらなければいい、おしき瞬間」が確かにあったのだということを、映像に写し取っているところが素晴らしい。
 
柄本佑の真っすぐで危うい感じ、石橋静河の笑顔、染谷将太の静かに見つめる瞳がいい。石橋静河は去年『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でブレイクしたが、この映画でもその魅力を存分に発揮している。3人の役者にとっても、かけがえのない瞬間を捉えた映画になったことだろう。そういう意味では、カメラはリアルな瞬間を写し撮る。3人の役者を捉えたドキュメンタリーのようでもあるし、ひと夏のフィクションのなかにしか起きえなかった“奇跡”なのかもしれない。人には誰でも、そんなかけがえのない幸福な瞬間があるものだ。

製作年:2018年
製作国:日本
配給:コピアポア・フィルム
上映時間:106分
監督:三宅唱
原作:佐藤泰志
脚本:三宅唱
企画・製作・プロデゥース:菅原和博
プロデューサー:松井宏
撮影:四宮秀俊
照明:秋山恵二郎
美術:井上心平
音楽:Hi'Spec
キャスト:柄本佑、石橋静河、染谷将太、足立智充、山本亜依、柴田貴哉、 渡辺真起子、萩原聖人

☆☆☆☆☆5
(キ)


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ジャンル : 映画

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映画ベスト10 2009~2017年
2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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