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「乱れ雲」 成瀬巳喜男

成瀬巳喜男という監督は女性の映画を撮る人だと思う。この映画も司葉子中心の映画だ。妊娠と夫の栄転という幸せの絶頂から、突然の交通事故による夫の死という闇への転落。人生の明と暗を提示しながら、司葉子の心理をじっくりと描いていく。夫を交通事故で死なせた相手、加山雄三との関係の変化を。顔も見たくないという忌まわしき相手として会った男に惹かれていってしまうという女性心理の複雑さ、このアクロバティックな禁断の恋心を見事に描いている。メロドラマの職人芸だ。

「どこか遠くへ行って・・・」という酔った末に発した司葉子の言葉から、加山雄三は遠い西パキスタンの海外へ転勤となり旅立つことなった。山菜取りのシーンで抵抗しながらもキスを受け入れる司葉子だったが、二人の呪われた運命の出会いから別れを決意した二人。しかし、加山雄三が旅立つ日に、引越の支度をする自宅に再び会いに行って目線を交わす階段の二人の表情のカットバック。司葉子の演技が素晴らしい。さらにタクシーで旅館へと向かう道中、長い長い踏切の時間と列車のカット、タクシー運転手の目線など、この間合いの演出が見事だ。そして偶然出くわす交通事故の現場を見る二人(ややご都合主義的仕掛け)。旅館での二人のつかの間の激情。司葉子の演技がなんともセクシャルなのだ。山菜取りの場面のキスシーンとこの部屋でのキスシーンの違いが、なまめかしい。しかし交通事故の怪我人を運ぶ救急車の音で、再び激情は中断させられる。束の間の幸福から過去の逃れられないトラウマに引き戻される展開。揺れる気持ちを何度もアップダウンさせ、恋の激情と呪われた運命の現実に引き裂かれる女性心理。司葉子がとてもいいと思った。さすがメロドラマの職人監督だ。ちなみに森光子と加東大介の性的な俗っぽさも効果的だ。

1967年製作/108分/日本
英題:Two in the Shadow
配給:東宝
監督:成瀬巳喜男
脚本:山田信夫
製作:藤本真澄 金子正且
撮影:逢沢譲
美術:中古智
音楽:武満徹
録音:藤好昌生
照明:石井長四郎
キャスト:加山雄三、司葉子、土屋嘉男、森光子、加東大介、藤木悠、草笛光子、中丸忠雄、浦辺粂子、中村伸郎

☆☆☆☆☆5
(ミ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 人生 ☆☆☆☆☆5

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プロフィール

ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
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映画にまつわる雑文です。
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          2015年ベスト10
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            毛皮にヴィーナス
            雪の轍
            愛して飲んで歌って
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          <日本映画>
            海街dairy
            岸辺の旅
            FOUJITA
            百円の恋
            この国の空


          2014年ベスト10
          <洋画>
            エレニの帰郷
            グランド・ブタペスト・ホテル
            罪の手ざわり
            ウルフ・オブ・ウォールストリート
            ジャージー・ボーイズ
            インサイド・ルーウィン・デイヴィス
            6才のボクが、大人になるまで。
            フランシス・ハ
            ウォールフラワー
            ある過去の行方

            <日本映画>
            そこのみにて光輝く
            ニシノユキヒコの恋と冒険
            紙の月
            Sventh Code
            私の男


              2013年映画ベスト5
          <洋画>
            1、「愛、アムール」
            2、「ホーリー・モーターズ」
            3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
            4、「いとしきエブリデイ」
            5、「ムーンライズ・キングダム」
            ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

            <日本映画>
            1、「共喰い」
            2、「さよなら渓谷」
            3、「恋の渦」
            4、「リアル 完全なる首長竜の日」
            5、「Playback」(2012年)


            2012年映画ベスト10
          <洋画>
          2、「少年と自転車」
          3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
          4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
          5、「きっと ここが帰る場所」
          6、「ドライヴ」
          7、「風にそよぐ草」
          8、「恋のロンドン狂騒曲」
          9、「おとなのけんか」
          10、「別離」
          次点 「裏切りのサーカス」
        番外
          「永遠の僕たち」
          「J・エドガー」
          「家族の庭」

        2、「かぞくのくに」
        3、「演劇1&2」
        4、「夢売るふたり」
        5、「アウトレイジビヨンド」
        番外 「ヒミズ」


      2011年映画ベスト10
      2,「愛の勝利を」
      3,「ブルーバレンタイン」
      4,「愛する人」
      5,「クリスマス・ストーリー」
      6,「トゥルー・グリット」
      7,「SOMEWHERE」
      8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
      9,「エリックを探して」
      10,「シリアスマン」
      次点,「エッセンシャル・キリング」

    2,「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」
    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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