「ガマの油」役所広司

役所広司という役者は、好きだ。コミカルな馬鹿な役も何かを背負った重い役もこなせる存在感のある役者だと思う。ずいぶん前にちょこっとだけ仕事をご一緒したことがあるのだけれど、とても真面目で誠実な方だった。多くの監督が、彼と仕事をしたくなるのがよく分かる。

そんな彼の第1回監督作品。コミカルな芝居をするいつものように大袈裟な身振りで株で一喜一憂するデイトレーダーを演じていた。全体的に彼らしい温もりに満ちた映画ではあると思う。

ただ、まず長い。消化不良のままダラダラと切れずに長くなってしまった感じ。いつ終わるのかと思った。
しかも設定にいくつか無理がある。恋人とその親父の声も分からない設定は、あり得ないだろう。それに、瑛太と女子高生(二階堂ふみ)の恋人同士の設定も無理がある。あの配役なら、妹的な存在であるべき何かエピソードが必要だっただろう。二階堂ふみも秋葉役の澤屋敷純一もなかなか新鮮で頑張っていただけに、残念。

デイトレーダーもガマの油売りも仮想の恋人との電話での合言葉もすべてが虚構である。ここで出てきた森のクマもまた虚構として描かれる(『ウルトラミラクルラブストーリー』と同じクマと人間の交歓のテーマ)。その嘘くさい虚構の世界を現実から逃げているととるか、悲惨な現実を忘れるためのものととるのか…虚構はいつも人々に必要とされる。息子(瑛太)の死を物語として忘れないことで、虚構は現実とともにあることになる。現実において関係を築けなかった親子が、死によって、息子の友人や恋人を介して初めて親子のとなる物語。死の世界、彼岸にある者たちの物語が、私たちの生を支えるというテーマは、目新しくもないが、嘘くさいこの映画の虚構を、役所広司は楽しみたかったのだろう。ガマの油売りの口上を聞いた少年時代のように。

音楽がとても良かった。

☆☆☆3

(カ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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