「バベル」 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

今頃ながら、やっと話題作を見ました。
去年は、何かと忙しかったもので。

さて、人類の叡智による高みへの欲望「バベルの塔」は、神の怒りに触れ崩壊し、言葉の分裂を生んだとされる創世記の物語である・・・そして、この「バベル」というタイトルにこそ、イニャリトゥ監督の世界各地に分断されバラバラになった人々を再び繋ぎ合わせようとする大いなる試み・希求が現れているとも思える。

失った一つの言葉を別の形で取り戻そうとするかのような。

一つのライフル銃から放たれた銃弾による負の連鎖。
モロッコ、アメリカ、メキシコ、東京という4つの地域のそれぞれの物語。そして、不幸が雪崩れのように子供に家族に襲いかかってくる様は、現代の負の連鎖を象徴しているようでもある。それぞれは、繋がっていて、世界は関連しあっているのだ。それは、地球環境破壊→エコ→バイオエタノール→食糧危機→暴動と世界各地の欲望と暴力的な現象が繋がっているように。

そして、それは映画では身体的な痛みをともなう連鎖となっている。なんでもないような子供のイタズラ心が、唐突に見舞われるバスの中への恐怖の銃弾となり、メキシコ国境で荒地を彷徨い続けるメキシコ人乳母や子供たちの叫びとなり、さらには東京で「言葉」を奪われた菊池凛子の痛々しいまでの愛を求めた身体露出へと繋がる。

他の地域に比べて、やや東京のエピソードは観念的・抽象的であり、強引な気もする。東京の高層ビル郡の夜景は、まさに「バベルの塔」のように幻想の美しい砂上の楼閣のようでさえある。「言葉」を失い、「身体」でしか自己を表出できない菊池凛子の存在は、この世の痛みそのものでもあるかのようだ。

このような痛みの負の連鎖から、ブラッド・ピッドとケイト・ブランシェットが一時的にも心を通わせられたように、モロッコの弟が兄のことを救おうとしたように、メキシコの乳母がアメリカ人の幼い兄妹への母性を失わなかったように、そして、菊池凛子の痛みが自殺ではなく役所広司に抱きかかえられたように、映画は残されたわずかな希望を描いているのかもしれない。

2006 アメリカ
出演: ブラッド・ピッド.ケイト・ブランシェット.ガエル・ガルシア・ベルナル.役所広司.菊地凛子.二階堂智.アドリアナ・バラッサ
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:ギジェルモ・アリアガ

☆☆☆☆4
(ハ)
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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

tag : 人生

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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