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「暗殺の森」ベルナルド・ベルドルッチ

学生時代に見て以来、40年ぶりぐらい久しぶりに見た。ファシズムを描いた映画として、この『暗殺の森』は、ずーっと印象深く記憶に残っている名作だ。ルキノ・ヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』とともに。テロリストの映画と言えば、ポーランドの『灰とダイヤモンド』のマチェックが印象深いが、この映画のマルチェロは、テロリストというわけでもない。どちらかというとテロリストにさえなれなかった体制同調者でしかないのだ。反ファシズムの恩師クアドリ教授から、「君はファシストに見えない」と言われたように、マルチェロは中途半端な存在でしかなかった。

この映画の素晴らしさは、生の歓びに満ちた音楽と美しきダンスシーン、そして霧と雪の森での死の世界、暗殺場面だ。妖艶な生との美しさと冷徹な死の世界。その二つの相反する世界が見事に重なり合い、ともに描かれているところだろう。

あらためて見ると、ロケ地となった建物などの場所の様式的な映像美が印象的だ。大臣執務室の大理石で覆われた巨大な空間、机の上での大臣の情事、マルチェロの父が入っている病院施設の仰々しさ、母が暮らす屋敷と庭の落ち葉の量、新婚妻とセックスする列車でのエロティシズム、さらにドミニク・サンダの圧倒的な美貌と存在感、ステファニア・サンドレッリと女二人で踊るダンス、そして二人の衣裳。あの圧倒的なダンスシーンは、フェリーニの『81/2』のダンスを思い出す。ファシストと反ファシストが同じ空間にいて、大きな踊りの輪ができる。生と死の饗宴。死の気配に満ち、裏切りが潜む美しき場面だ。そのダンスシーンの翌日、霧と雪の中を進む車、車内のマルチェロの青白い顔。そして、雪の森での殺人場面。車が止まった後の森の中の沈黙の間。車の窓越しの助けを求めるドミニク・サンダと見殺しにするマルチェロ。まったく立場が異なる場所にいるマルチェロとドミニク・サンダの前日のし合う場面と翌日の死で相対する二人。運命に翻弄され殺す側と殺される側の緊張感ある対峙こそが、この映画のアンビバレントな魅力を放っている。

マルチェロの幼少期の的トラウマが、彼の人生を苦しめた。「普通でありたい」という気持ちが、体制に同調することを求め、ファシストの道を選んだのか。マルチェロは、テロリストとして自ら手を下すわけでもなく、かといって体制に反発する意志も行動力もない。あくまでも受動的であり傍観者だ。最後にムッソリーニが倒れ、時代がひっくり返った時、マルチェロは、ファシスト時代の盲目の友を「ここにファシストがいるぞ!」と非難する。少年時代に殺したと思っていた男娼と再会し、彼は混乱する。プラトンの洞窟の光と影の比喩が、クアドリ教授との会話の中でも語られるが、マルチェロこそは、洞窟の影(幻影)に人生を翻弄されてきた男である。自らの的トラウマから男と女の間で揺れ、時代の大きなうねりの中で、居場所を見つけられずに彷徨い続けた男の哀しさと孤独がここにある。



1970年製作/110分/イタリア・フランス・西ドイツ合作
原題:Il conformista
配給:コピアポア・フィルム
監督・脚本:ベルナルド・ベルドルッチ
原作:アルベルト・モラビア
撮影:ビットリオ・ストラーロ
編集:フランコ・アルカッリ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
キャスト:ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ、ステファニア・サンドレッリ、ピエール・クレマンティ

☆☆☆☆☆5
(ア)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 戦争 社会 人生 ☆☆☆☆☆5

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ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
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            2012年映画ベスト10
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          5、「きっと ここが帰る場所」
          6、「ドライヴ」
          7、「風にそよぐ草」
          8、「恋のロンドン狂騒曲」
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          10、「別離」
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      2011年映画ベスト10
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    2,「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」
    3,「あぜ道のダンディ」
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    2010年映画ベスト10
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    6、パリ20区、僕たちのクラス
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2009年映画ベスト10
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<日本映画>
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