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「彼女が消えた浜辺」アスガー・ファルハディ

イランのアスガー・ファルハディ監督はいつも難問を登場人物たちに突きつける。第59回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した作品。「別離」、「ある過去の行方」、「セールスマン」。どれも夫婦や家族でトラブルがもち上がり、そのトラブルのために家族や夫婦が喧嘩し、揉めて、言い争う。それはいつも究極の問いのような難問なのだ。そんな人間たちの苦悩と混乱を厳しく見つめながら、冷静に描き出す監督だ。夫婦や家族、親族間の緊密な絆はイランならではの強さを感じる。

この映画はバカンスにやってきた数組の家族の物語。離婚したばかりの男友達に美しい女性エリを紹介しようと連れてきたのだが、誘った女性以外はほとんど彼女のことを知らない。予約のトラブルで浜辺の古い別荘に泊まることになるのだが、みんなでエリとその男性を冷やかしつつバカンスが始まる。しかし、翌日、子供の一人が海に入って遊んでいたとき、大人たちが見ていない一瞬のすきにその子供が溺れて波にさらわれてしまうのだ。最後に子供を「見ていてね」と言われたエリは、別の子供たちと凧を上げていて目を離していたのだ。必死になって大人たちみんなで海におぼれた子供を救出しているいちに、エリの姿が消えてしまう。子供は無事救出されたのだが、今度はエリがいない。子供を助けようとして海に溺れたのか、それとも1泊で帰りたがっていたエリは、みんなに別れも告げずに勝手に帰ってしまったのか?大人たちは見つからないエリをめぐって言い争いを始める。事件起こる直前の凧揚げのカットは、何度もエリのカットが積み重ねられる。その不自然さが、映画の転換点を映像で示している。

なぜ彼女を誘ったのか?そもそも彼女の本名は?彼女は勝手に帰るような女性なのか、彼女のことを何も知らないのだ。残されたバッグや携帯、そして昨夜の彼女とのやり取りをみんなで思い出しながら、それぞれが勝手な推理をしだす。海に溺れたのか、帰ったのか?遺体が上がらないまま、彼女の謎は深まっていく。電話していた相手は誰なのか?母親は旅に出ていることすら知らないらしい…とか彼女の存在そのものがあやふやになってくる。一人の人間の突然の不在をめぐって、存在の謎が浮かび上がり、家族間で言い争いがエスカレートしていくのだ。浜辺の別荘に泊まるかを決める時も、みんなでどういう態度をとるかを決める時も、ひとりひとり意見を聞いて多数決をするのが面白い。

映画は結局はストンと話のオチをつけるのだが、ひとりの人間の謎をめぐる混乱の物語として面白い。婚約者が来るので、みんなで口裏を合わせてみたり、本当と嘘、何を秘密にして、何を守るのか。死者の誇りを守るのか、自分たちの過ちを明らかにせずに守るのか。誰が悪いわけでもなのに、嘘をつかなくてはならなくなるシチュエーション、本当のことを伝える難しさ。現実というのはいつも難しい問いを私たちに突き付けてくるものだ。


2009年製作/116分/G/イラン
原題:About Elly
配給:ロングライド
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
撮影:ホセイン・ジャファリアン
キャスト:ゴルシフテ・ファラハニ、タラネ・アリシュスティ、シャハブ・ホセイニ

☆☆☆3
(キ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : サスペンス 家族 ミステリー ☆☆☆3

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ヒデヨシ

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          5、「きっと ここが帰る場所」
          6、「ドライヴ」
          7、「風にそよぐ草」
          8、「恋のロンドン狂騒曲」
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