『日本の「食」は安すぎる』山本譲冶著

『日本の「食」は安すぎる』(山本譲冶著)を読む。

食品偽装問題など食の安全に関する事件の多い要因の一つに
「日本の食糧価格が安すぎる」という問題があるというのが本書の主張だ。

ミートホープ事件は記憶に新しい牛肉偽装事件だったが、もちろん消費者を騙す会社は言語道断なのだが、安さを求める消費者の存在が、利益を生まない流通構造を作り出し、偽装行為にまで及んだ社会的背景があるというのだ。

もちろん生活者である我々消費者は、少しでも安いものを求めるのは当然のことだ。ただ、安いものを生み出すのにどれだけのことがなされているのか、消費者は知らなければならないし、それを理解したうえで商品を選ぶ必要があるということだ。日本人のサービス過剰ぶり、見栄えで判断する商品選びに、どれだけ無駄なお金を使っているかということも考える必要がある。

著者がイタリアのシチリア島に旅行に行った時、昼になるとほとんどの店が鍵をかけて休業状態になるという。日本のサービスとはあまりにもかけ離れている店の態度。ヨーロッパでは、商売する側が自分の都合のいいように商売している。日本でそんな店があったら抗議の嵐で、すぐ潰れる。日本は、消費者を満足させることに過剰なエネルギーが使われ、サービス提供者は疲弊しているというのだ。消費者が偉くなり過ぎているのではないか?商品のクレームは、昔に比べて異様に多い。そして、サービスは型どおりの「いらっしゃませ」「またお越しくださいませ」と作り笑いの過剰サービス。コンビニで24時間いつでも弁当が買えるサービスは確かに便利だけれど、それだけ労働力を使って、なおかつ安い弁当を提供するため、長持ちする保存料や添加物が多く使われることになる。

便利さや効率性を手に入れた代わりに、何かを失っているような気もする。外国に行くと不便さを感じるけれど、ほどよいバランスというものがあるのではないかと思う。日本人の消費者へのサービス過多は、どこか異常な感じもする。

農業の現場を取材していると、規格外な作物は除外される。売れないというのだ。形が不揃いだったり、色がついていなかったり、無駄にしている作物のなんと多いことか。規格外でも十分美味しいものはあるというのに。日本人ほど見栄えにこだわる人種もいないそうだ。

肉にしても、野菜にしても、手間暇を惜しまずつくられたものは、当然価格が高くなるのは当たり前だ。一方、安い食品は、どこかで無理して作られているのだ。大量生産大量消費、賞味期限を長持ちさせるための添加物、保存料、遺伝子組み換え作物、様々な水増しも行われているとも言われている。原価を割るような安すぎるものには、十分気をつけないといけない。食に対する考え方をちゃんと持たないと、日本の農業は壊滅するし、何を食べさせられているかわかったものではないと言うことなのだ。

今少しずつ、安全で安心なものを少し高くてもいいから食べたいという人たちが増えている。大量生産・大量消費の「安かろう、悪かろう」という時代はもう終わりつつあると思う。それでも安いものを必要とする生活者はなくならない。所得格差の問題は、そう簡単にはなくならないだろう。いずれにせよ、食に関する問題は、大きな曲がり角に来ていることだけは確かだ。

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