「人生は愉快だ」池田晶子

この本、とても奥が深い。やさしい言葉で書いてあるものの、まるで禅問答のように、逆説や反語、存在と無について、生と死についての謎が書かれている。

もしこの本を買って読むのであれば、プロローグと人生相談とエピローグをまず読むことをお勧めする。
第1章の「死を問う人々」では、「生」と「死」をめぐる古今東西の哲学者、宗教家の思索について、それぞれわずか5~6ページずつで語っているのだ。そう簡単に理解できるものではない。

一方、第2章「生を問う人々」の人生相談は、雑誌Hanakoで、掲載されたものらしく、とてもわかりやすく潔い。とても簡潔に人生相談にズバリと回答しているところが面白い。それにしても、池田晶子という人は、強い人だ。

一番印象的だったのは、「今、このとき」、「この現在をどう生きるか!」、訳のわからない先のことなど思い煩うことなく、「この現在を楽しむこと!」ということだ。先のことを悩んだり、死を怖がったりしても、それを思うのは、いつだって「この今」でしかないのだから。


「悩みや苦しみというのは、人生には先があるとする錯覚的時間認識が作り出す、まあ一種の気の迷いみたいなもんでしょう。」

「未来や過去を悩んだり苦しんだりしているのは、まさしくこの現在ではないですか。」

「悩むことを楽しむ 苦しむことをよろこぶ」


老いることさえも、楽しめばいいのだ。アンチ・エイジングなんてクソくらえ、老いていくことの初めての体験を楽しまなくてどうする!


「年をとることを反価値とするのは、肉体にしか価値を置いていないからです。年をとるほどに精神は、味わい深く、おいしくなってゆくものだからです。だから私はこの頃とみに、年をとることが面白くてしょうがない。」


「死ぬとか病むとか老いるとか、当たり前のことを否定として捉えるから人は苦しむことになるのでしょう。当たり前のことを当たり前として捉え、なおそれを楽しむという構えが、ひょっとしたら人生の極意なのかもしれません。」


去年の2月、46歳の若さで腎臓ガンに亡くなった彼女が、「死」をどう捉えていたのか?「死」を恐れではなく、楽しむ覚悟すらあったのではないかと驚かされる。

「死は人生のどこにもない。そう認識すれば、現在しかない、すべてが現在だということに気づくはずです。人は死があると思って生きているから、生まれてから死に向かって時間は流れていると思っています。死がないとわかった時、時間は流れなくなるのです。そうすると、現在しかなくなってしまう。そうなれば、過去もこの現在にあることに気がつく。現在を味わうこと、現在において過去を味わうことが年をとることの醍醐味になる。」

「人は幸福を求めるから不幸になる。」

「人間は自分の中にあるものだけを他人の中に見る。」

「客観的事実なんてどこにもない。」

「言葉なしには生きられない人間は、一生嘘をつき続けていることになる。」

そして、考えることは、個人や「自分」を超える。それは、広大な宇宙の広がりであり、それこそが、永遠の現在を生きる楽しみであるかのように。エピローグは、彼女のこんな言葉で締めくくられる。


「自分」とは、そんな個人に限定されるものではなく、人類や精神、宇宙とは何かという思索のなかで存在する不思議なものなのです。
みんな自分は「誰それだ」と思い込んでいるから、まずそれを外すことからしていかなければいけない。
人間はまだ、死をおしまいと考えていますが、ひょっとしたら、死は始まりかもしれないのです。

「死は始まりかもしれないのです」と言って彼女は「死」の世界へと旅立った。「死」の世界なんて言葉がつくり出した幻想であることを何度も語りつづけた。「死」は「ない」のだ。あるのはそれを思う現在なのだ、と。


「さて死んだのは誰なのか」

「死んでからでも、本は出る!」

「自分とは何者なのか?」を問い続け、誰でもない誰かであり、思索そのものであろうとした池田晶子の言葉。言葉は嘘を言うためのものであり、言葉の嘘を見破りつつ、それでも我々の人生とは言葉そのものなのだと彼女は言い続けた。

(し)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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映画にまつわる雑文です。
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