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「みみずくは黄昏に飛び立つ」川上未映子 訊く/村上春樹 語る

小説家の書き方は人それぞれなのだろうけれど、村上春樹の書き方も独特だ。

タイトルとか登場人物の名前とか、書き出しの文章がパッと思いつく。そういうものをしばらく時間をかけて置いておく。そして何かが書けるようになるまで待つ。何か月か、あるいは数年。待つことが小説家の仕事だと彼は言い切る。そう、何かが降りてくるのを待つのだ。

そして1日10枚と決めて書き出す。物語の全体像も構成も決めずに。ただただ書けることを書いていく。そして小説を一気の書き上げたあと、また時間をかけて何度も練り直していく。第5稿、第8稿というように。何度も何度も文章を練り直す。その繰り返し。

初期の自分の小説は恥ずかしくて読み直さないのだという。読むと直したくなるから。そうやって文章の熟練度を上げてきた。わかりやすい文章をひたすら追求するのだという。誰が読んでもわかる文章。修辞的な、こねくりまわした文体ではなく。だから翻訳されても、伝わるものは変わらないはずだと彼は語る。だから世界で読まれるのだと、彼はそういう自信を持っている。小説家としての自負。

テーマなど考えない。文体こそがすべてだという。「意味を見ないようにするし、その意味で足を止めたら最後」なのだそうだ。「物語の構造的なことをいちいち考える余裕はない」と言う。「メタファー」も「イデア」もただの言葉の思いつき。「騎士団長殺し」の「騎士団長」が変な口調で自らを「イデアである」と名乗り、「顔なが」が「メタファー」だと自ら名乗る。川上未映子があのプラトンの「イデア」ですよね、と聞くのだが、村上春樹はプラトンの「イデア」を理解しないまま言葉のインスピレーションだけで書いたのだそうだ。「プラトンなんて読んだことない」し、調べもせずに。フィクションなのだから、意味が違っていても何の問題もないと。

深い意味など考えていない。「考えることをあえてしない」と言う。自らの意識下の集合的無意識の世界、「地下二階」の空間に降りていって、自分でもわからない世界をめぐりつつ、言葉を探り、文章を紡ぎ出す。

文章を書くときの規範は二つだけ。

ゴーリキーの「どん底」で、乞食なようなものが「おまえ、俺の話、ちゃんと聞いてんのか」って一人が言うと、もう一人が「俺はつんぼじゃねいや」と答える。「聞こえてら」と返すのではなく、「つんぼじゃねえや」と返すから、そのやり取りに動きが生まれる。
もうひとつは、比喩のこと。チャンドラーは「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」と書いた。そこに「へぇー」という反応が生まれる。動きが生まれる。この二つが僕の文章の書き方のモデルになっている。


リアリスティックに現実の世界を生きてはいるけれど、その地下には僕の影が潜んでいて、それが小説を書いているときにずるずるとはい上がってきて、世間一般が考えるリアリティみたいなものを押しのけていきます。そういう作業の中に、僕は自分の影というものを見ようとしている。



考えるとつまらなくなる。図式的になる。観念的なメッセージを伝えたくて小説を書いているんじゃない。小説を書きたくて、フィクションを書きたくて、小説を書いているのだ、と。現実の事件や出来事は参考にしない。現実をフィクションに利用しない。あくまでも自分の地下2階を「壁抜け」して通過させて、フィクションとして文章を書くのだ。その文章技術を錬金術師のように磨いているようだ。だからある意味、同じことを書いてると言えるのかもしれない。自分の中で唯一、リアリティな世界を書いたのが「ノルウェイの森」だ。あれは文章的に稚拙だけれど、あの時にしか書けなかったものだそうだ。

最初は一人称単数「僕」でしか小説は書けなかったらしい。それが物語が複雑に大きくなってきて、一人称単数だけでは描き切れなくなって、三人称で書くようになったとか。確か「ねじまき鳥」だったかな。そんな風にして物語を大きくして、一人称の世界から飛躍したのだそうだ。そしてまた、「僕」から「わたし」へと変化を遂げて、「騎士団長」は「わたし」の一人称単数に戻って書きたくなったんだとか。

観念ではなく、言葉のディティールから書いていく方法が面白いと思った。やはりすべては細部に宿るんでしょうね。
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テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
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              2013年映画ベスト5
          <洋画>
            1、「愛、アムール」
            2、「ホーリー・モーターズ」
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            1、「共喰い」
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            4、「リアル 完全なる首長竜の日」
            5、「Playback」(2012年)


            2012年映画ベスト10
          <洋画>
          2、「少年と自転車」
          3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
          4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
          5、「きっと ここが帰る場所」
          6、「ドライヴ」
          7、「風にそよぐ草」
          8、「恋のロンドン狂騒曲」
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          10、「別離」
          次点 「裏切りのサーカス」
        番外
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        2、「かぞくのくに」
        3、「演劇1&2」
        4、「夢売るふたり」
        5、「アウトレイジビヨンド」
        番外 「ヒミズ」


      2011年映画ベスト10
      2,「愛の勝利を」
      3,「ブルーバレンタイン」
      4,「愛する人」
      5,「クリスマス・ストーリー」
      6,「トゥルー・グリット」
      7,「SOMEWHERE」
      8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
      9,「エリックを探して」
      10,「シリアスマン」
      次点,「エッセンシャル・キリング」

    2,「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」
    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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