『できそこないの男たち』福岡伸一著 2

トポロジー的に考えた時、人間の身体は単純化すると本当にチクワのように中空の管に過ぎない。消化管以外の穴はすべてチクワの表面に爪楊枝で刺して作った窪みでしかない。身体の穴は、袋小路なのだ。耳の穴も汗腺も涙腺も周囲の壁から液がにじみ出てくるだけで、穴の底は閉じている。口、食道、胃、小腸、大腸、肛門と、身体を突き抜ける中空の穴…。私たちの遠い祖先は、ミミズやナメクジのような存在だったのだから、これは驚くに当たらないことなのだ。第6感のことを英語では、ガット・フィーリングという。ガット(gut)とは腸のこと。「ガッツがある」のガットである。
ミミズは脳がなくても、消化管の神経のネットワークで、考えて動く。
消化管神経回路網をリトル・ブレインと呼ぶ研究者もいるそうだ。私たちはひょっとすると、消化管で感じ、思考しているかもしれない…人間は考える葦ではなく、管なのだという話。

なんだか、一本の管としての人間の存在と考えると、不思議な感じがする。


そして、女性と男性のルーツのお話。

男が運ぶY染色体の多型性解析の結果、地球上に存在する男性のルーツは、10数万年前、アフリカで生まれた一人の男性に由来する。また、ミトコンドリアDNAの刻印を解析することで、女性のルーツもまた、10数万年前、アフリカの一人の女性から始まった。二人の人間しかいなかったのではなく、複数の人類の祖先たちが集団を形成し、いろいろな場所で生活していたはずだという。しかし、その後、そのほとんどの系譜が何らかの理由で途絶え、現存していない。女性の集団から一つ、男性の集団から一つの系統だけ生き残り、その系統から現代の様々な民族が生まれたと言うのだ。

そして、Y染色体多型解析から、Y染色体の旅路が明らかにされてきているという。

アフリカで生まれた子孫たちは、アフリカから出て、インド、インドネシア半島からアジアを北上し、シベリア、モンゴル、中央、東、東南アジアへと広がった。
旧石器時代、シベリアから、サハリン、カムチャッカ半島を経て日本に来たルート、また朝鮮半島を経て南まわりで来たルートがあるという。これが旧石器時代に日本列島に最初にきた男たちだった。(C3型)

現在、日本人のY染色体で最も多いのがD2型といわれる縄文人である。これはアフリカから東を目指し、モンゴル、チベット、朝鮮半島から日本へ。アイヌや東北、日本海、沖縄に分布しており、アイヌの人々は、このD2型が多い。縄文時代の主要メンバーがこのD2型だったと言われている。

O2b型は、弥生時代、稲作と金属器を持って日本列島に入ってきた渡来系弥生人。朝鮮半島に多く、南琉球、八重山諸島にも多いタイプ。

O3型は、10~20%程度の頻度で現れるY染色体で、漢民族の多く、そのほか、チベット、満洲、モンゴル、朝鮮半島に分布する大陸人タイプ。

日本列島は、大まかに言って、旧石器人、縄文人、弥生人、大陸人の4つのタイプがあり、単一民族などではなく、日本列島こそ、出アフリカを果たした三つの系統が流れ流れて様々に分岐した後、もう一度落ち合った特別な場所なのだという。日本列島は、人種のるつぼなのだそうだ。

さてさて、あなたは一体どのタイプに属するのか、気になるところでありますね~。

でもこうやって、生物学的に考えてみると、アフリカから生まれた男女の遺伝子から、さまざまな多様な遺伝子をY染色体は運んできた。

そう考えると、現代の民族紛争や国家の争いもなんだか馬鹿らしくなってくるものである。遺伝子の多様性こそが、オスを作り出し、環境を乗り越えるための意味であったはずなのに、多様性があるために、絶え間ない争いが繰り返し続けられているのだから。

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