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「ブルーアワーにぶっ飛ばす」箱田優子

ブルーアワーとは、日の出前、日の入り後の世界が青一色に染まる美しい時間のこと。夏帆演じるCMディレクター砂田は、茨城の片田舎で育ち、子供のころ夜明け前に目が覚めて、一人で野原を全力疾走したという。世界に怖いものが何もない<無敵>だったあの頃。希望と自信に溢れ、未来は無限大だった。大嫌いな田舎を抜け出し、東京で最前線で仕事をしつつも、今は心は荒んでいた。

仕事仲間のユースケ・サンタマリアとの不倫、仕事へのいら立ち、ヘラヘラと愛想笑いでピンチを切り抜け、酒を飲んで街をふらふらとする生活。早口でまくしたてて仕事をしつつ、ふてくされ顔で満たされない日々を演じる夏帆がいい。『天然コケッコー』のあどけない少女の夏帆はもういない。現代の社会を生きる不満を抱えた女性がここにいる。何の文句も言わない優しい夫(渡辺大知)がいるのに、「クソくらえな毎日」・・・。

祖母が病気から快復したという知らせを受けて、田舎に帰る砂田は、親友の清浦(シム・ウンギョン)と一緒に行くことになる。『新聞記者』とはまた全く違う明るい女性をシム・ウンギョンが演じているが、彼女の屈託なさがいい。夏帆のひねくれ方とは正反対の明るい屈託のない笑顔が、田舎家族たちともすぐに打ち解けて仲良くなる。茨城弁の母役の南果歩が素晴らしい。母親のうざったさを見事に演じ、何もしない父親のでんでん、引きこもり気味の兄(黒田大輔)とともに、家族の鬱陶しくいやになる感じが見事に演出されている。さらに豪雨の夜のスナックのワンシーンも効果的。伊藤沙莉が田舎のスナックの女性の感じを出しつつ、スナックのママに夏帆が、「あなたの作り笑顔が嫌い」とたしなめられる。ブちギレる夏帆。

まわりとなんだかうまくいかない不満の日々、クソくらえの毎日。あの少女時代の「ブルーアワー」はもう遠い昔のこと。祖母の病室で、夏帆は大好きだった祖母の爪を切る。皺だらけの祖母の手を握りつつ、時間は過ぎ去ってしまったことを知る。近づく祖母の死。子供のころ、思い出す昆虫や動物たちの無慈悲で残酷な死。「死のうかな」とつぶやく砂田に「人はみんな死にますよ」と軽く答える清浦。もしかしたら、清浦(シム・ウンギョン)は、砂田(夏帆)の幻影のパートナーなのかもしれない。自分には決してできないものを持った清浦は、いつも砂田のそばにいて支えてくれていた存在なのかも。日が暮れるブルーアワーの光にあたりが染まる頃、車の運転が清浦だったのが、いつのまにか清浦の姿はなく、砂田一人だった。

新人監督の箱田優子のオリジナル脚本で自伝的要素が強い作品だとか。うまくいかないで空回りしている感じが出ていていい。鬱陶しかった田舎家族、生と死。必死にもがいていた今が、少しだけ変わって感じられる。そんなささやかな日常が描かれていて好感が持てる。役者たちの演出も見事だ。次回作も期待したい。

2019年製作/92分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
監督:箱田優子
脚本:箱田優子
製作:中西一雄
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
編集:今井大介
音楽:松崎ナオ
キャスト:夏帆、シム・ウンギョン、渡辺大知、ユースケ・サンタマリア、黒田大輔、嶋田久作、伊藤沙莉、でんでん、南果歩

☆☆☆☆4
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生 家族 田舎 ☆☆☆☆4

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ヒデヨシ

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映画ベスト10 2009~2017年
2018年ベスト10
<洋画>
    「スリー・ビルボード」
    「正しい日、間違えた日」(2015)
    「希望のかなた」
    「顔たち、ところどころ」
    「ラブレス」

<日本映画>
    「万引き家族」
    「寝ても覚めても」
    「きみの鳥はうたえる」
    「モリがいる場所」
    「カメラを止めるな」


2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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