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「めし」 成瀬巳喜男

あまり見ていなかった成瀬巳喜男監督作品を見る。まずは「めし」。原節子の映画である。上原謙と恋愛結婚してサラリーマンの妻となって東京から大阪にやってきた原節子。しかし、いつしかただの「めし炊き女」になっていた。生活のしがらみと疲れ。夫は仕事仲間とキャバレーに行って酔っぱらって帰ってきたり、東京から家出してきた姪の里子(島崎雪子)といちゃついたりして、なんだか面白くない。澱のように不満がたまっていく。同窓会で楽しんで帰ってきても、家出娘の里子は食事の用意もせず、夫と戯れていた。夫は鍵もかけずに靴を盗まれる始末。原節子は不満と嫉妬で耐えられなくなり、東京の実家に里帰り。しばらく別居生活となる。・・・そんなたわいもない夫婦の話だ。不倫も起きないし、夫の裏切りもない。どこの家庭にもあるようなちょっとしたすれ違いと喧嘩。劇的な展開は何一つ起きない。家事に追われ、「こんなはずじゃなかった」と不満に思う主婦の微妙な女性心理を描いているだけなのだ。劇的なドラマは起きなくても、女性の心理がしっかり描けているのでちっとも飽きない。

夫は何度も「めし」と要求し、食事中は新聞読んで出かけて行く。悪いことはしていないが、家での夫の無関心さと暮らしの単調さに気持ちが沈む。好き勝手に振る舞う若き里子への嫉妬もある。里子の身勝手さは若さの特権でもある。もう取り戻せないそんな身勝手で自由な「若さ」への嫉妬と喪失感。唯一心を寄せるのが猫。夫のネクタイにキャバレーや酒場。列車、チンドン屋の夫婦や友達のシングルマザーの生活苦。雨や風の描写。夫婦が再会する場面でのお祭りと食堂で飲むビールなど演出がきめ細かい。黒澤明やジョン・フォードのような派手な映像や大げさな演出はない。小津安二郎なような独特のリズムも様式美もない。しかし、生活を丹念に描くきめ細やかさに成瀬巳喜男の職人肌を感じる。

1951年製作/97分/日本
原題:A Married Life
配給:東宝
監督:成瀬巳喜男
監修:川端康成
脚色:田中澄江 井手俊郎
原作:林芙美子
撮影:玉井正夫
美術:中古智
音楽:早坂文雄
キャスト:上原謙、原節子、島崎雪子、進藤英太郎、瀧花久子、二本柳寛、杉村春子、杉葉子、小林桂樹、花井蘭子、風見章子、立花満枝、谷間小百合、中北千枝子、浦辺粂子、大泉滉、音羽久米子、田中春男、山村聰

☆☆☆☆4
(メ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 夫婦 人生 ☆☆☆☆4

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映画ベスト10 2009~2017年
2019年ベスト5
    「ジョーカー」
      「よこがお」
        「真実」
          「バーニング」
            「ブルーアワーにぶっ飛ばす」
              次点、「さよなら くちびる」

            2018年ベスト10
            <洋画>
              「スリー・ビルボード」
              「正しい日、間違えた日」(2015)
              「希望のかなた」
              「顔たち、ところどころ」
              「ラブレス」

            <日本映画>
              「万引き家族」
              「寝ても覚めても」
              「きみの鳥はうたえる」
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              「カメラを止めるな」


            2017年ベスト10
            <洋画>
              「パターソン」
              「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
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              「ありがとう、トニー・エルドマン」
              「オン・ザ・ミルキー・ロード」
              「パーソナル・ショッパー」
              「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
              「マリアンヌ」
              「婚約者の友人」
              「セールスマン」

            <日本映画>
              「散歩する侵略者
            /予兆 散歩する侵略者」
            「三度目の殺人」
            「南瓜とマヨネーズ」
            「光(大森立嗣)」
            「息の跡」
            次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
            次点「幼な子われらに生まれ」
            次点「バンコクナイツ」


          2016年ベスト10
          <洋画>
            ダゲレオタイプの女
            マイ・ファニー・レディ
            キャロル
            シング・ストリート 未来へのうた
            リザとキツネと恋する死者たち
            グッバイ・サマー
            サウルの息子
            マジカル・ガール
            ブリッジ・オブ・スパイ
            手紙は憶えている
          <日本映画>
            淵に立つ
            クリーピー 偽りの隣人
            海よりもまだ深く
            ふきげんな過去
            SCOOP!
            永い言い訳
            オーバー・フェンス
            ディストラクション・ベイビーズ
            葛城事件
            湯を沸かすほどに熱い愛
            次点この世界の片隅に


          2015年ベスト10
          <洋画>
            やさしい女
            さよなら人類
            さらば、愛の言葉よ
            毛皮にヴィーナス
            雪の轍
            愛して飲んで歌って
            サンドラの週末
            サイの季節
            インヒアレント・ヴァイス
            ソニはご機嫌ななめ

          <日本映画>
            海街dairy
            岸辺の旅
            FOUJITA
            百円の恋
            この国の空


          2014年ベスト10
          <洋画>
            エレニの帰郷
            グランド・ブタペスト・ホテル
            罪の手ざわり
            ウルフ・オブ・ウォールストリート
            ジャージー・ボーイズ
            インサイド・ルーウィン・デイヴィス
            6才のボクが、大人になるまで。
            フランシス・ハ
            ウォールフラワー
            ある過去の行方

            <日本映画>
            そこのみにて光輝く
            ニシノユキヒコの恋と冒険
            紙の月
            Sventh Code
            私の男


              2013年映画ベスト5
          <洋画>
            1、「愛、アムール」
            2、「ホーリー・モーターズ」
            3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
            4、「いとしきエブリデイ」
            5、「ムーンライズ・キングダム」
            ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

            <日本映画>
            1、「共喰い」
            2、「さよなら渓谷」
            3、「恋の渦」
            4、「リアル 完全なる首長竜の日」
            5、「Playback」(2012年)


            2012年映画ベスト10
          <洋画>
          2、「少年と自転車」
          3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
          4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
          5、「きっと ここが帰る場所」
          6、「ドライヴ」
          7、「風にそよぐ草」
          8、「恋のロンドン狂騒曲」
          9、「おとなのけんか」
          10、「別離」
          次点 「裏切りのサーカス」
        番外
          「永遠の僕たち」
          「J・エドガー」
          「家族の庭」

        2、「かぞくのくに」
        3、「演劇1&2」
        4、「夢売るふたり」
        5、「アウトレイジビヨンド」
        番外 「ヒミズ」


      2011年映画ベスト10
      2,「愛の勝利を」
      3,「ブルーバレンタイン」
      4,「愛する人」
      5,「クリスマス・ストーリー」
      6,「トゥルー・グリット」
      7,「SOMEWHERE」
      8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
      9,「エリックを探して」
      10,「シリアスマン」
      次点,「エッセンシャル・キリング」

    2,「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」
    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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