『この世には二種類の人間がいる』中野翠

中野翠の『この世には二種類の人間がいる』(文芸春秋刊)を読む。
辛口コラムで有名なこの人の本、初めて読んだけど、なかなかズバリと攻めてくるテンポは小気味いい。週刊誌の短い字数のコラムを書いているだけに、その切れ味が勝負なのだろう。

さて、この本、「キメツケ人間二分法」である。「勝ち組」「負け組」といった不愉快な二分法に反発して書いたと著者が言っているように、その二分法の視点がなかなかユニークで面白い。人間観察の面白批評になっている。多数派志向への反発や自らのいい加減なダメさ加減も晒しつつ、「あるある!」と膝を打ちたくなるような共感も多々ある。

そのなかで「キメツケに怒る人と喜ぶ人」という文章がある。
人から何色が好きと言われ、「黄色」と答えると
「黄色の好きな人はね、自己主張が強くて、わがままで、孤独な人なのよ」とキメツケられたことへの反発が語られている。勝手に「わかったつもり」になっている感じと、その「したり顔」がシャクにさわったというのだ。

世の中、占いブームでスピリチュアルブームが続いている。誰もが自分探しの物語が大好きだ。「私って、やっぱりこういうタイプなのよね~」と自分の物語を補強したいのだと思うのだ。自分をそのタイプにはめて安心して喜ぶ人と反発する人がいるという訳だ。
まぁ、中野翠のこの本も二分法で決めつけてタイプ分けしてるのは同じだろうと思ったところ、そこは本人も自覚している。

「この世には二種の人間がいる」とタイトルつけたけれど、看板に偽りあり。たった二種類の分類でおさまるはずがない。人間はもっと多彩だし曖昧だし混沌としている。そもそも私は人を評するのに「―タイプ」「―系」「―派」「―族」といった言葉を濫用する人を好きになれない。

そうなのだ。簡単に分類などできないのだ。分類でまとめることは具体的な個人を捨てて抽象化することだ。そんな大くくりで誰もがまとめられたくない。

一方、占いや血液型や星座のタイプ分けを楽しむのは、別な話なのだろうか。たぶん自分のタイプを見つけて、自分に納得したいという気持ちがあるのだと思う。曖昧で混沌とした自分がわからなくなって…。自分の性格の裏付け補強?そんなところがないだろうか。みんな自分の物語作りにご執心なのだ。

だけどだけど…その自分物語って、ほんとうにそうなの?って僕なんかは思ってしまう。その物語にはまっていけばいくほど、人は変われない。物語はいつだって、動いているし、変わっているし、別の物語に変遷していく…そんな風にありたいと、くるくると舞う落ち葉を見ながら、思うのだった。

中野翠の「ペットを飼える人と飼えない人」という文章で、一人暮らしに慣れてしまった著者は、自分中心の生活が乱されるのが怖いと、無類の犬好きだけどペットは飼えないと自らを分類する。


自分の思い通りにならない他者(それは人間であっても他の生きものであってもいい)と共に暮らすことって、人間にとってたいせつなことだ。そういう他者との関係から学んだことが人格に重みや厚みを与えていくのだ。にもかかわらず、私は一人者の気楽さに執着している。バカか。


そう、やっぱり、キーワードはいつだって<他者>の存在なのだ。

(こ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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